祝、キングの宮殿・紙ジャケ盤発売



プログレッシャー(プログレマニアをこう呼ぶらしい)に朗報!既に輸入盤では入手可能な紙ジャケ24ビット「クリムゾン・キングの宮殿」が12月17日に国内発売されることになった。
 それを記念して今回はボクのキングクリムゾンに対する思いを当時の思い出とともにつづってみたいと思う。

 何しろ、キングクリムゾンとムーディブルースこそ、ボクをこの道にはめた張本人といっても良い存在であり、忘れようとしても忘れられないバンドなのである。初めて買ったプログレのLPはムーディーブルースの「童夢」というアルバムであった。当時まだ秋葉原のラジオ会館にひっそりとあったサトー無線の店長とボクは、オーディオを通じてとても親しい仲になった。本当に良い人で、まだ中学3年生だったボクを自宅に招いてくれて、彼が好きだったソウル関係のLPを聞きながら、あれこれ話し込んだりしたのは今でも覚えている。そんな店長のご厚意で、(もう時効だから良いだろうけど)店舗の調達でついでにボクのLPも買って頂いていたのである。だから、LPを注文してから店舗に届くのには1ヶ月ほどの時間がかかるのだった。どうせ自分の欲しいアルバムは、自宅付近のレコード屋さんに入って来ることなんてなかった(ビートルズのバックナンバーは客注で揃えたんだったなあ・・・)し、オーディオを見に行くのも自分の趣味だったから「レコードが届いたよ!」という連絡を受けて秋葉原まで出かけていくのは全然苦にはならなかった。
そうして注文した内の一枚がムーディーブルースの「童夢」だったのである。(当時は洋楽一般を聞きながらディープパープルなんかのハードロックにはまり始めた頃だった。)ムーディブルースはショックだったなあ。この音楽がプログレッシブ・ロックというジャンルに属し、名前だけは聞き知っていた「ピンクフロイド」も、そのジャンルに属するロックバンドであることも、確か「童夢」のライナーノーツで知ったのだった。
 元々、何に対しても凝り性のボク(当時、オーディオはもちろん、SF小説に凝りまくっていたし、また流行っていたボウリングではジュニアの国際試合にも出場していた)は、当然の如く気に入ってしまったプログレッシブロックへの探求の旅を始めてしまった訳である。そして、次にピンクフロイドの「原子心母」等と共に注文した「クリムゾンキングの宮殿」であり、キングクリムゾンというバンドとの劇的な出会いだったのである。その頃はまだ、輸入盤店を巡るほどのマニアではなかったため(というよりも、まだプログレの入り口にいたというのが正しい)、国内版のものを買い漁るだけで十分だった頃で、キングクリムゾンの細かい情報など知る由もなかった。

「キングの宮殿」を購入して、ライナーから新たな事実が発覚するというのがひとつのパターンだった。とにかく「キングの宮殿」には度肝を抜かされた。当時すでに、歌謡曲を含めて日本の音楽に興味を失うほど洋楽にはまっていたボクだったけど、それでもその音楽のインパクトは本当にスゴイモノだった。1曲目の「21世紀の精神異常者」はその音圧だけで圧倒されて何がなんだかわからなかったし、良い音楽と言うよりもスゴイ音楽だった。当時の音楽としてはすごくノイズィだったし、大きな音で聞いていると「頭の中が吹っ飛ぶ」というような感覚だったと思う。(今でも、インパクトは保証付き!だけど、この曲、何度も何度も聞いている内に妙にはまる不思議な音楽でもあるのだった。ボクはこの曲でサックスという楽器が好きになったことは確かだ。)2曲目の「風に語りて」という曲はアコースティック楽器とグレッグ・レイクのボーカルとのハーモニィが絶妙で、清涼感と寂寥感をリスナーに与える安らぎの音楽で、1曲目との対比が絶妙だった。また間奏部でのフルートソロの美しさが・・・。本当に心洗われる音楽である。
そしてA面のラストが「エピタフ」、多くのプログレの楽曲中でもトップ3に入るほどのお気に入りの曲である。(思い入れも含めると、とても順位などつけられない。)いい加減に聞き流してはいけない曲を、誰でも持っているのだろうけど、ボクの場合はこの曲こそその筆頭に挙げたい。それほど、感動的で刺激的で、心の琴線に響いてくる音楽なのである。冒頭部からのメロトロンによるストリングスの盛り上がりが尋常ではない。そのメロトロンに被さるように繊細にたたかれるシンバルに導かれて始まるボーカル部への流れは、これこそ心の音楽と呼べるほどのものである。昼間部のフルートソロやギターのリフレインのひとつひとつが、心の奥深くに染みてくる・・・。そしてストリングスメロトロンの壮大な響きで、フィナーレ・・・。確か10分程の楽曲であるはずなのだけど、アッという間の10分である。夕暮れ時、部屋を暗くして、手にジャケットを握って聞き入ったあの頃・・・なぜか知らないけど、目頭が熱くなってたまらなかった。このA面だけでノックアウトである。もちろんB面もすばらしい。(このまま楽曲説明をしているだけで何行でも書けてしまうので割愛するけれど・・・。)

 このアルバムのライナーノーツでもまた、たくさんのことを知らされた。あのビートルズのラストアルバム「アビーロード」は、この「キングの宮殿」のために、アルバムチャート1位の座から引きずりおろされたという驚くべき事実もであった。あのビートルズは、ボクを洋楽の(悪の?)道に引きずり込んだ張本人であり、彼らの最高作である「サージェント・ペーパーズ・ロンリー・ハーツ・バンド」はいったいどれだけ聞いただろう・・・というほどのお気に入りだった。そのビートルズをトップの座から引きずり下ろすなんて、とんでもないバンドである。と、あらためてライナーを読んで驚いたのである。しかし・・・この音楽であれば、ビートルズが負けても仕方ないか、と思わずにはいられないほどの圧倒的なクォリティだと思ったものであった。・・・あれが本物のプログレッシャーにボクを誘った瞬間であったことを、ボクは今でも疑わない・・・。

 そんなボクにとってのメモリアルなバンドのメモリアルなアルバムが、紙ジャケットという当時のアルバムの装調で復刻されるとあれば、絶対に買わずばなるまい。という訳で、まだ「クリムゾンキングの宮殿」をお持ちでない方で興味のある方は、この発売を期に買ってみられてはいかが・・・?


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