おすすめの2枚
実は「スティルライフ」で少し幻滅したボクは、しばらく中期バンダーグラフを購入するのに躊躇していました。しかし中期の残りの2枚を聴いてビックリ。非常に出来がいいのです。ピンと張りつめた緊張感と整合感が心地よく、楽曲もとてもドラマチックで、初期バンダーグラフよりもこちらをフェイバレットとして上げるプログレファンがいたとしても何の不思議ではありません。75年以降はプログレの衰退期と言ってよい頃ですが、そんな頃にこれだけのボルテージの作品をリリースしていたバンダーグラフに頭が下がる思いです。初期のスペイシーさやサイケなイメージが苦手なリスナーには、この2枚「ゴッドブラフ」「ワールドレコード」を絶対的にお薦めします。(ところが面白いことに、この2枚を聴いてから前出のスティルライフを聴いてみると、あらためて同アルバムの出来の良さが浮き彫りにされます。やっぱり、最高作の呼び声が高いだけのことがあると納得せざるを得ません。   中期3作は前期に比べてハモンドがより活躍するような楽曲構成になっています。前期がもろにプログレッシブロックだったのに対して、中期はブリティッシュロック色が濃くなったという言い方も出来るかも知れません。)


VDGG → VDG
初期の2枚、1st「The aerosol grey machine」2nd「The least we can doit wave to each other」に関しては、3rd4thを気に入った方には十分納得頂ける作品でしょう。安心してご賞味下さい。2ndなんかは、かのニドロローグの名作「Lady lake」と近似性を指摘する向きもあるようです・・・。同作(レディーレイクです)のライナーには2つのバンドに共通する「唾吹きフルート(唾を飛ばしながらフルートを吹いているような音色のことです)」を指して「ジェスロ・タル」っぽさにも言及していましたが、「唾吹きフルート」だけに止まらずジェスロ・タル的な部分も確かに両バンドにはあるように思います。(ちなみに、「唾吹きフルート」というとイタリアンプログレに非常に多いスタイルですね。オザンナなんかは唾を飛ばしまくってますし、ジャンボなんかも唾吹きフルートが印象的でした。イタリアでジェスロ・タルは人気があったみたいですし、その影響も大きかったのかな?)特にサイケ色を廃した中期バンダーグラフでは、ジェスロ・タルの問題作「Pation
Play」を想起させる展開があったり、バンドアンサンブルの点での相似性もあってボク自身は非常に楽しめます。(発売当時日本では最高作と評されたジェスロ・タルの同作ですが、90年代にプログレッシャーに復帰してみるといつの間にか問題作として扱われていました。ボク自身はパッションプレイこそジェスロ・タルの最高作と信じて疑いませんが、他の方々はどうなんでしょう?)

そして後期のVDGになったバンダーグラフです。
「The quiet zone/The pleasuredome」「Vital」という2作品を残してバンドは活動停止してしまうことになります。この2作品に特徴的なのは前期・中期でバンドの特徴となっていたサックス・フルート奏者であるデビッド・ジャクソンが脱退してしまったことでしょう。その代わりにヴァイオリンのグラハム・スミスが加入しています。グラハム・スミスは元ストリング・ドリヴン・シングというバンドのメンバーで、個性的なジプシー・ヴァイオリンならしていた人です。このバンドも当時ボクは結構聴き込みました。非常に不思議なサウンドで、浮遊感ある個性的なバンドだったと記憶します。実はボクは後期バンダーグラフは聴いていなくて・・・だからどんなサウンドかとお伝えできないのですが、何でも・・・よりピーターハミルとバックバンドといった趣が強くなっているとのことです。リズムセクションも今までになくタイトであるということなので、スミスのヴァイオリンと相まって緊張感のあるサウンドになっていると想像するのですが・・・。


パンダーグラフの不運
バンダーグラフ・ジェネレータの解散後ピーターハミルは地道なソロ活動を現在も続けています。その辺をフォローしていないボクですが、雑誌等の情報によればソロになってもハミルの表現するパワーは衰えを知らないそうです。もちろんハミルの個性的なボーカルは、ピーター・ガブリエルとは言わないまでもいくつものフォロワーを生みました。ブリティッシュプログレのガラハッドなんかは、「このボーカル・・・どこかで聴いたことあるぞ・・・」と思っていたら、もろハミルの唱法で歌っていたりしますし・・・。フランスの「Evidence」というバンドはかなりの影響を伺わせます。また「ランドベルグ」というバンドは、アネクドテンと共に現在の北欧プログレ界の牽引役として重要なバンドですが、このバンドも相当にバンダーグラフに影響されたバンドです。ドヨーンと重くたちこめた雰囲気は、しかしバンダーグラフを遙かに越えてしまいブリティッシュと言うよりも北欧の低くくぐもった暗黒を想起させるかのようです。そういうことを考えてみても、バンダーグラフはメジャーになってしかるべき悲運のバンドだったと言わざるを得ないでしょう。(マニアックな感は否めないモノの・・・。)彼らがマイナーなまま解散に至った経緯には、バンドにとって最も重要な時期に活動を休止していたことが、大きく影響していたことを指摘しないわけにはいかないでしょう。

バンダーグラフは71年に一時活動を中断した訳ですが・・・今考えてみれば、その頃というのはプログレの最も盛り上がっていた時期だった訳です。その重要な時期に活動を休止してしまったことで、バンダーグラフは一般への訴求力を失ったと考えるのです。例えば、その良い例がムーディーブルースです。ムーディーブルースもやはり、セブンスソジャーンを発表(71年頃でした)して活動休止というバンダーグラフと同じ様な道を歩みました。そのおかげで当時は日本のプログレファンには以外と知られていなかったと記憶します。まあ、ムーディーブルースはソロ楽器によるインタープレイ等といったマニアック好みの表現はしていませんでしたし、割とポップなメロディー思考のバンドだったのも日本のプログレファンには受けが悪かった原因なのかも知れませんけどね・・・。(ただしムーディーブルースには「サテンの夜」等のシングルヒットもあって、バンダーグラフと比較するにはムリがあります。)概して、プログレバンドは芸術肌のミュージシャンが多かったためなのか?盛り上がった時期で活動を休止するバンドが後を絶ちませんでした。
 一番ショッキングだったのがやはり「レッド」発売同時期に解散宣言したクリムゾンですし、イエスも「海洋地形学物語」発売後にメンバーが一時ソロ活動のためバンドが休止しましたし、ピンクフロイドは休止宣言はしていなかったものの「狂気」以後、かなりのブランクを作りましたし、ELPも確か「恐怖の頭脳改革」以後休止したはずですし・・・。ただそれら超メジャー級のバンドは、活動休止の前に決定的なヒット作や代表作をリリースしてからバンド活動を休止したのでしたが、バンダーグラフの場合は3rd4th共にマニアの評価は高いものの一般の認知を受けるには至りませんでした。いやむしろ多くのプログレバンドが一般に訴求したのが、正にバンダーグラフの休止時期に符合すると言った方が正しいと言えましょう。本来ならプログレ5大バンドとは言えないまでも、ジェントル・ジャイアントやルネッサンス等と対等の評価を受けてもおかしくなかったバンダーグラフの不運はそこにあったのではないか?と考えるのです。ボクにとって時にハミルの歌声が「悲痛な叫びにきこえる」のは、メジャーに負けないクオリティの音楽を作り上げながら、チャンスに恵まれなかったハミルの悲運を歌っているかのように感じるからなのかも知れません。


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