キャメルとの出会い
このままでは、コンサート報告だけで終わってしまいますので、これから「巨人たち」のコーナーに入っていきたいと思います。
しかしここまでで、結構な字数になってしまったので「巨人たち」は駆け足で進めさせて頂きたいと思います。

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ボクのキャメルとの出会いは、多分キャメルの日本初発売であったであろう「ミラージュ」というアルバムからでした。70年代に聴いたボクの「ミラージュ」の印象は正直な話、そんなに良いものではありませんでした。当時ボクが好きだったのは、とにかくアトラクティブなロックだったのです。クリムゾンしかり、イエスしかりです。それに比べてキャメルは大人しく感じられたのでしょう?今ひとつ、ピンときませんでした。バンドの編成も、アンドリュー・ラティマー(ギター、フルート、ボーカル)、ピーター・バーデンス(キーボード、ボーカル)、アンディ・ワード(ドラム)、ダグ・ファーガソン(ベース、ボーカル)というオーソドックスな編成で、音もけして派手ではなく、むしろ渋いぐらいですから・・・。そして前述の通り、ギターをリード楽器としたアンサンブル重視のサウンドが、プログレ全盛の当時としては地味だったといってよいでしょう。今こうして聴いてみるとキャメルが、とても誠実なバンドであることがわかるのですが、その誠実さは70年代前半のバンド群と比較されると埋没してしまう類のものだったとも言えるのです。例えばボーカルにしても、クリムゾンやEL&Pのグレッグ・レイクやイエスのジョン・アンダーソン等と比較されると「お世辞にも上手いとは言えない」訳ですし・・・。ジャケットもダサかったそれがキャメルのイメージでした。




今聴くととてもよい!
ところが90年代になって聴いてみると「ミラージュ」はとても良いです。数あるキャメルのアルバム中でもダントツです。楽曲の並びもとてもバランスが取れていますし、アルバム最後のレディ・ファンタジーという超名曲も有りますし・・・。今聴いてみると、この「ミラージュ」がダメだったというのが残念でなりません。キャメルと共に青春を共有する機会を失っていたのですからね。アルバム作りのための工夫が感じられるのにまず好感が持てます。例えばエレキギターを前面にフィーチャーした冒頭曲とかは、オーバーダブされた(と思われる)ギターのユニゾンが気持ちいいですし、楽曲もとてもアトラクティブです。2曲目でのフルートをリードにした楽曲とのメリハリも決まっています。また組曲形式となった3曲目との流れも自然で、キャメルが並のバンドでないことを知らしめています。その3曲目も非常に出来が良く、旧A面を一気に聴き通すことができる配慮がなされています。3曲目の中間部でのムーグと思しきソロではミステリアスムードも漂わせてくれています。途中から絡むスライド・ギターはサイケの残り香をほのかに匂わせたりもして・・・。
旧B面最初のアースライズという曲、最初に流れる強風のSEは砂嵐をイメージしているのでしょうか?それに続くスピード感あふれる楽曲と相まって、キャメルが表現するラクダを駆った砂漠の疾走感が表現されているのでしょう。メイン部のタムのリズムは、まるでラクダのこぶの跳ねる動きを再現しているかのようです。
そして続くのが組曲レディ・ファンタジーです。アルバム中、この曲で初めて使われるエレピがモダンな印象をリスナーに与えます。余り出しゃばらないギターのリードとの掛け合いも楽しく「出会い」と題された1曲目が終わると、切れ目無く、歪んだギター音から始まる「微笑」。非常に多くの展開が用意されていますが、それはトリッキーなものでなく、どこか心洗われるものです。この小編を挟んで、「レディ・ファンタジー」。アグレッシブさと、静謐さとを兼ね備えた楽曲で、割とバーデンスのオルガンが攻撃的にリードを取る場面もあって、一筋縄ではいきません。そしてギターリードのメイン・ループに戻って終わります。このアルバムを聴いて感じるのは、キャメルというバンドの温かさでしょうか?とかく攻撃的なアルバムの多いプログレにあって、心を癒してくれる音楽がキャメルなんだということをあらためて感じさせてくれます。



「聴き込まなければわからない」
90年代になって4thアルバム「スノー・グース」を聴くことになります。このアルバムは90年代にシーンに復帰したキャメルの「怒りの葡萄」と同じ様にコンセプトアルバムとなっています。(もちろん「スノー・グース」が最初で、「怒りの葡萄」は「スノー・グース」を再現しようと作られたものであることはご存じの通り。)ポール・ギャリコの同名小説にインスパイアされて製作されたと伝えられています。(「怒りの葡萄」も、やはりスタインベックの同名小説に想起されたアルバムでした。)デビット・ベッドフォード指揮するオーケストラとの競演アルバムということで、大きな期待を持って購入したアルバムです。結果から言えば、キャメルの全てのアルバムに対して言えることですが「聴き込まなければわからない」アルバムだといえましょう。
オーケストラとの競演という言葉は、プログレ愛好家にとって一種独特の響きを持っている訳ですが、それは時としてバンドの意思とは関係なく膨れ上がる期待感となって、リスナーの耳を曇らせます。プログレッシャーの好きなクラシックを見ればわかるように、ストラビンスキーであるとかマーラー、シベリウス等、壮大に鳴り響くタイトなクラシックであり、けしてモーツァルトやチャイコフスキーのような静謐なタイプではないのです。(前者はトリッキーな楽器の使い方をするが、後者は上品という言い方も出来るかも・・・。うーん、ちょっと違うかなあ?音圧の違いかなあ・・・。もちろん前者が分厚い。)ボクの場合、やはり前者を期待してしまった訳ですが・・・。

1曲目こそ、オーケストラの競演で幕を開けますが、それはとても短いものです。スキャットと共にフェードインするミステリアスな冒頭部はドラム以外、主役はフル・オーケストラ。いやが上にも期待感を盛り上げます。それもわずか2分ほど・・・。2曲目からはバンド演奏によるメインテーマ。けして悪くないのですが、1曲目のフル・オケの期待感からか?少々物足りなく感じてしまうのはボクだけでしょうか?軽快なエレキ・ギターのカッティングが余計に音圧の薄さを感じさせます。それもこれも冒頭のフル・オケとのギャップから来るモノであることが、今ではとてもよくわかります。7曲目からファゴットとクラリネットの掛け合いで再びオーケストラの演奏が加わってくる訳ですが、オーケストラとの競演というので期待感が強すぎた(冒頭部のフル・オケも罪です)のがいけなかった!どうしてもオーケストラというと大編成をイメージしがちですけど、そこまで大がかりなものではないのです。あくまでもキャメルというバンドの演奏主体のアルバムなのでした。11曲目にもオーケストラが再び再演します。フルートから幕を開け、途中からクラリネットも加わりますが、★相変わらず小編成なので、スケールの大きなものを期待してはいけません。中間部からの女性スキャットがミステリアスなイメージであると共に、ピンと張りつめた冷気を伝えます。厳しい冬・・・そんな曲です。12曲目では再びメインテーマが、オーケストラを加えて演じられますが、同曲がアルバムのハイライト!と言って良いでしょう。同アルバム中、最もスケール大きく演じられています。15曲目は冒頭からのストリングス・オーケストラが印象的なナンバー。だからといって、オーケストラが出しゃばり過ぎることはありません。あくまでもバンドと一体になったものです。そして再度メインテーマが温かく奏でられます。それはまるで「春」です。とまあ、これが「スノー・グース」というアルバムです。全英10位というキャメルの出世作、オーケストラとの競演ということを意識しないで、とにかく何度も何度も聴くことで、いつか哀調盤になっている・・・そんなアルバムではないでしょうか?


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