村田さんお便りありがとう!

「Encyclopedia Of European Rock」
もうひとつ、ボクが村田さんに注目したのは「Encyclopedia Of European Rock」というプログレ専門書籍です。その本でユーロロックを研究し探訪なさっていたとは強者・・・。さらにいえば、ボクは同書の存在を知っていて、中古でもいいから手に入れたいと探しまくっているにも関わらず手に入らない貴重書。その後、同書はもっと細分化され「ブリティッシュ集成」「イタリアン集成」ドイツ、フランス、アメリカ等の国別ユーロロック関連書籍へと進化発展していくのですが・・・。それらの全てや同書を発行したマーキー社の雑誌マーキーのほとんどのバックナンバーは持っているのですが、同書だけが手元になく、それをお持ちの村田さんが非常に羨ましい・・・ジェラシー・・・。



さてそんな村田さんからお問い合わせいただいたのが、オランダ・Codaの「Sound Of Passion」イギリス・Hawkwindの「絶体絶命」です。これはまた、随分傾向違いの2バンドですよ・・・。


オランダ・Codaの「Sound OfPassion」
まずオランダのコーダですが、確かに80年代の名作的扱いを受けている1枚です。発売当時は各国のプログレマニアばかりではなく、母国でもそれなりの評価を受けたようですね。ボクも同アルバムがマーキー誌で高い評価を受けていることから、ずいぶん探し回って手に入れた覚えがあります。(発売のタイミングで購入していたなら、何の苦労もなかったのでしょうが・・・。)実際ずいぶん聴きましたし、悪い作品ではありません。
確かにプログレッシブロック低迷期であった80年代中期、この作品が絶賛された意味はわかる気がします。フランスのアジア・ミノール、ドイツのエニワンズ・ドーター等の名バンドが活動中止に追い込まれ、ブラジルのパブロやアルゼンチンのバカマルテが単発的な好アルバムをリリースしながらその後音沙汰をなくす等、プログレッシャーにとって暗い話題の多い中でのことですしね。ただ当時リアルタイムの中で見れば重要極まるバンドとして認知できるコーダですが、CD再発も含めて多くのプログレのアルバムが入手出来る現在にあっても、その価値は変わらないのでしょうか?

前述の通りコーダは悪くありません。同アルバムは楽曲とアルバム構成とが良く出来たアルバムということができます。確か基本の4ピース(ギター、ベース、キーボード、ドラムス)によるバンドアンサンブルを大事にした全編インストルメンタルの大作だったと思います。(不確かですいません。ボクは敢えてライブラリをA〜Zや国別等に整理していません。一聴して特徴的なバンドは、どうして目立ちますよね?前述のような整理をすると、目立つバンドやアルバムを聴いてしまう傾向があることを知っているからです。でも最初は地味でも聴くほどに味が出てくるバンドとかもありますからね・・・。何しろライブラリの数が多くなりましたし・・・。)
しかし傑作か?と問われれば「ウーン・・・」と考え込まざるを得ません。
「80年代のプログレでは5本指に入る傑作」と称える評論家の方もいらっしゃいますし、それはそれで良いと思うのですが・・・、ボクはそれ以外の80年代の代表アルバムに上げられている作品の方をより高く評価しています。コーダはAクラスとして認知しても良い作品なのでしょうが、それにしてはロックバンドとしてのグルーブ感というのか・・・そういうものが物足りなく感じますし、(ユーロロックとして)オランダならではのニュアンスが感じられない気がするのです。オランダ・モノでは「アース&ファイアー」や「フォーカス」や「カヤック」「フィンチ」等が掛け値なしに素晴らしく、それぞれが独自のバンドサウンドを持っています。全てがオランダとは言えないまでも、コーダを聴く前に聴いてみて損のないモノばかりです。(村田さんはムーディーズやBJHがお好きであることから、ダッチポップの流れも汲んだ「アース&ファイアー」や「カヤック」はきっと気に入って頂けるものと思いますよ。どちらも初期作ほどメロトロンの使用頻度が高いです。)

また80年代というくくりの中では先述のブラジル「パブロ・エル・エントラドール」アルゼンチンの「バカマルテ」、やはり南米の「サグラド・コラソン・ダ・テラ」や東欧の「ソラリス」がCodaを含んだ5本指ということになるのだろうと思います。だとすれば、コーダの前に残りの4本から聴いてみてはどうでしょう?アルバムとの出会いの問題なのかも知れませんが、ボクはこの5本指の中でなら残りの4本をより高く評価しています。それはバンドの個性など、色々な要素を含んで考え合わせれば・・・という注釈付きでのことではあるのですけど・・・。パブロ、バカマルテ、ソラリスは近年に新作を発表して健在をアピール、サグラドもリーダーのマルクス・ビアーナが現在ソロ活動主体とは言え現在までにアルバム4枚をリリース、コーダも96年に新アルバムをリリースしている等々・・・(サグラドの2ndを除く3枚にソラリスの旧譜はキングレコード、それ以外のバカマルテの旧譜、コーダ、パブロ、ソラリスの新譜はベル・アンティークレーベルより発売中・・・パブロの1stだけは輸入盤を入手するしか方法がありません)も現在活動中で、特に新作群を聴き比べてみると残り4本のクオリティの高さをあらためて実感する思いです。(4バンドは、昔のイメージを引き継いでいるという意味でもうれしさを感じずにはいられません。そういう意味ではいずれを聴くのであってもまず旧譜からということになります。) 
中でも評価の高いのはサグラドで、新譜になるほど洗練され過ぎてきている感はあるもののトータルクオリティの高さは目を見張らされます。リーダーの流麗なバイオリンとバンドアンサンブルの確かさで、ボクが初めて聴いた3rd「自由の火」ではフュージョンっぽく感じられてしまったほどです。彼らの1stではイエスのジョン・アンダーソンからも絶賛されたとか・・・。同じブラジルのパブロはサグラドよりもスケール感に劣ります。しかし、パブロはサグラドには薄い「繊細なニュアンス」がポイントで、ボクはイタリアのロッカンダ・デレファーテ的な感じを受けます。バンドのポイントはピアノ・・・でしょうか・・・。しばらく聴いてないから、忘れてしまったんですけど、確かフルートの調べがポイントだったような・・・アコ・ギだったかな・・・。バカマルテは「アルゼンチンのPFM」という異名を受けたロックバンドで、ボクは全盛時代のPFMを期待して聴いてしまいました。(「幻の映像」や「甦る世界」とかを期待しちゃった訳です。)そのおかげで最初の評価は高いとは言えませんでした。しかしそういう先入観なしに聴き込むと、アルゼンチン共通の繊細さがあえいながら、ロックのダイナミズムも失われていません。アコ・ギが効果的に使用されている所も高ポイントです。

 ソラリスはそれら3バンドとは趣が多少異なります。ソラリスの特徴は何か?と問われても困るのですが・・・例えば80年代のブリティッシュ系は全般的に70年代初頭のアルバムよりもクリアな音色で古臭くないのですが、70年代のバンドが持っていた音楽に対する「ひたむきさ」に劣るような気がするんですね。前に上げた3バンドも、南米で・・・辺境系というんでしょうか?(サグラドは別格的に洗練度が高いけど)概して不器用で、お国柄が音楽に溶け込んでいるのが微笑ましくもあります。
ところがソラリスは、タイトなバンドサウンドっていうのでしょうか?80年代バンドのトップクラスでは、そういうのが一番感じられるのがソラリスかな・・・。ソラリスのインストルメンツでは確かフルートが効いていたはずで、フルート奏者は98年頃にソロ作まで発表していました。キーボーディストも適切な演奏で楽曲を盛り上げますし、サグラドほど洗練されていないためか?70年代のシンフォニックに近いイメージで聴かせてくれるのが、ソラリスと言えるでしょう。



イギリス・Hawkwindの「絶体絶命」
もうひとつ、お問い合わせのホークウィンド「絶体絶命」はボクは聴いたことがありません。ボクが聴いたことがあるのは、ボクが所有するホークウィンドで最もプログレ(シンフォニック?)寄りの作品と言われる「Warrior On The Edge Of Time」です。メロトロンの使用頻度が高い作品としても有名だとのこと・・・。
村田さんがホークウィンドに期待されるモノが何なのか?わかりませんが、ホークウィンドはボクが聴く限り「いわゆるプログレ」というよりは「いかにもブリティッシュロック」なバンドのようです。作品が古いからなのか?盤が「ブート系(レーベル名とか・・・怪しい)」だからなのか?わかりませんが、ボク所有の同アルバムを聴く限り内容も音質も凄くレアです。そのせいか?やはり60年代から70年代に出ていたアルカディウムやキャタピラのように「未整理で混沌としていた」当時をしのばせてくれるようなサウンドと言えるでしょうか・・・。ほのかなジャズ・フィールがあるものの夢想感が強く、そういう意味ではサイケ臭の方が強いといえそうな気がします。これでシンフォニック度が一番高いとしたら・・・。絶体絶命とは確か「弥勒菩薩の顔をした千手観音」みたいなジャケットのヤツ(相当いいかげんだなあ・・・)だったかと思いますけど、それはボクの持つアルバムよりも前の作品だったはずなので、多分サイケ臭もより強いのではないか?と思いますが・・・。




村田さんには、あんまりお役に立てなかったかも知れませんが・・・また「プログレの部屋」に寄ってみて下さい。

高橋宏之

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