Jun. 28, 2003 


 

 イエスで「危機」が好きなのは、もうお気づきの通りアルバムのA面の全てを費やした大作「危機」があるからですが、かといってB面も負けてはいませんよね。「同士」と「シベリアン・カートゥル」という片面を2分する大作2曲。アルバム1枚で3曲という曲数にも関わらず、37分56秒のファンタジー世界が堪能出来ます。そしてその全てがイエスの代表曲なのです。先にも述べた通り、当時アルバムの長さと曲の長さはプログレッシャーにとって重要でした。(ボクだけか?)だってそうでしょ、なけなしの大枚を支払うのですからねぇ。色々と買いたいアルバムや使いたいことがある中で出費した貴重なアイテムなのですから、1分1秒だって長く楽しみたいですよ。アース&ファイアーと間違えて、アース・ウィンド&ファイアーを買って来ちゃった時は心臓が止まるかと思いましたもん。メロトロンの嵐であるという定評を信じて、アンプのボリュームをアップし準備万端整えてディスクにピックアップを乗せて……いきなりファンキーなブラスが鳴った日にゃあ……間違ってチューナーが鳴っちゃったかと思ったほどですよ。当時はこんな信じられないことが間々あった時代だったんですよ。情報がないし、こっちも手探りでアルバムを集めていた時代だったですからねぇ。(この事件はボクが購入の時にしっかり見ていれば済んだ話なんですけどね。)

 例えばドイツのトリアンビラートというELPタイプと呼ばれる素敵なバンドがあります。このバンドもライナーの端に書いてあった情報から、輸入盤屋サンに注文したか、ショップで見つけたのだったと思います。ボクが買ったのは「Illusion On ADuble Dimple」という2ndアルバム(当時はそんなことさえわからない時代でした)で、白地に半分に割れた卵の殻からネズミがひょっこり現れているようなジャケットが印象的でした。このジャケットを見た時はかなり「やばいなあ」と思った記憶があります。だって、エマーソン張りのキーボード・プログレバンドのアルバムのジャケットが、白地に可愛らしいハツカネズミが愛想を振りまいているジャケだなんて想像出来ます?出来ませんよね。ELPだったら気合いの入ったイラスト・ジャケだろうと思いこんでいるわけですからね、こっちは。例えばクリムゾンのレッドのジャケットだって、当時はひんしゅくモノだったわけですからね。それがハツカネズミのジャケットじゃ「やっちまうんじゃないかなあ」と真剣に悩むわけです。ところがファンタジーなイラストのジャケットだからと言ったって、けして信用出来ないのが当時の洋楽のレコードです。ジャケットに惚れ込んで買ったアルバムが、ダメだったなんてことも随分経験させてもらいました。よく、レコードのコレクターの方々の文章に「ジャケ買い」なんて言葉が出てきますよね。「この人たち、度胸があるんだなあ」と思わずにはいられませんよ。だって、凄いファンタジーなジャケットのサザンロックみたいなアルバムだって、当時はいくらでもありましたからねぇ。ドイツ盤だ、イギリス盤だというのを頼りに買えばいいじゃないかというのも、ボクはあんまり賛成しません。だって、アメリカのアルバムのドイツプレスなんてLPが、いくらでもあった時代ですから。あの頃はとにかく、「へぼいアルバムだけどジャケットには命をかけてる」なんて詐欺みたいなディスクがまかり通っていた時代だったんです。

 このアルバムを買ったのはプログレッシャーには一部で有名な中野レコードで、結局無理を言って聴かせてもらったんじゃなかったかなあ。多分、それで安心して買って帰ったんだったと思います。その後秀五氏が買ったのが「Spartacus」でした。ボクとしては「Illusion On A Duble Dimple」こそが我が家で買った第1号でありオリジナルであるというイメージが強かったんですね。だから、心の中では「最初に買ったボクのが一番だ」という思いがあって、彼が「ボクのトリアンビラットも聴いてみてよ」なんて言っても、「どうせ2番だから聴かなくて良い」という気持ちもどこかにあったため、真剣に聴いていなかったんじゃないでしょうか、多分……。というのも、プログレッシャーに復帰して両方のアルバムを聴いてみたところでは、どう聴いても「Spartacus」の方が出来が良いんですよ。もしもこのままプログレに復帰していなかったら、ボクは良い方のアルバムを知らないで「昔はプログレを聴いてたんだよねぇ」とか言って、誰かに「トリアンビラットはまずIllusion On A DubleDimpleを聴きなさい」とか言っていたかも知れないんですよ、怖ろしい話だ……。しかしその前に問題なのは、ボクらは何故かトリアンビラットのことを「ウイラード」というバンドだったと思いこんでいたことです。90年代になって秀五氏と話をしていて「ドイツのELPタイプのお気に入りのバンドってさあ」という話になって、お互いに「ウィラードというバンドだったよね」ということで決着がついていたんですね。そして「あれが聴きたい」ということで、色々と手を尽くしてみたんですけどウイラードなんてバンドはどこにもない。ある日、ワールドディスクかなんかで偶然見つけた件のアルバムのバンド名を見てみると「トリアンビラート」だったということが判明するわけです。それほど先入観というというのは恐ろしいのだという話でした。閑話休題。

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