カーン
カーンはスティーブ・ヒレッジのリーダーバンドです。ボクはカンタベリーの流れで、弊社副社長のの薦めもあって購入にいたったアルバムです。その時は正直コレクター的感覚でしかありませんでした。しかしこの「スペース・シャンティ」は聴いてみてビックリ、クオリティがとても高いのです。多くの期待をしていなかっただけに、逆にショックでもありました。エッグ解散後のデイブ・スチュワートとゴング脱退後のスティーブ・ヒレッジが結成したカーンだけに、やはりカンタベリーの流れを汲んでいますが、何しろ正統的ブリティッシュロックの「格好いい」サウンドが楽しめます。メンバーはギターのスティーブ・ヒレッジに、元クレージー・ワールド・オブ・アーサーブラウンのニック・グリーンウッド(ベース)エリック・ピーティ(ドラムス)がレギュラーで、前述のデイブ・スチュワート(キーボード)はゲスト扱いになっています。ヒレッジとスチュワートの2人はかつて、モント・キャンベル等と共にユリエルというバンドを組んでいて、ヒレッジがケント大学入学のためバンドを脱退したため、オルガントリオ編成のエッグが誕生したのは有名な話です。その朋友の2人がカーンによって再び結びついたのでした。
サウンドの方ですが、演奏にそつがなく、バランスが取れているため、以外とすんなり聴けます。やはりカンタベリーの流れを汲んだサウンドを有していますが、エッグ等に比べてとても洗練されています。以外とドラマチックな曲構成を持っている1曲目等、カラフルでバラエティーに富んだ楽曲も素晴らしい。ブリティッシュロック・ファンであれば聴いて損はないクオリティであることは保証できます。ただグレイシャス同様、派手派手で抑揚の激しいドラマチックな展開を求める向きには、最初は物足りなく感じてしまうかも知れません。


T2
T2はかつてガーデン・シェッドより日本プレスで発売されていたヘビーなサウンドを有したブリティッシュロックです。バンドはトリオ編成で、キース・クロス(ギター・キーボード)ピーター・ダントン(ドラムス、ボーカル)バーナード・ジンクス(ベース)のトリオ編成。リーダーであるピーター・ダントンの手記によるとアルバム発売当時のT2は快進撃を続け、クラブでの演奏が評判を呼び各種のフェスティバルにも参加し、キース・クロスはクラプトンの再来とまで呼ばれたとのことです。
本作
「幻想楽園」の1曲目を聴くとかなりヘビィなサウンドでそんなT2の片鱗を伺わせますが、2曲目などはうってかわってとてもリリカルで、同曲の中間部からはオーケストラも加わって楽曲を盛り上げる等、全4曲の各曲共に70年代初頭のあらゆるジャンルをゴッタ煮にしたような熱いブリティッシュ・サウンドになっています。T2はハードロックとカテゴライズされる作品で、確かにヘヴィな面もありますが、それだけには終わらない音楽性を有した正しくブリティッシュロックと呼べる作品です。シンフォニックではありませんし、むしろハード系のリスナーに向く作品といえるかも知れません(4曲目の後半がかなりハードロックしてます)が、一通りプログレッシブロックを聴き込んでいくほどブリティッシュ・プログレの完成度がわかるように、その源流であるブリティッシュロックが愛おしくなります。(ボクがそうなんですけどね。)そんなリスナーには楽しめる作品だと信じます。このアルバムも紙ジャケ再発によって大幅な音質向上を遂げることを楽しみにしたいところです。


グレイヴィー・トレイン
グレイヴィー・トレインも、かつてヴァーティゴ・レーベルから発売された作品です。
ボクが昔、MSIで出されたこの2nd
「バラッド・オブ・ア・ピースフル・マン」を聴いた時には正直言ってピンときませんでした。むしろヘヴィな唾吹きフルートの舞う1stの「same」を高く評価したものです。1stのジェスロタルをさらにヘヴィにしたようなサウンドに好感が持てたからです。2ndは元々、オーケストラがフィーチャーされているという触れ込みであったため、ピンクフロイドの「原子心母」やムーディーズの「デイズ・オブ・フューチャー・パスト」のようなサウンドを期待してしまっていたのかも知れません。「オープニングからオーケストラが鳴り響く」イメージを持ちすぎたために、かえってガッカリしたのでしょう。かといってロックの走りやリフみたいなものも希薄だと感じられて「ダマされた」と感じてしまったのでしょうか・・・。
しかし最近、時が経ってからこの2ndを聴き直してみて随分印象が変わりました。本作は、サウンドだけを取り出すとトータル的に作られているアルバムのようにさえ聴こえます。今聴いてみるとオーケストラはかなり頑張っていて、特に2曲目のオーケストラの盛り上がりは感動的ですらあります。どうして当時、こんな良い作品を切り捨ててしまったのか?不思議にさえ感じます。やはり当時はブリティッシュよりもイタリアン・プログレに傾倒していた影響大だったのでしょうね。実は小曲の5曲目等はかなりヘヴィなサウンドで、バンド一丸となる1stを彷彿とさせたりもします。バンドはギター、ベース、キーボード・フルート・アルトサックス・ボーカル、ドラムの4人編成で、ヘヴィなフルートのイメージが強いのですがアルトサックスも要所で効果的に使用されています。ジャージーなサウンドと、オーケストラのクラシカルなサウンドが融合した同バンドの2ndアルバムは、LP時代にはそのレア度から幻のアルバムだったそうですが、その名に恥じぬ実はなかなかの好作と言える作品といえるでしょう。


イースト・オブ・エデン
イースト・オブ・エデンは今回紙ジャケ再発される69年作「世界の投影/Mercater Projected」を1stアルバムとして、その後幾度ものメンバーチェンジを繰り返しながら、割と息の長い活動を続けたジャズロック・バンドです。
最高作はとても個性的なジャケットの2nd
「錯乱/SNAFE」というアルバムとなっていて、その実験的な手法やリズムアレンジは「当時のソフトマシーンを凌駕している」とさえ言えるかも知れません。確かに同作はアバンギャルドでトリッキーなアレンジが端々に見受けられるでしょう。ボクも同作を聴いた初期の頃には少しキツイものを感じました。
しかしその実験精神はけして難解な方向には向かっていないことがやがて明らかになりました。ヴァイオリン、サックス、ベース、ギター、ドラムスが一丸となっての演奏は爽快です。これもまた、70年前後の混沌としたブリティッシュ・サウンドなのです。1stを購入したのは最近のことで、既に同作は廃盤になってしまった後でしたから当然中古のプレミアム付きでしたが、けして後悔はしていませんでした・・・再発されると知れる前までの話です。だから1stについてボクが語れることはありません。しかしきっと当時の熱いサウンドを有していることと思います。


チューダー・ロッジ
オーボエの朗々とした響きから始まる「チューダー・ロッジ」はブリティッシュ・フォーク3種の神器の1つとされているアルバムです。まるで夜明けの朝靄でも連想させるかのような1曲目からしてフォークです。伴奏はほとんどアコースティックギターのアルペジオですが、途中に入るフルートが清涼感をかもし出します。ボクは基本的にロックサウンドが好きなのですが、イースト・オブ・エデンのようなヘヴィなアルバムの後にはこんなアルバムに心が和んでしまうから不思議です。好きな人にはエブリタイムOKなのでしょうが、ボクのようなロックリスナーにはヘヴィなサウンドの箸休めのような役柄として、こんなアルバムも悪くありません。
メンバーは、リンドン・グリーン(ボーカル・ギター)ジョン・スタンナード(ボーカル・ギター)アン・スチュワート(ボーカル・ギター・ピアノ・フルート)の3人ですが、ゲストにバスーン、クラリネット、オーボエ、ギター、バイオリン×2、ビオラ、チェロ、ベース、ドラムが曲毎に加わって、バンドサウンドやオーケストラルなサウンドも披露しています。メンバーだけの楽曲ではモロにフォークですが、バンドサウンドやオーケストラルなサウンドの楽曲では、時に初期ルネッサンス(ジェーン・レルフ時)的なニュアンスさえあるので、そんなサウンドがお好きな方は試されてはいかがでしょう?


メロウキャンドル
メロウキャンドルは3種の神器だということで、やはり期待を抱いて購入した記憶があります。しかし当時は「単なるフォークソングである」と早合点して切り捨ててしまっていました。
実は今回のプログレの部屋のため、久しぶりに聴いてみたのですが・・・。確かにフォークソングの体裁ではあるのですが、曲毎の色づけというか?工夫の跡が見受けられます。全体的にうっすらと、くぐもった哀感がとてもセンチメンタルです。1曲目などからして室内楽(というより古楽に近いかな?)的なアレンジで聴かせますし、全体的にリズム陣は控えめがプロダクションなので地味目な印象は拭えませんが、フォークソングというカテゴライズには止まらない工夫が凝らされています。4曲目は何だか、初期アース&ファイア的なニュアンスもありますし・・・。このアルバムにフィットするのは、やはりフォークソング系が苦手でないリスナーということにならざるを得ません。しかし、やはりどこか?ジェーン・レルフ期のルネッサンスも彷彿とさせる面も持ち合わせていますし、英フォーク3種の神器とまで言われた作品が「どんなものか?」というのをこの機会に試してみるのも、けして悪くはないと思いますよ。


フェアリー・シンフォニー
しんがりのトム・ニューマン作「フェアリー・シンフォニー」は、ケルト系のトラディッショナル・シンフォ(そんなんあります?)といえるもので、よくマイク・オールドフィールドが引き合いに出されますが・・・実際にそんな感じです。チュブラーベルズよりは、ハージェストリッジといった趣です。多重録音によって作り出されたインストルメンタル作。少しフローティングなソフトサイケ色もあって、ジェード・ウォーリアーがバーティゴ・レーベルに残した初期3作に通じるニュアンスもあったり・・・そういえばトム・ニューマンはジェード・ウォーリアーのメンバーでしたっけ・・・でもジャズ色は薄いです。ジェード・ウォーリアーは結構ジャージーですもんね。このアルバム、どんな人に向くとは一口にはいえません。
強いて上げるなら、好奇心が旺盛なトラディショナル的な表現に苦手意識を持たない人・・・という感じでしょうか?何だか、音楽でビジュアル的なニュアンスを表現しようとするかのような・・・イマジネーティブな作風です。リコーダーとアコースティック・ギターの音色が主題を奏で、トランペット等の各種楽器がそれぞれのパートに彩りを添えられ、その間にSEが挿入される・・・とても静的なサウンドです。何だか牧歌的な映像のサントラのようなイメージもあります。豪華なゲストは書き切れませんし、使っている楽器も多彩。このアルバムは、多分1聴した時のフィーリングで「好きか?キライか?」が決まってしまうのかも知れません。ボクの場合は、例の如くピンとこなくて、しばらくはお蔵入りでした。何度も思い出したように取り出しては、少しずつ馴染んできたような印象があります。「大傑作」と声を大にしてお薦めする作品ではないでしょう。
しかし、手元にあると「何だか、気になる」アルバムなのです。





 ということで、2000年の最後を飾るプログレの部屋はいかがだったでしょう。結構なアルバム枚数をインプレッションしてしまった格好になりましたけれども、これがプログレッシャー同胞のお役に少しでも立てれば幸いです。21世紀はどんな年になるんでしょう?素晴らしいプログレバンドは現れるのか?はたまた、思いも寄らなかった幻の作品が再発されるのか?2000年の最後に来て「たかみひろしさんお薦め」のアメリカの幻のアイテム「ラム」がプレイベート再発(限定生産だったし、情報もほとんどないので、買い逃した方が多いんじゃないかな?)されましたし、実りはけして少なくありませんでした。そんな2000年だったからこそ、2001年のミレニウムにも期待してしまうのです。国内プレスのリイシュー・ラッシュは今後とも是非続けて頂きたいものですし……ボクとしては何とか来年こそ、ダンカン・マッケイの「スコア」やカーブド・エアの「エア・カット」を何とかしてもらいたいですけど「何とかなりませかね?メーカーさん!」という感じです。
仕事的には、任天堂さんから発売される新携帯ハード「ゲームボーイ・アドバンス」用ソフトで作っている
「黄金の太陽」がとても重要で、忙しい21世紀が待っていますけど・・・プログレを聴きながら頑張りたいと思います。そちらの方の応援もよろしくお願いいたします。

それでは良いお年を!


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高橋 宏之


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