音楽の道は深いですぞ!

池田さんという方からメイルを頂きました。プログレの部屋にメイルを頂いた池田さんは、大学でバンド活動やっている二十歳の学生さんです。バンドでは主にHM(ヘビメタ)HR(ハードロック)やゲーム音楽を取り上げて演奏されているそうです。ボクも大学時代はバンド(というほど、大げさなものじゃないですけど・・・大学1年の春にミュージカル研究会からミュージカルの作曲を頼まれたり・・・そうした音楽活動の縁でミュージカル研究会に所属し、舞台に立ったこともありましたっけ・・・みんな、今、どうしてるのかな?)をやったりしてました。しかし、ボクの理想の音楽がプログレだったことから、自分の演奏能力の無さに失望して、その後一切の音楽活動は止めてしまいました。(あの頃、山下達郎さんとか、日本のアーティストにも優れた才能を持った人が次々に現れて「こんなスゴイ音楽はボクには作れない」と思ったモノでしたが、そういうことも音楽を断念した要因になっています。でも今考えてみれば「ボクが作りたかったり、伝えたかったモノ」は、正しく今ボクが、ゲームで表現しているモノだった訳で、あの頃ボクの音楽の才能を知らしめてくれた達郎さんやオフ・コースの出現は、考えてみれば福音だったのかも知れません。)学生時代は2度と戻ってこない貴重な時間ですから、社会人になってから後悔の無いように充実した時を過ごして欲しいですし、そうした意味からもクラブやサークルに入って活動することはとても有効なことだと思います。(その後、ボクはそうした活動にも物足りなくなって、テレビの仕事に関係するようになっていったり・・・スキーに情熱を燃やしたり・・・今では良い思い出が沢山あります。そして、現在こうしてやっていける下地も、そうした活動の中で育まれていった訳です。)

池田さんは「ゲーム音楽にはプログレ的な音楽が沢山ある」と言っていて、FFの音楽にはドリームシアター(プログレ・ハードとか呼ばれ、プログレのリバイバルの試金石になった名バンドで、変拍子等を取り入れた90代版超絶技巧集団バンドの先駆け)を感じると語っています。最近のお気に入りは北欧系プログレ・メタルだそうで、その他、往年のプログレバンドであるELPやメタル・クリムゾン(「太陽と戦慄」〜「レッド」期)やピンクフロイド、現在進行形のプログレバンドのアネクドテン、カイロ、マスターマインド、ペンドラゴン等と幅広く聴いてらっしゃるそうです。ボクはヘビメタの「デス声」というのがダメで、それさえなければブリティッシュ・ヘビーとかハードロック(アトミック・ルースターやパトゥ等々のB級ハード)なんかも聴いていて、唸るようなハモンドオルガンと地を引きずるような重いベース、手数の多いドラムが当時のブリティッシュ・アンダーグラウンドの息吹を伝えてくれるようです。(もちろんアメリカナイズされる前の4thまでのツェッペリンやイアンギランの頃までのディープパープルとかも、様式美化される前のブリティッシュ・ハードとして聴き応えがあります。)池田さんが聴かれる現在進行形プログレバンドそれぞれは、どれもポリシーある音楽活動と、そうした成果の証としての確固たる作品を残しているバンドです。

例えばアネクドテンはメタルクリムゾンが現代に甦ったかのようなサウンドで90年代に登場し、プログレッシャーを「あっ」と言わせました。現在までにオリジナル・アルバム3枚をリリースしていて、どれもディスクユニオンのオリジナルレーベル「arcangelo」より日本版が発売されています。ディスクユニオンでは同バンドにかなりの力の入れようで、昨年暮れに発売された「フロム・ウィズイン」では紙ジャケットまで製作してしまったほどです。同バンドの特徴は、まずメロトロンという楽器(?)の多様が上げられるでしょう。キングクリムゾン的な使用法が顕著で、プログレッシャーにはたまらないところ。また紅一点アンナ・ソフィのチェロの挿入。キングクリムゾンの4thでも多用され、その音色から楽曲に荘厳なもの悲しさを表現するのに大きく貢献していた同楽器ですが、アネクドテンにあってもバンドの特徴を作るのに大きな貢献を果たしています。それらリード楽器を支えるリズム陣も的確にクリムゾン的なヘビーな音像を造りだしていることから、現在プログレッシャーにとって最も注目されている数少ないバンドの1つです。ボクの同バンドのお気に入りアルバムは最初に聴いたインパクトもあって絶対的に1stです。日本版にしか収録されていない「Sad Rain(邦題、嘆きの雫)」は必聴というほどの名曲で、この曲1曲のために日本版を買い直してしまったほどですが、日本プレスを購入し直すほど完成度にも優れたアルバムといえるでしょう。(3rdは購入しただけで、まだ聴いていないのですが・・・。)叙情性と攻撃性のバランスが取れた味わい深さがたまりません。もちろん2nd以降の完成度も高い安定感のあるバンドですから、メタリックな攻撃性がより前面に出た2ndを最高作に上げるリスナーもいることでしょう。

カイロマスターマインドはアメリカのバンドで、プログレッシブロックというジャンルを越えて、メロディックロックとしてより多くのリスナーに指示されているバンドです。特にマスターマインドはベレンド兄弟の演奏を中心に「まるでヘビーなELPのようなキーボード・サウンド」をキーボード・レスで表現する超絶ギターバンド。シンフォニック・メタルとも呼べるサウンドを有するバンドです。ペンドラゴンは80年代初頭のマリリオンによって始まったポンプロック・ムーブメント期に、シーンに躍り出たバンドのひとつで、バンド初期にはポンプロックの定義にある「ジェネシス・クローン」的色合いが強かった。しかし、作を重ねる毎にサウンドは独自のカラーを強めて、メロディック・ロックとでも言うべき「良いメロディ至上主義の(ギターの)泣きを強調したシンフォ・サウンド」を特徴としています。現在ではリーダーでギタリストのニック・バレットを中心としたソロ・プロジェクトという意味合いが強いのですが、キーボーダーであるクライブ・ノーランのシンフォニックな演奏は同バンドの大きな魅力を担っていて、けしてギター・オリエンテッドなサウンドに終始しているわけではありません。

お薦め色々!

さて、そんな池田さんにお薦めなプログレですが・・・。70年代のメロディックでシンフォニックなロックということでは「キャメル」なんかいかがでしょう?2nd「ミラージュ」から3rd「スノーグース」4th「ムーンマッドネス」の3枚が特に名作として名高いのですが、3rdはクラシカル過ぎるところがボクには少し退屈に感じられて・・・。よりワイルドなロックの躍動感が新鮮な2nd、演奏力が充実し楽曲もより洗練された4thは、メロディックロック源流のひとつとして聴いて損のないアルバムだと思います。(メロディック派にはむしろ中期キャメルの方が、録音クオリティも格段に上がり、楽曲の洗練度も高まっているところから、お薦めなのかも知れません。しかしキャメルの初期作品には、それらを凌駕する熱気が作品全体をおおっている感じがします。クールで洗練された中・後期か?洗練される前の熱情的な初期か?という感じです。)
他にメロディアスなロックでは「カヤック」というオランダのバンドは素晴らしいです。1stと2ndはマーキー・ベルアンティーク・レーベルより国内発売されていますが、これらはプログレとしても1級の出来で、楽曲といい、アルバム構成といい、文句ナシの傑作。70年代中期(だったはず・・・)に発売された当時には「馴染み易いメロディ」が災いし、プログレマニアから「ポップなプログレ・バンド」というレッテルを貼られてしまったようですが、今聴いてみると「そのクオリティの高さ」に驚きます。(ちなみに同バンドのキーボード・プレイヤーでリーダーのトン・シュピンゲルは、80年代にキャメルに参加し、センスの高いキーボードを聴かせてくれます。)

メロディック派には、ドイツの「エニワンズ・ドーター」「ヘルダーリン」も気に入ってもらえることでしょう。エニワンズ・ドーターは5枚のアルバムが残されていて、そのうち3枚がベルアンティーク・レーベルより国内発売されていますが、5枚全てが高いクオリティを誇っています。(1stアルバムから聴くことをお薦めします。B面の楽曲及び演奏クオリティに酔いしれて下さい。)またヘルダーリンは1st「ヘルダーリンの夢」こそ、プログレのヘビィ・ユーザー(といっても、ヘビィサウンドという意味ではなく、むしろ夢想感の強いトラディショナルなサウンドイメージ)にしか薦められないものの2nd「same以降は、メタル・クリムゾン派にも対応可の素晴らしいアルバムを5thのライブを含めて4枚残しています。デビット・クロス張りのバイオリンがフューチャーされているのも高好感度に貢献大。いづれもベルアンティーク・レーベルより国内発売されていますが、まず2nd「ヘルダーリン」から聴いてみることをお薦めします。
また現在進行形のバンドである北欧のフラワーキングスというバンドはどうでしょう?70年代に北欧の代表的なプログレ・バンドであった「カイパ(このバンドも良い!1st〜3rdは、いずれ劣らぬ名作で、やはりベルアンティーク・レーベルより国内発売されています)」のギタリストであったロイネ・ストルトが90年代に結成したバンドで、1stアルバム「バック・イン・ザ・ワールド・オブ・アドベンチャーズ」を聴いた時には、その充実したサウンドにビックリしました。是非、1stから聴いてみて下さい。アネクドテン的ヘビネスやダークネスを探求したいなら、北欧にはまだまだ面白いプログレバンドがあって、「アングラガルド」はアネクドテンに先駆けて、北欧の90年代バンドの物凄さをボクに知らしめられたヘビィでダークなサウンドを特徴としたバンド。オリジナルアルバム2枚を残して解散してしまったことがとても惜しまれます。バンド解散によって両作とも現在廃盤になっていますが、元々ベルアンティーク・レーベルより国内発売されていたもので、(アネクドテンと共に絶大な人気を誇ったことから、幸い国内流通数が多かったため)今ならまだ、運が良ければワールド・ディスク等で国内版新譜や輸入盤中古が発見できる可能性有り。北欧では他、マンティコア、パル・リンダー・プロジェクト、ホワイト・ウィロー等々、クオリティの高いバンドがひしめいています。

もしも少し冒険してみようと思われるなら、個人的に現在進行形のバンドでお気に入りなのがイタリアのク「デウス・エクス・マッキーナ」というバンドです。イタリアの叙情性とハードロック的スピード感に、ジャズロック的なトリッキーさを併せ持った恐るべきバンドで、多分・・・池田さんにとって初めての体験をとなるような唯一無二の音楽性を有しています。このバンドのポイントはハイスピードなバイオリン・プレイとアバンギャルドなボーカリゼーションということになるのでしょうが、いづれのメンバーも演奏力は高く、バンド一丸となった時の音圧は迫力十分です。他にも、アメリカのハードなバンドサウンドで聴かせるラナ・レーン、メロディアスなシンフォニックのスポックス・ピアード、ダイナミックなグラス・ハマー等々は、それほど好き嫌いを分けない優れたアルバムを複数リリースしています。

お薦めの雑誌

さて、池田さんにはそれら音楽情報の入手先についても、ご質問頂いています。ボクが90年代にプログレッシャーに復帰してから、しばらくの間の情報の入手方法はもっぱらマーキーというユーロロック情報誌でした。元々はCDでのPFMのアルバム購入時に、販売元のキングからレコード店に無償配布された「ユーロロック・ハンドブック」という小雑誌を情報源にしていましたが、その小雑誌で紹介されていたのが前述のマーキーという雑誌で、自然と同誌にたどりついたわけです。しかし現在同誌はリニューアルされ、ユーロロックやプログレッシブ・ロック専門誌ではなくなってしまいました。もしもマーキーで情報収集をとお考えならば、「1996年9月25日発行の68号まで」のバックナンバーを入手されることをお薦めします。またマーキーがリニューアル以降、同出版社より発行され始めた「ユーロロック・プレス」という雑誌もお薦め。ボクのような「濃いプログレッシャー」は「ウンチクが大好き」であることから、カタログ的色合いを強めた「ユーロロック・プレス」には多少の不満はあるものの「ブリティッシュ・ロック」から「シンフォ系」「HR・HM」「ジャズロック」までポップス以外のほとんど全てのジャンルを網羅してくれている同誌は、現在のボクの大きな情報源となっています。また専門店の通販カタログや情報チラシもボクにとって心強い味方。ワールド・ディスク等で配布されているので、入手されることをお薦めします。★また、最近気に入っている情報誌にブリティッシュ・ニッチポップ&ニッチロックを扱う「ストレンジ・デイズ」というのがあります。70年代の情報が主なので、池田さんの場合はどうなのか?わかりませんが、ハーベストやバーティゴ等、当時のプログレッシブ(先進的)なアーティストを専門的に扱うために登場したレーベルを、代表的なアルバムと共に紹介してくれるのはとても有り難い。ご紹介の雑誌は、大規模なCDショップ(といっても、HMVやバージン・レコードにはあったっけなあ?)や専門店で取り扱っているはずなので、探してみて下さい。

池田さん、音楽の道は深いですぞ!・・・では、また。

高橋宏之


 

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