1月特大号


明けまして、おめでとうございます。ついに、千年期(ミレニアム)である西暦2000年という記念すべき年を迎えました。ボクは結構、昔からオカルトチックな話が好きで、例のノストラダムスの「1999年の7の月に恐怖の大王が降りてくる」という予言に惹かれていました。またそれよりも何よりも、かつては手相占いで「35歳で死ぬ」と色々な人から言われ続けたことから「ボクは1999年の7月まで生きられない」とずっと思っていましたから、こうして2000年を迎えられて本当に感慨深いモノがあります。
ボクにしてみれば、2000年以降の人生はある意味で「おまけ」みたいなモノですから、得したというか?何というのか?まあ、何れにしても、せっかく生き延びた訳ですし、有意義な人生を過ごしていきたいと思います。
さて余計な話はこれぐらいにして・・・今年一発目のプログレの部屋をお届けします

去年は結構、プログレのアルバムを(懲りもせず)買いました。1993年から始まったプログレ探訪の旅(1970年代にもやった訳ですが)も、そろそろ終幕かなと思ったのは去年の初めの頃でしたが、どうした訳か?とどまるところを知らなかった1年でした。これまでもずいぶん買ってきたつもりでしたし、レコードからCDへのメディアチェンジによる旧譜再発の波も一段落かなと思っていたのですが、結局は一昨年よりも購入してしまった感があります。
元々90年代になってからのボクのプログレ収集熱の再発は、ノスタルジーから始まったものだったのです。あれは新ハードのプレゼンで某所にお呼ばれされたあの日、少しだけ時間が早かったために「何気なくブラリと立ち寄ったレコード屋さんのプログレ・コーナー」で「ルネッサンス」と「ダリル・ウェイとウルフ」と「ムーディ・ブルース」という3つのバンドの3枚のアルバムを買ったことがキッカケになったのでした。そのアルバムに詰め込まれていた楽曲のクオリティと情熱は、忘れていた「あの頃の感動」を呼び起こしてくれたのでした。音楽だけではありません。ライナーノーツに記されていた懐かしい事柄が、プログレに熱中していたあの頃の自分を思い起こさせてくれたことも、今こうしてプログレにドップリ浸かっている大きな要因のひとつだと思うのです。
というのも、ボクはその数年前に仕事で訪れたサンフランシスコのアーケード・モールで懐かしい「クリムゾン・キングの宮殿」を購入(あの時は当時仲良しだったセガのボブと一緒だったなあ)していたのですが、プログレ熱がよみがえるには至っていなかったからなのです。

ボクが思うに、日本人てウンチクが好きな人種じゃないでしょうか?(極マニアックな日本人がそうなのかも・・・。)少なくともボクは、探求する要素があるほど、のめり込んでしまう質のようです。(だから、こんな長期に渡って現役の制作者をやってこれたのかも・・・。)どうやら、与えられることだけでは満足できない人間であることは確かです。例えばポップス(洋楽、邦楽を問わず)では、良いモノなら(自分が良いと感じるなら)無抵抗に受け入れるにしても、「流行っているから良い」という感覚はないのです。これはひとつには昔、ボクがマスコミに関係したことの影響もあるかも知れません。その当時は流行を創造するのが「こちら側の仕事」でしたから、そうした依頼に応えるのが仕事であり、「良いモノだから流行させる」というのとは全く違っていました。実際、深夜にまでかかって仕事が終わり、事務所にスタッフ一同で引き上げてきた後みんなでよく聞いたアルバムはマーク・アーモンドの「ライジング(=誕生・邦題)」という音楽で、マスコミの人はもうプログレを一般に宣伝していなかったにも関わらず「ボクの好きな音楽を聴いてる」という矛盾が胸に去来したものでした。「マスコミは良いモノを広めてる訳じゃなく、金になるからそれを流布するのか!」というのは、その頃に得たボクの教訓です。(これは音楽に限ったことじゃなく、他にも色々あるでしょ・・・。あなたの好きなソレとか・・・。マスコミに取り入るのが上手いおかげで、大したモノでもないのに、いつの間にか、クオリティに余るレビューの得点を受ける特定の人・・・おっと、これ以上はヤバイ、ヤバイ。)だからボクは「娯楽に関わるモノ」は自分のアンテナで情報を収集し、自分の感性に従って購入することにしてるのです。ボクは「良いモノを作るアーティストは裏切らない」ことを経験で身につけたので、アーティスト単位で買っていく習慣があります。例えば「キングクリムゾン」というアーティストから派生して、ファーストで脱退したグレッグ・レイクのELPへとコレクションが派生したり、やはりファーストアルバムの重要なメンバーであるマルチプレイヤーのイアン・マクドナルドの「マクドナルド&ジャイルズ」(クリムゾンのファーストの静の部分と、ジャージーな部分を抽出した濃密な音世界を構築していて、クリムゾンファンにお薦め。最初は地味に感じるかも知れないが、楽曲が頭に入るほど聴き込む頃に、やっとその完成度の高さがわかってくるはずで、実際、当時のボクは本当の意味でこのアルバムの凄さが理解できていなかった)や彼のプロデュースした前出の「ダリル・ウェイとウルフ」(元カーブドエアというこれまたプログレの名バンドの中心人物であったダリル・ウェイが、当時無名だったジョン・エサリッジという名ギタリストたちと組んだ名バンド。当時はイアン・マクドナルドのプロデュースで有名なファーストがフェイバレットだったが、今は圧倒的にセカンド「サチュレーション・ポイント」というアルバムを押す)や、第五のキングクリムゾンと言われた作詞及びコンセプテイターのピート・シンフィールドのプロデュースの関係から、これまで何度も紹介してきたイタリアのPFMや「エスペラント」(多国籍語という意味のバンド名通り、雑多な国籍のメンバーが集まった名バンドで、リーダーはレイモンド・ビンセントという元々オーケストラのバイオリニスト等、バンドのメンバーの多くが高い音楽教育を受けている。そのため、彼らの音楽もクラシカル。だけど単にクラシカルというだけでは表現できない研ぎ澄まされた音楽性は唯一無二といって良いほどのオリジナル性にあふれている。またエスペラントは、ロックバンドには例を見ないほどの大所帯バンドで、バイオリンやチェロといったストリングス系のメンバーが多いため、その音の厚みにも圧倒されること間違いなし。オリジナル・アルバムは3作あって、どれも素晴らしいのだけど、敢えて選ぶならピートシンフィールドがプロデュースした2nd「死の舞踏」だとされている。だけどボクは3rd「ラストタンゴ」も捨て難い。彼らはその演奏力の高さから大編成であるにも関わらず一糸乱れぬアンサンブルに特に定評があって、そんな彼らにして2ndはインストルメンタル部でのリード楽器のソロのパートが幾分多く、3rdではその分アンサンブルが強化されている。対する1stでは、よりロック色が強く一般には親しみ易いも・・・結局どれも素晴らしいアルバムなのだ。ただ残念なのは現在このエスペラントのアルバムは全て廃盤で、新譜で購入する方法がないことだ。確か、海外では発売もされていない。こんな名盤たちがレギュラー発売されていないなんて、ホントに現在の音楽業界に失望させられる。)等へと広がる訳です。(イアン・マクドナルドにはアメリカでプロデュースした「ファイアー・バレー」というバンドの唯一のアルバムがあるらしいのだが、ボクはこれを聴いたことがなくてとっても残念。誰か、このアルバムをCDで再発してくれません?)こうした発掘作業がとっても楽しいのもまたプログレなのです。

前述、バンド関連で発掘するという作業が完了した後はどうするか?キングクリムゾンはメンバーの出入りの多いバンドだったから、関連作の発掘だけでも結構パワーと私財を投じなければならない訳です。例えば中期は特に出入りが激しかったので、3rdでのドラムのアンディ・マックローチがその後在籍(クリムゾン脱退直後「フィールズ」というレアなオルガンロックのバンドを経て)した「グリーンスレイド」という・・・これまたブリティッシュものとしては外せない中堅プログレバンドへと手を伸ばしてみるのも良いでしょうし、ファースト期のクリムゾンと並んで人気の高い「レッド」期のメンバーであるジョン・ウェットンから「UK」や「エイジア」を探ってみるのも楽しいし、3rd「リザード」期に素晴らしいプレイを聴かせてくれたサックスのメル・コリンズを追って、「レインダンス」期のキャメル等に興味を広げても面白いのだが、それでもそうしたアルバム群の発掘後にはどうするか?ということになる。もちろん、そこまで探求したから満足!という人もいるでしょう。でもボクはダメ、それでは気が済まないのです。のめり込んだら、奥の奥まで深入りしてしまう質だからです。もっと新しいモノを聴いてみたいし、凄いモノはないのか?と思ってしまう。実際、93年頃プログレを買い始めたのは、その頃特にプログレ再発の勢いは強く、キングの「ユーロロック・コレクション・シリーズ」だの、ソニーの「マサ・イトウのマスター・ワークス・シリーズ」だの、各社各様がその昔のレア・アルバムを怒濤の如くに発売していたのですが、いくらなんでもそんなに買える訳ない。そこでボクのようなプログレ・マニアは何から買うかというと「レアもの」から買ってしまうんですねぇ・・・。70年代にはブリティッシュものは結構聴きながら、イタリアモノは残念ながらPFMにイプーぐらいしか聴いていなかった。だからまずイタリアモノを制覇しよう!と、こういう具合になった訳です。(キングの「ユーロロック・ハンドブック」にはお世話になりました。おかげで、あのカタログのアルバムはほぼ揃ってます。うーん、自分ながら呆れるな・・・。)そんなことをしていて気がついてみると、93年当時レコード店に新譜として並んでいたアルバムのほとんどは2年もしない間に廃盤。(流行モノしか聴かないリスナーには、こんな体験は想像つかないだろうな?)まあ、そんなことで今度は廃盤になってしまったアルバムを、まるで秘宝探索のような調子で探し求めていった訳なんですが・・・。

関連バンドの発掘の次に始まる発掘法とは?
それは、アルバムに関するインタビューやライナーノーツから「彼らが影響を受けたバンドや気になるアルバム」等をフックにして、新しいバンドを発掘する方法であり、また70年代には考えられなかったプログレ関連雑誌といったものも最近は出ている訳で、それらを参考にしてまず自分のお気に入りなサウンドに似たサウンドを表現しているバンド等に手を出してみるなんて方法です。
例えばキングクリムゾン的との評判から手を出したものでいうと、リイシュー(再発)モノでは南米はアルゼンチンの「ブブ」というバンドの同名アルバムで、「レッド期」のクリムゾンを彷彿とする素晴らしいものだという評判が少しも大げさではないと思わせる優れたアルバムです。このアルバムは、南米らしい哀愁も感じられ、バンド特有のオリジナリティも楽しめクリムゾンっぽいというだけに終わらない完成度の高さが光ります。同じアルゼンチンの「エスピリトゥ」というバンドの同名タイトルの1stも素晴らしいアルバムです。前出の「ブブ」もそうですが、南米というとどうも明るくてノー天気そうなイメージが付きまとうのですが、ことプログレッシブ・ロック系に関しては優れたアルバムが多数存在するようです。これらはそんな南米の中でも出色の出来だと言えます。前出にも共通するブリティッシュ風のアンダーグラウンドな雰囲気といい、演奏力を生かしたテクニカルなソロに、バンドアンサンブルと、文句のつけようのない完璧といってしまえるほどのクオリティが光っているのです。(余談になりますがクリムゾン系とは言えないけど、アルゼンチンの「ミア」というバンドも素晴らしい。今やアルゼンチンのジャズ、ロック界で重鎮になったリト・ビターレというキーボーディストがリーダーのこのバンド、アグレッシブさとリリカルさが程良くミックスされた3枚のアルバムを残しているが、南米プログレに興味のある方は「まずこのバンドから」とお薦めできるほど、どれも必聴の出来と言って良い。)スペインではスペインのクリムゾンと言われる「コト・エン・ペル」の唯一のアルバムや、世紀末的カタルシスが味わえる「タランチュラ」の1stは分厚いメロトロンの響きがクリムゾン・ファンには堪えられないのです。(以上4枚<+3枚>は日本のインディーのプログレ系レーベルとしては定評のあるベル・アンティークより発売されたもので、うまくすれば買えるかも・・・。)現在進行形でもクリムゾン・フォロワーと呼ばれるバンドはあって、北欧はスウェーデンの「アネクドテン」はそうした「暗黒(レッド期)クリムゾン・フォロワー」には大推薦です。このバンド、90年代初頭のデビューアルバムからしてタダ者ではなかった!暗くよどんだアンダーグラウンドな楽曲に「ブイブイ」うなるベース音がといい、いかにもロバート・フリップ(クリムゾンのリーダー、わけのわからない理屈をこね回し人を煙に巻くことからインチキ親父等とも呼ばれているらしい)調の音色がそれらしいギターといい、大々的にフィーチャーされたメロトロンといい、クリムゾンなのです。最新アルバムが99年11月に発売された現在、オリジナルアルバムは3枚あるのだが、サードは(当然買ってはいるけど)聴いていません。しかし彼らの場合も、先の例に漏れず安心して購入できるバンドのひとつと言えるだけのクオリティを、それまでの2枚のアルバムで見せつけてきているのです。もしも興味があれば聴いてみて損はないでしょう。その他、書こうと思えばまだまだあるんですけど・・・今回はこんなとこにしときましょう。


今回は1月特大号ということで、ずいぶん長くなってしまったけれど、プログレ道の
求道の仕方の初歩として、是非活用してしてみて下さい。それじゃ、次回プログレの
部屋2月号まで、アディオス!


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