哀しき本能 |
空ここのところ、結構ジャズを集めています。まあ比率としては、ジャズロックというか? フュージョン系のものの方が多いので、純粋にジャズ・ファンになったとは言い難いのですけどね。元々、マハビシュヌ・オーケストラを筆頭に、ニュー・クリアスやら、コロシアム、ブランドX等々のブリティッシュ・ジャズロックものは随分聴いてきましたし、またソフトマシーンを筆頭とするカンタベリーものも一通りは通過しました。
またイタリアのジャズロックものもアレアからアルティ・エ・メスティエリ等々は、ユーロロックの一環として収集してきたわけです。しかし今回は「ジャズを聴く!」という目的の元に購入していますから、以前までの収集とは意識の上では別物と言って良いと思います。 ■◆■ 「ジャズを聴こう」という思い立ったのは、元々はスティーリーダンでした。今年の2月に同バンド(といっても、実体はVoとPianoのドナルド・フェーゲン、Guiterのウォルター・ベッカー、プロデュースのゲイリー・カッツによるプロジェクト・チームみたいなものでしょうね。)の7th「ガウチョ」を購入したのです。元々は、秀五氏や部長の宇野が騒いでいたので「そんなに良いなら、買ってみるか? 」という程度の軽い気持ちだったのです。昔、スティーリーダンの出始めの頃に「おしゃれで凝った音作りだ」というような風評があって、それがどんなものかを試してみたいという気持ちもありましたしね。 |
DVD |
空宇野はスティーリーダンの全タイトルを集めたのがよほど嬉しかったらしく、果ては前出のエイジャのDVDまで買ってきてしまいました。そしてそれを貸してくれたことこそ、ボクにとっては運命の出会いのようなものでした。このDVDがボクには結構面白かったのです。(このDVD、実質スティーリーダンそのものとも言えるドナルド・フェーゲンが、エイジャというアルバムに込めた愛情の一部始終を記録されているようなものなのです。)AORの音って、けして厚くないですよね。まるでフュージョンにボーカルをつけたような……そんなイメージだと思うんです。当時、ほんの一時だけボクもフュージョンも聴きましたけど、フュージョンって飽きるんですよ。展開が少ないというか? 構築的じゃないと言うか?規定されているリズムの上を安易なソロが垂れ流される……そんなイメージだったワケです。そして最初はスティーリーダンも、ボクにはそんな感じに聴こえていました。
ところが、このDVDを見ていると「リズム1つを取ってみても」とても工夫されていることがわかります。しっくりくるリズムが見つかるまで、どれだけドラム・パートを収録しているのか? というのが記録されていたりします。「単純に見えるリズム」でも、こんなに工夫を凝らしていたのか……と見直させられました。気に入るドラムの刻み方が見つかるまで、けして安易に妥協しないことがDVDから伝わってきます。 ■◆■ ギターにしても、一流のミュージシャンに「あるパートのソロを弾いてもらう」のですが、ドナルド・フェーゲンが「そのソロ」を気に食わなければ、そのソロパートは使われません。次のギタリストを呼んできます。そうやって短いソロパートのために、6〜7人のギタリストに同じパートのソロを弾かせてしまいました。結局ラリー・カールトンのソロが採用されたんだったか?でしたけど、当時超一流のフュージョン・ギタリストだったラリー・カールトンのソロだって、お蔵入りになる可能性があるようなこだわりようなんですから驚きです。このDVDを見ていて「彼らがなぜ、プロジェクト・チームのようになっているか?」が、やっとわかった気がしました。どんな楽器の演奏も「妥協したくない」し、表現したい演奏の出来るミュージシャンを使うために、ユニットというか、プロジェクト態勢にしていることも理解できました。そしてそれを通じて、ジャズというジャンルのミュージシャンがこだわっているもの……みたいなものが少しわかったような気がしたのです。「そうか、そういうことにこだわってるなら、そこを聴けばいいのか!」というジャズを聴くための手がかりみたいなモノがつかめたのです。 |