〜3月号 遙かな探求の旅〜


2000年も早いモノで、「アッ」という間に3月がやってきました。
「もう3月号なの?」という感じで、正直・・・焦ってしまいました。

最近「当コーナーへの質問」に対して、長尺なお返事を書いてしまっている(これは、身から出たサビだなあ)ため、何だか「プログレの部屋ばっかり」書いているような気になってしまっているため、本編の方も書いてしまっている感覚になっているんでしょうね?まあ、好きなコト(やっぱり道楽だな・・・)について書くのは苦にならないですから、ついつい余計なことまで書いてしまう傾向にあるようです。ボクの場合、本業(シナリオとか企画)に詰まると、しばし別のことへの逃避行動に走る訳なんですが、それが最近では「プログレの部屋」ではないか?という社内のもっぱらの評判です。確かに「このコーナー」を始めた当初は「少な目」な文章量だったものが、回を負う毎に明らかに増大している訳で、それは仕事の煮詰まり具合と一致しています。だからみなさん、「プログレの部屋のボリュームが増大すること」=「ゲームの進行度アップ」という風に思って頂いて、今後も暖かいご声援をよろしくお願いします。

さて今回の「プログレの部屋」3月号ですけど、やっぱり「紙ジャケ・キングクリムゾン」発売おめでとう、その2!ということで、お送りしようかと思ったのですが・・・。ここのところ、ゲーム製作に限らず「とても頭を使うことが増えている今日この頃」で、フラストレーションが溜まると消費行動に走りがちで、それは結局詰まるところ「CD増大」に行き当たります。「池田さんへの返事」に書かせてもらった「ストレンジ・デイズ」という雑誌の影響からか、最近は60年代〜70年代のブリティッシュロック全般にまで収集欲が広がってしまいました。特に「ストレンジ・デイズ」で特集された「サージェント・ペパーズ・ロンリーハーツ・クラブバンド」は、ボクの洋楽狂いに至る原点になったビートルズの傑作アルバムです。それに関連したり、影響されて出来たアルバムが当時あったなんて!それを知ってしまったら、いても立ってもいられなくなってしまったのです。(現在、一般的にビートルズの実験アルバムとして名高いのは「リボルバー」というアルバムなのだそうです。サイケデリックという切り口では確かにそうかも知れません。しかし当時のボクにとってサイケデリックとは魅力的なものではなかったし、それは現在でも変わりません。ボクは音楽を麻薬とかでラリる時の増幅剤として用いようとか、音楽でラリろうとか、思わないですもん。)

プログレッシブロックでは当たり前の「トータル性」を考えて作られた「アルバム」の原点として、燦然と輝く「サージェント・ペパーズ・ロンリーハーツ・クラブバンド」は当時本当に凄いアルバムでした。それまでアルバムとはシングルヒットが複数入っている「お徳用レコード」というほどの意味しか持っていなかった訳で、それはそれ以前のビートルズのアルバムでさえ、そうした色合いが強かったものでした。ところがサージェント・ペパーズだけはリスナーに「ストーリー性」を感じさせる作りになっていて、A面オープニングからB面ラストまで、一気に聴き通せるものだったのです。アルバムというと、聴きたくない曲の「1曲や2曲」は必ず入っているモノでしたが、サージェント・ペパーズだけはアルバムの全ての曲と流れが必然で、逆にどれ1曲がなくても完成しないトータル性を有していたのです。曲中や曲間に歓声や拍手などが挿入されていたことも「疑似ライブ」的な臨場感に一役買っていたのは確かで、ブラスやオーケストラのセンスの良い起用法といい、その後のロックやポップスに大きな影響を与えていたであろうことは間違いありませんでした。ビートルズというとビートロックやビートポップというイメージがあるかも知れません(そんなコト思うのは当時を知っている人か?逆にポピュラーな音楽として浸透しているのかも)が、本当は中期以降のビートルズはとても実験的なロックバンド(ポールのソロ・ユニットなんて意見もあるけど)だったのです。

しかしその後、ボクはポップス系から一切足を洗ってしまったため、サージェント・ペパーズが与えた影響についての文献を読む機会には、まったく恵まれていなかった訳です。それが「ストレンジ・デイズ」に特集され、サージェント・ペパーズに影響されて完成したであろうと推察されるアルバムが、大量に紹介されていたのですから大変!ボクのサージェント・ペパーズ好きが「ムクムク」と顔を表し出してしまったのです。

ボクのプログレへの遙かな探求の旅の出発点は「サージェント・ペパーズ」でした。そして、プログレを探求する契機になったアルバムが「ムーディブルーズ」のアルバム「サテンの夜」でした。やはり出発点がビート系ロックだったムーディブルースは1967年11月に「デイズ・オブ・フューチャー・パスト(邦題・サテンの夜)」をリリースします。このアルバム、「ある一日の始まりから終わりまで」をテーマに、最初からコンセプト・アルバムを製作するという意図の元に作られています。グレアム・エッジの暖かく深みのある語りと、それに続くオーケストラの重厚なストリングスがアルバムの冒頭を飾ります。もう、その瞬間に聴く者を現実社会からトリップさせてくれる素晴らしい豊かな音楽。まるでディズニー映画でも見ているかのようなビジュアル的なサウンドと暖かみのあるボーカルと、時にバンドサウンドやメロトロンが、リスナーを異世界へと誘うのです。当時15歳(ぐらい)ボクは童心に帰って、ただ、ただ「デイズ・オブ・フューチャー・パスト」の世界に漂ったものでした。目覚めてから、ジャングルを駆け、アラブの昼下がりを徘徊し、ユーロの夕暮れを眺めた「40分間の冒険世界」は、永遠の名曲「サテンの夜」によって終わりを告げます。ボクは、あの頃どれだけ「サテンの夜」に親しんだことでしょう。ムーディーブルースの実質的な1stである「サテンの夜」から7th「失われた世界」までは、いづれ劣らぬ名作として、今でもボクの大事なアルバムたちですが、その原点にあるのは「サテンの夜」であり、コンセプトアルバム「サージェント・ペパーズ〜」なのです。

そんな訳で、ここのところ「サージェント・ペパーズ〜」に影響されたらしき数々のアルバムを買い漁っていて、それがCD店通いに拍車をかけることになりました。例えば「ザ・フー」のロック・オペラとして名高い「トミー」は、当時聴く機会を失していました。何しろ、映画や舞台などで大きな話題になっていたアルバムだったことから、ニッチ好きのボクとしては「畑違い」として退けていたのです。ところが、これをストレンジ・デイズでは大絶賛していて、実際聴いてみたところではボクの大好きなジェスロ・タルのブリティッシュロック・アルバム「パッション・プレイ」張りの好アルバムでビックリ。アルバム構成力の高さといい、バンドメンバー各人の演奏力といい、適度なインタープレイを織り交ぜながら、緊張感のあるアルバムに仕上がっていました。ピート・タウンゼント侮り難し!こうなってくると、色々聴いてみたくなるのが「音楽バカ」の性ってヤツですぜ、お客さん!という訳で、同誌で推薦された「これまで買い逃していた」往年の名ブリティッシュロック・バンドにも自然と触手が伸びていき、「ザ・フー」のその他のめぼしいアルバムは勿論のこと、ジミ・ヘンドリックスの名作と名高い2nd「ボールド・アズ・ラブ」やプロコルハルムの1st「青い影」「グランドホテル」から、名オルガニストであるスティーブ・ウィンウッド率いるトラフィックの同名アルバム&4th、当時「ロール・オーバー・ベートーベン」で一気にメジャーに浮上したELO(エレクトリック・ライト・オーケストラ)のメジャー前の1st&2nd、ELOの前身バンド「ムーブ」のアルバム各種等々、買いまくったという訳です。(その間にも、プログレを平行して購入していたことは言うまでもありません。)

ボクがその昔、プログレから足を洗った頃は「もう聴くモノを失ってしまった」という失望感からだったのですが、90年代に入ってプログレッシャーに復帰してみると「知らなかったアーティストがこんなにいた」ことをあらためて知らされました。そして今また、サージェント・ペパー的なアルバムとして、興味の対象がこんなに現れるなんて「財布は寂しくなる(超寂しい!)」けど「心は豊かになる」気がします。ボクの音楽探求の旅はまだまだこれからなのです・・・。


PS:「クリムゾンはどうした!」とお怒りの諸兄のために、少々・・・。

今回の紙ジャケ再発版は2nd「ポセイドンの目覚め」3rd「リザード」4th「アイランド」の3枚で、いづれも20bit仕様のゴールド盤です。音質はやはり「キングの宮殿」並に「LPを聴いている臨場感」が味わえる優れモノ。お手持ちのサウンドシステムのクオリティにもよりますが、「今までのCDは全般的に臨場感が平板だったんだ!」ということを実感したい方にはうってつけでしょう。(それぞれの楽器の分離度や立体感は、ホントにスゴイぞ。こういうの通常のCDではムリなのか?)更に今回の3枚にはライナーと別に「ロバート・フリップ氏が所蔵していた」と思われる当時の「クリムゾンの記事のスクラップ(当然、英国の記事)」が印刷された小雑誌が添付されています。これを見ると「当時のクリムゾン」がしのばれてとても楽しいので、ボクにとっては「良い買い物」だった感じです。「ロバートの商売上手」と思いつつも、クリムゾン・フリークには必携と言えましょう。難を言えば、「アイランド」のB面ラスト曲「アイランド」では、録音レベルが低いのをリマスター時に引き上げた弊害でしょうか?ボーカル時に少々、ノイズっぽく聴こえる箇所があることで、オリジナルのマスターからそうだったのか?わからないのですが、それだけが非常に残念でたまりません。今後発売されるであろう、後期メタルクリムゾンの再発紙ジャケ盤でも「スクラップ」が添付されるようなら、「やっぱり買い!」としか言いようがありません。ボクとしては「アースバウンド」を出して欲しいのですけど、ロバート氏は「クオリティの低いモノは出さない」主義なので、やっぱりダメなんでしょうねぇ・・・。

高橋宏之


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