◆◇◆ 秀Vの 各アルバムミニ紹介 ◆◇◆

キングクリムゾン「クリムゾンキングの宮殿」
1969年オリジナルリリース。 イギリスのバンドで、日本盤発売元はポニーキャニオン。本文でも紹介しているので詳細はそちらを見て下さい。言わずもがなの名作。プログレの夜明け的傑作。
UK「UK」
 1978年オリジナルリリース。 イギリスのバンドで、日本盤発売元は東芝EMI。イギリス本国はパンク全盛でプログレが衰退していた78年当時にプログレの意地を見せた作品。     メンバーは元キング・クリムゾン(5th「太陽と戦慄」〜7th「RED」)のジョン・ウエットン(ベース)とビル・ブラッフォード(ジョンウエットンと同様5thから7thまでのキングクリムゾンに在籍。またそれ以前はYESにいた名ドラマー)、そしてカーヴド・エアーに在籍していたエレクトリックヴァイオリン&キーボードのエディ・ジョブソン、さらにテンペストや後期ソフトマシーン、後期ゴングなどでも活躍した放浪の名ギタリストと呼ばれる(って、すぐにバンドをやめるということなんだけど・・・)アラン・ホールズワースが参加した当時としては最強の布陣。まさしくUK(ユナイテッド・キングダム)という名にふさわしいブリティッシュらしい翳りを持ったドラマチックな作品です。 後期クリムゾンメンバーが2人いることもあってその面影を感じることができたり(加えてエディジョブソンのヴァイオリンがデヴィッド・クロスを感じさせてくれたりもします。ちなみにキング・クリムゾンのUSAというライブアルバムではエディ・ジョブソンのヴァイオリンがオーバー・ダビングされていますから、そういう意味ではかなり無理すればクリムゾンつながりと言えないこともない(笑)。)、さらにアラン・ホールズワースのジャズ・ロック色も結構出ていて音的にはブリティッシュの熱さだけでなく若干クールな印象もあります。
 実を言うと当時2ndアルバムの「デンジャー・マネー」が出た頃には(パンクが台頭したおかげでプログレは終わったとマスコミが決めつけて書いていたこともあって)すでに僕の中ではプログレの興味もかなり薄れた頃で、またアルバムの音も当時はPOPに感じ(エディ・ジョブソンのキーボードが当時の僕には厳しかったのだと思う。)、プログレ好きの友達に誘われて行った来日公演では黄色い声援に「プログレの終焉」のとどめを刺された経緯があったりするのですが、現在聞き直してみるとこれがすごく良かったりするのですからビックリ。その上最近のプログレ好きにUKコンサートの話をすると「あの伝説のライブ」を見ているなんて、と羨ましがられたり・・・。あの時の気持ちはそんな感じでは無かったんですけど、今となっては良い思い出です。
 ちなみに1999年8月5日に行われたジョン・ウエットンのライブでは「UK」の1曲目に収録されている「デッド・オブ・ザ・ナイト」をあの当時聴いたよりもプログレッシヴな演奏で聴かせてくれ感動しましたね。ブリッジとしてのインプロヴィゼーションパートも滅茶苦茶かっこよかったですよ。
PFM(プレミアータ・フォルネリア・マルコーニ)
「幻の映像」1973年オリジナルリリース。
 イタリアのバンドで、日本盤発売元はマンティコア・レーベル(イギリス経由)ものはビクターから絶賛発売中。イタリア本国のヌメロウーノ・レーベルものはキングレコード。今から買うのならデジタルリマスター(20ビットリマスター)でイコライジング調整が入念に行われ音が格段に良くなっているのでマンティコア・レーベルものがお勧め。このアルバムは必聴です。 「幻の映像」が気に入れば、現在マンティコア・レーベルから再発されているPFMのアルバムのうち「甦る世界」は買っても損はないでしょう。それ以降の「クックLIVE」、「チョコレート・キングス」、「ジェット・ラグ」はお好みに合わせて選んで下さい。個人的には英語で歌える新ボーカリスト「ベルナンド・ランゼッティ(元アクア・フラジーレ)」の語尾にビブラートがかかりまくる歌い方のせいもあってシンフォニックな面がアルバムを経るごとに薄れていっていったのが当時とても気になりましが、アルバムとしての完成度は演奏にもさらに切れ味が増しジャズ的な展開も増え音の幅は広がったと言えると思います。個人的にはチョコレート・キングス発売に合わせて中野サンプラザで来日公演したPFMの生の姿をこの目で見ている(ちょっと自慢)ので、今ではどのアルバムも好きですよ。
 イタリア本国では再結成してライブなども行っているようです(再結成ライブアルバムも1999年に出していて往年の名曲も数曲演奏したりしています。)ので、早く日本にもやってきてその雄姿を僕たちに見せて欲しいものです。
ニュートロルス「UT」
 1972年オリジナルリリース。 イタリアのバンドで、日本盤発売元はキングレコード。クラシカルなピアノの調べで始まるイタリアンロック絵巻を見せてくれる秀作。ニュートロルスというとルイス・エンリケス・バカロフがオーケストラアレンジした「コンチェルト・グロッソ1&2」がストリングスの音色が美しいバロック的なクラシカルロックをイメージすることが多いのですが、ここでは5人のメンバーによるクラシカルでありながら混沌とした作品を作り上げています。
 イタリアというと陽のPFM、陰のオザンナというのが有名なところですが、位置づけ的にはその中間に位置するバンドといったところでしょう。壮厳でドラマチック、そして洗練されたインターナショナル度ではこの後73年に発表される「アトミックシステム」(僕のコラム初回でも紹介済み)に譲るとして、イタリアらしさとしてはこちらか。ビヨビヨの攻略本が出た頃には「アトミックシステム」は廃盤で手に入らなかったため「UT」を紹介していますが、イタリア初心者の方ならば洗練度の高い「アトミック・システム」か、オーケストラとの共演作品「コンチェルト・グロッソ1&2」から聞くことをお勧めします。
アトール「夢魔」
 1975年オリジナルリリース。 フランスのバンドで、日本盤発売元はキングレコード。1曲目のタイトルが「悪魔払いのフォトグラファー」ということで、微妙な音のズレで怖さが募るような音像の曲からスタートするアルバム。インストウルメンタルパートではフィーチャーされる楽器が曲によって(あるいは曲の中でもパート毎に)ギター、キーボード、バイオリンとめまぐるしく変化しながらも独特の哀愁感がアトールの持ち味です。特にバイオリンのフィーチャー度が割と高く哀愁を帯びたメロディを奏でたり他の各楽器とのユニゾンプレイをかましたりと多彩な活躍をするところが嬉しいですね。 シアトリカルなフランス語のヴォーカル(一部ボイス)はこのフランスのバンドの特徴とも言えるでしょう。あのフランス語の発音と独特のイントネーションは英語圏のバンドには無い個性です。やはりフランスのアンジュもシアトリカルなヴォーカルを聞かせてくれるバンドで、フランスのプログレに興味を持った方ならアンジュの74年に出た3rd「新ノア記」(いかにも、というタイトルですよね。)というトータル・コンセプトアルバムを一度お聞きになることをお勧めします。アンジュもヴァイオリン奏者がいてバンド編成自体は似ていますが、こちらはアトールよりも若干重くヘビィに感じます(トータルアルバムということもあるのか、壮大さもありますよ)。アトールはアンジュと聴き比べるとキーボードの音色など相対的にソフィスティケイトされていますね。
 ついでにフランスでお勧めのバンドをもうひとつということで、「カルプ・ディアン」を挙げておきましょう。前記2バンドと比べると知名度こそ低いですが、その音楽性は彼らに勝るとも劣らないバンドです。saxがフィーチャーされた哀愁漂うサウンドが特徴で、sax好きのプログレ・ファンにはたまらない魅力のあるバンドですよ。 フランスのバンドはどれも総じて全体的にクールな印象があるのは、きっとお国柄からくるものなのでしょうね。
エニワンズ・ドーター「ピクトルの変身」
 1981年オリジナルリリース。 ドイツのバンドで、日本盤発売元はマーキー(目白でワールド・ディスクというCDショップを運営。またユーロロックプレスの発行元でもある)です。個人的にはドイツを代表するシンフォニックロックバンドだと思います。ドイツというと先ずエレクトロニクス系ミュージックを想像されると思いますが、僕はあのミニマルでアンビエントな世界がダメなのであの手の音楽はよっぽどのことがない限り聴かないので、ドイツには接点がないと思っていたクチなのですが、ドイツにもこんな優れたシンフォニックロックをやる連中がいたんですねえ。 ジャケットも哀愁感のある夕焼けの空をバックに枝だけの大きな木がシルエットで映り、その向こうには十字架が小さく移っているというとっても寂寥感がありながらファンタジックな世界を表現しています。
 このアルバムはドイツを代表する詩人「ヘルマン・ヘッセ」の「ピクトルの変身」を題材にしたトータル・コンセプトアルバムになっていて、叙情的な演奏の合間にドイツ語で詞の朗読を行うという意欲作です。key・b・g・dsという4人の編成ですが、その内容はとても壮大です。 このアルバムではボーカルが詞の朗読だけで若干クールな印象を持ちますが、他のアルバムでは歌心溢れるボーカルも魅力になっていてもっとドライブ感があります。このバンドは初期3枚に人気が集中しているようです(でもどれかを気に入ると結局みんな聴きたくなってしまうんですよねえ)。
 ドイツで他にお勧めのバンドというと、中後期クリムゾンタイプの「ヘルダーリン」(セカンドアルバム「詩人の夢」マーキー発売がお勧め)、EL&Pタイプの「トリアンヴィラート」(セカンドの「スパルタカス」がお勧め)、「ヴァレンシュタイン」(「コズミック・センチュリー」キング発売がお勧め)、オーケストレーションをフィーチャーしたクラシカルな「ペルメル」「トリトナス」などがあります。
アネクドテン「暗鬱」
 1995年オリジナルリリース。 スウェーデンのバンドで、日本盤発売元はアルカンジェロ(CDショップのディスクユニオンが運営するレーベルです)。 アネクドテンは現在進行形のバンドです。CDショップディスク・ユニオン店長「竹川真」氏が「クリムゾン以来の衝撃」と雑誌に書いていたのを見て、正直それほど期待せずに買ったアルバムですが、これはアタリです! 実は密かに来日公演も行われていて、当然僕ら兄弟は行ってきました。後期クリムゾンのように凶暴でありながら美しい旋律を聴かせてくれる素晴らしいバンドです。ディスク・ユニオンでは発売後1年たってから日本盤を出すという熱の入れようです。その日本盤だけのボーナストラックがこれまた「エピタフ」や「ポセイドンのめざめ」を彷彿とさせるメロトロンの洪水のナンバーで、これ聴きたさにもちろん買い直しましたよ。
 バンド編成はg、b、cello、dsという4人編成でギター奏者とチェロ奏者がメロトロンも担当しています。静かな出だしかと思いきやグランジ色を伴いながらハードに展開する演奏は、荒削りながらも70年代クリムゾンの正当進化と思わせるものを持っています。チェロの音色というのはバイオリンよりも太いですが、逆にそれが落ち着きのある世界と哀愁を作りだし、バンドのカラーを幅広いものにしています。そしてメロトロンも随所にフィーチャーされメロトロン好きには堪りません。ジャケットは全体に青みがかった寂寥感溢れるもので、数々の名作アルバムのジャケットを手がけたキーフを彷彿とさせ、ジャケットと内容がマッチした見事な出来です。
 こんな現在進行形のプログレバンドがいることは本当に心強い限りです。スウェーデンには現在進行形のバンドとして元カイパのギタリスト「ロイネ・ストルト」の「フラワー・キングス」というシンフォニックロックバンド(このバンドも最近来日公演を行いました。やっぱり兄弟で見に行きましたよ!)があったり、EL&Pファンのパル・リンダーというキーボーディストがいたり、「アングラガルド」というバンドがあります。「アングラガルド」は現在残念なことに既に解散していますが、静と動の対比が素晴らしいサウンドを作り出したバンドです。
ゴティック「ゴティック(夢の光景)」
 1978年オリジナルリリース。 スペインのバンドで日本盤発売元はマーキー(もう廃盤かな?そうすると中古か輸入盤でしか手に入らないかも)。全編フルートがフィーチャーされ歯切れの良いリズムとメロトロンやピアノ(フェンダー系が中心)がそれをしっかりと支える、たおやかで繊細、そしてリリカルな調べが楽しめるゴチック唯一の作品。だからといってイージーな作品ではありません。緊迫感という部分を期待すると肩すかしかもしれないが、ファンタジックなプログレとしては1級品。イギリスのキャメルや日本のケンソー(2ndアルバムあたり)に近いイメージと思っていただければ良いでしょう(って、聴いたことのない人には分からないか・・・)。
 また音楽と非常にマッチしたファンタジックなジャケットも秀逸。LPだとコーティングジャケットでさらに素晴らしいのですが、CDジャケの紙質はちょっとチープで残念。スペイン産CDジャケの紙質はどれも概してチープです。ジャケットもアルバムの一部ですからもう少し紙質上げてくれないかしら。
 あとスペインでプログレの王道を行くバンドといえば間違いなく「クラック/邂逅(かいこう)」でしょう。「邂逅」はクラック唯一のアルバムでゴチック同様フルートがフィーチャーされていますが、使い方としてはかなり違っています。フルートがメインというイメージのゴチックに対して、クラックは分厚いシンフォニックサウンドにとけ込む形でフルートのメロディが舞うサウンドです。 スペインというとフラメンコの国ですが、そういう意味ではその他のバンド、例えば「トリアーナ/トリアーナ」や「カナリオス/四季(あのヴィヴァルディの四季です)」や「アルフレッド・カリオン/迷宮」の方がスペインらしさが強く出た作品です。