「ナイス」
さてナイスの紙ジャケ再発盤についてです。これもゴング同様ビクターから再発されました。
今回の再発は

■68年の1st「ナイスの思想」
69年2ndの「少年易老学難成(前の盤の時から思ってましたけど、これは何と読むのでしょう?)」(少年老イ易ク学成リ難シ……だと思われます。webmaster.Jr)
69年3rd「ジャズ+クラシック÷ロック=ナイス」

の都合3枚です。
お察しの通り、ナイスは作を重ねる毎に完成度が高まっていくと言われています。元々PPアーノルド(元々ティナ・ターナーのコーラスだった女性ボーカリスト)のバックバンドとしてスタートしたのがナイスの始まりだったそうで、やがてイミディエイト・レーベルとバンド契約を結ぶことになるわけです。1st時にはキース・エマーソン(キーボード)リー・ジャクソン(ベース・ギター・ボーカル)ブライアン・デビソン(ドラム)の他にオリジナルメンバーとしてデビッド・オリスト(ギター・トランペット・フルート・ボーカル)が入った4人編成でしたが、2nd以降はオリストが脱退し、その後のロックの1形式ともなるオルガントリオが誕生するわけです。ナイスのトリオ形式は、最近のライナーやロック書籍には書いてないようですが、非常にインパクトのあるバンド編成と当時言われていた記憶があります。(もしかすると、ELPとかのライナー等には述べてあるかも知れませんけど)それまでのバンド編成はフロントマン(=ボーカル兼任)+リズム隊という構成で、リズム隊もベース+リズムギター+ドラムスというのが一般的だったはずです。まあ実際はリズムギターやベースがボーカルを取る場合が多く、その代わりにリード楽器が加わるという編成でバンドを組むというのが一般的だったはずです。ところがナイスのようなトリオ編成が登場して、その後バンド編成の考え方が柔軟になったのでしょう。色々な形態でのトリオ編成が登場することになるわけです。少なくともトリオ編成として代表的なバンドとされたのがナイスだったことは間違いありません。(その前にクリーム等があったわけですが・・・。)
それで内容の方なのですが、やはりプログレファンにはトリオ編成になった2nd以降が本命でしょう。2ndのB面の組曲はELPのプロトタイプといわれているようですし、3rdもエマーソンのキーボードプレイが堪能できます。オーケストラと競演した4th「5ブリッジス」もナイスの代表作として定評があります。例えば、北欧の代表バンドであるコレギアム・ムジカムはナイスのフォロワーとして有名ですし、オランダのトレースやスーパーシスター等もナイス系のキーボードバンドとして名高いように、ナイスの影響力は絶大だったのです。しかし敢えて言わせてもらうと、ボクにとってはELPよりも1歩も2歩も劣るように感じられるのも事実です。楽曲の完成度や作品の洗練度は当然ですが、リズム陣のベースやドラムの力量、フロントマンの技量、あらゆる点でELPが上を行っていることは指摘しなければなりません。当時ボクは「さかのぼるように」してナイスを体験し失望した覚えがあります。ELP並のパフォーマンスを期待してズッ転けてしまったのです。だからこれからナイスを聴く方々は、くれぐれも過度の期待をなさらないように!ELPを期待せずに聴かれれば、きっと大切なライブラリーの一枚になることと思います。
それと、今回の紙ジャケ盤によって音質や音の分離度が大幅にアップしていることも触れないわけにはいきません。かつてのナイスの日本盤は非常に音質が悪かったのですが、今回の盤によりゴングほどではないにしても、音の分離度が非常に高まりました。(前回のナイスの日本盤が発売されたのは、各種のアルバムのCD化が進められる中でもかなり初期の頃だったからでしょうか?音自体がこもりがちで、モノラルかと疑うぐらいに分離度が悪いです)やはり音質の向上はありがたいもので、気持ちよく聴くことができます。


ユニバーサルによるブリティッシュロック系
次はユニバーサルによるブリティッシュロック系の紙ジャケ再発盤についてです。
今回再発されるのは既発のムーディーブルース「童夢」「セブンスソージャン」、ジェントルジャイアント「same」「オクトパス」、チュダーロッジ、メロウキャンドル、グレイシャス、カーン、T2,グレイヴィートレイン、トム・ニューマン、イースト・オブ・エデンの12枚です。現在のところ、まだ手元にはないものですから「リマスターの具合」等判断できない部分は多いのですが、作品解説として少々触れてみたいと思います。

◆◇◆

ムーディーズの2枚は、ボクにとって思い入れの深い2枚です。童夢の1曲目の導入部は当時本当に驚かされました。あの少ない小遣いをやりくりして高価なLPを購入していた当時の中でも、最も「当たり」の1枚だったのが「童夢」だったのです。雨や雷のSEで始まる物語的な演出は、正にボクをストーリーの世界へと誘ってくれたものでした。メロトロンもタップリ入っていて「ポップの名の下」に捨て去られてしまうには、あまりにも惜しい名作だと思います。
「セブンス・ソージャン」はこのアルバムをもって、ムーディーズが活動を一時中止したという哀しさも思い出として染み込んだ名作です。「童夢」より幾分ストレートになったとはいっても、美しいコーラス・ハーモニーが冴える聴き込むほどに良さが伝わる名盤といえましょう。

◆◇◆

ジェントルジャイアントの1stは、プログレッシャーに今や幻とされる中野レコードで購入したアルバムとして忘れられません。たしかPFMのライナーからメンバーが「好きで良く聴くのはフランク・ザッパとジェントル・ジャイアントとイ・プー」という行(くだり)があって、そこから当時それらのアルバムを探し回ったものでした。その後、比較的早く日本盤化されたイ・プーの「ミラノの映像」を即行で買ったのです
が、フランク・ザッパは情報によって「プログレではない」として却下、しばらくしてやっと見つけたジェントル・ジャイアントは中野レコードにあったのでした。1stアルバムのジャケットを見れば、このアルバムがプログレであることを誰が疑うでしょう?もう同ショップで一目惚れ状態でしたね。その後2ndもやはり中野レコードから購入しました。ジェントルはプレグレでした。プログレではあったのですが、当時求めていたものとは、どこか微妙に違っていたのです。当時はそれがよくわからなかったのですが、今思うと「それはジャズの要素が強かった」ことも関係していたような気がします。PFMのインタビューから「シンフォニックなプログレ」を期待していたボクは、ジェントルの屈折し過ぎた楽曲に馴染めなかったのだと思うのです。(前月に特集したアメリカのペントウォーター等のようだったら、きっと即座に満点がついたことでしょうに・・・。)
ジェントルは、シンフォニックといえばシンフォニックなのですが、何だかのめり込ませないかのように「はぐらかす」感じがついて回りました。「ここで一気に上り詰めれば!」と思わす瞬間に「おとぼけをかました」り「盛り下げてみた」り、まるで「焦らされ」てるみたいでした。しかし今思えばそれもジェントルの味なのです。今では「ストレートな直球勝負」なプログレ以外の「こんな変化球」系の技巧派もとても好きになりました。元々直球でも勝負できるだけの技量を持ち合わせていた超一流バンドであるジェントルが、そのポテンシャルを一般に広められたのは「イン・ア・グラスハウス」まで待たなければならないのです・・・。
そんなジェントルの2枚はB級とは一線を画す、紛れもないA級の完成度を誇ります。屈折度が強いので、プログレの免疫が弱い方には「最初」は拒否反応があるかも知れません。しかし色々なプログレを試している間に、確かな技術に裏付けされた見事な演奏力と楽曲の完成度に舌を巻くこと請け合いです。

この4枚以降のアルバムは結構マニアックなアルバムが並んでいますね。
チュダーロッジメロウキャンドルはその昔、フェメールボーカル、フォーク系の3種の神器と呼ばれたアイテムだそうな・・・。要はフォークです。これらは90年代になって聴いたアルバムなので、残念ながら思い入れはありません。当時ものすごく期待して聴いたボクは「何だ、フォークじゃん」と思った覚えがあります。シンフォニックとも言えないかなあ・・・。ブリティッシュを聴き込むと、こんなアルバムが好きになるというのもわからないではありません。しかしプログレど真ん中でもありません。「3種の神器の真価を知りたい方はどうぞ」という感じです。両作ともかつてCDで日本プレスされて発売された実績を持つ作品でもあります。
むしろど真ん中なのは残る6枚だと、個人的には思います。T2カーンイースト・オブ・エデントム・ニューマンは当時、日本盤が日本プレスにて発売されています。また残るグレイシャス、グレイヴィートレインもMSIより日本仕様で発売されました。この中で個人的に最も押すのは「グレイシャス」の「?」マークです。ジェントルとムーディーズ以外、90年代にプログレッシャーに復帰して知ったアルバムばかりですが、その中でもグレイシャスはかなり初期に購入した作品でした。マーキーより発刊されたブリティッシュロックのエンサイクロペディア本の中でもグレイシャスの「ディス・イズ」は最大級の評価を与えられた作品で、その評価からプログレッシャー復帰後のかなり早い時期に入手したものです。しかし残念ながらその頃は「プログレッシブロックが聴きたかった」ワケで、グレイシャスはボクにとって一級の作品にはなりませんでした。一般的なグレイシャスの形容は「クラシカル」というものだと思います。しかしクラシカルではなくてクラシックをロック編成でやっている・・・というイメージしか残りませんでした。その頃のボクは、まだプログレ復帰後の初期段階でPFMやクリムゾンのようなプログレが聴きたかったのです。当時同時期に購入したイタリアの各種バンドは当時のボクの趣向のど真ん中を行っていました。
オザンナに始まり、チェレステ、アルティ・エ・メスティエリ、チェルベロ、マクソフォーネ、クエラ・ベッキア・ロッカンダ等々、ドラマチックでノスタルジックでテクニカルで、少々おどろおどろしかったりイタリア臭かったりしたところも好ましかったのです。
そんな中で購入したグレイシャスにはピンときませんでした。丁度その頃ボクが聴いたブリティッシュモノは、しばらくはどれも哀しい扱いを受けていたはずです。イタリアン・プログレはわかり易いんですよね。思想よりも表現を大事にしているためなのか?1聴した時のインパクトを大事にしているような作りなのです。ブリティッシュは派手派手なクリムゾンやイエス等が分かり易いインパクト狙い・・・ですが、基本的には思想的で思索的だったりします。聴き込まないとわからなかったり・・・します。
クレシダ「アサイラム」が良くなったのも、ボクは随分後のことでした。グレイシャスもそうしたブリティッシュの流れを汲んでいます。だからまだ派手派手なプログレを望む向きには良さが伝わるとは限りません。でも、聴き込んでいくと良さが染み込んでくるそんなアルバムです。基本的にはキーボードプログレで、ハモンドのフィーチャー度が高いアルバムです。バンド編成はサウンドのキーマンであるマーティン・キットカット(キーボード・・・メロトロン、ピアノ、ハープシコード)ポール・ディビス(ボーカル)にアラン・コードロイ(ギター)ティム・ウェイトレイ(ベース)ロバート・リプソン(ドラムス)の5人編成で、都合2枚のアルバムを発表しています。今回紙ジャケ再発されるのはヴァーティゴ・レーベルで5指に入る名作と言われる1st「same」ですが、その他に「ディス・イズ」という廉価版扱いでフィリップスより発表された2ndもあります。このアルバムにはA面全てを使った「スーパー・ノヴァ」という組曲があって、ブリティッシュロックとしてはやはり捨てがたい魅力を持ったアルバムです。

さてこのグレイシャスというアルバムですが、前述のことから地味なアルバムと思われるかも知れませんが、それはあくまでもクリムゾンやイエスやPFMといったバンドと比較した場合のことであって、実はとてもドラマチックなアルバムです。3曲目の中間部のひずんだベースのミステリアスなリードに被さるキーボードのアレンジといい、その前後のクラシカルなイメージとの対比が素晴らしいですし、どの曲もとても楽しめる内容を持っています。(クラシックの引用が的を射ていて、プログレファンにはたまらないでしょう。5曲目の月光はモロですけど・・・。)MSI盤は随分前のものなので、そのためなのでしょうか「少々古臭い」響きに感じてしまう点が残念でした。今回の紙ジャケ盤でそこのところが改善されるのなら、もっと素晴らしく響くであろうとの期待も募ります。(個人的に、好きなアルバムなものですから・・・。)ブリティッシュのマストアイテムと呼ばれる作品でもありますから、まだ未購入のプログレッシャーは日本プレスの紙ジャケ仕様で発売される今回、是非試してみてはいかがでしょう?(デジタルリマスターによる音質向上も楽しみです。)



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