Sep.2,02 



Gnidrolog/Lady Lake
 このバンドとアルバムは、エンサイクロペディア本に必ず登場するブリティッシュ・プログレではマストと呼ばれるものですので、今更という感じがしないでもありません。しかし日本発売はガーデンシェッドでしたし、発売も90年代初期の頃なので、案外聴いたことがないプログレファンがいるのではないかと思うのです。(海外版でリイシューされていたので、それをゲットしたというリスナーもいるでしょうが、そうすると彼らの詳しい情報も手に入っていないでしょうし、一般的な評価というのもわからないという可能性もあります。)ボクはブリティッシュの単発物(実際には同バンドは2枚のアルバムを作っているので本当の意味での一発屋ではありませんけど)では最上級にランクすると個人的に思っているのが同バンドの同作なので、今回はこのアルバムを最初に解説に選ばせて頂くことにしました。


このアルバムを初めて知ったのはマーキー社刊のブリティッシュロック集成で、何しろ「べた褒め」状態でした。「ジェスロ・タル風のハード・フルート」や「デカダンでメロディラインが印象的で美しい」や「初期クリムゾンの叙情」や「クリムゾンの3作目を思わせる怪しい雰囲気」、「壮絶なブラスセクション」(以上「」内、マーキームーン社刊ブリティッシュロック集成より)といった魅力的な言葉が踊っていました。

ご存じのようにボクはクリムゾンが大好きです。そしてこの時期はまだ、プログレッシブロック・マニアに戻って日の浅い頃でもありました。だから大好きなクリムゾン・ライクなバンドはまだ、オザンナ位しかお目にかかっていません。そんなボクがこんな文言を見せられたら、黙っていられるワケがないのです。早速同作を探しました。

ところで、みなさんはこのバンド名を何と読むと思われます。実はボクも当時、何と呼んだらいいかわかりませんでした。しかし読み方がわからないと、このバンドのアルバムについてショップで尋ねることもこともできませんよね。まいりました。実は「ニドロローグ」と読むらしいのです。なるほど、Hongkongを「ホンコン」と読むのと一緒なのか? とは思いませんでしたけれど。残念ながら、ボクが探し求めた頃(同集成の発刊が1994年なので、その頃に探したことになります)にはとっくに廃盤になってました。廃盤になっているとわからる尚更欲しくなるのが、マニアの心境というもんではありませんか? もう、欲しくて欲しくて堪りませんでした。たぶん1年位は、廃盤市場も含めて漁りまくりましたけど結局発見することはできず、結構途方に暮れていたことを覚えています。既に廃盤されて久しいガーデンシェッド物のアルバムは定価より高値で取り引きされていた時期でしたが、それでも同アルバムだけはついぞ見たことがありませんでした。

ニドロローグは突然姿を現しました。それは確か、ロッカンダ等のガーデンシェッド物の廃盤がポツポツと少量づつ再販されていた時期のことでした。ボクは自分の目を疑いました。まだシールドされ帯のついたニドロローグがCDショップの棚に燦然と並んでいたからです。手が震えたかも知れません。当時のボクらはとにかくショップに3日と開けず通っていましたから、そのご褒美だったのかも知れません。こうやって手に入れたガーデンシェッドの廃盤ものは多いのですが、その中でもニドロローグは嬉しかった。実際に聴いた時の感動も忘れられません。このアルバムは本当に素晴らしい。プログレ・ファン(クリムゾン好き?)が何を求めているをわかったかのような楽曲やアルバム構成は見事としか言いようがありません。当時のボクの中で間違いなくナンバーワンのアルバムとして君臨することになりました。再発をありがとう、ガーデンシェッド!(当時は既にエジソンかな? )

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 さて本作の内容の方ですが、正直言ってボクのようなものが解説する域を遙かに超えた傑作だと言えます。まず1曲目を聴いただけで全てのプログレファンはノックアウトされるに違いありません。怪しげなEギターのアルペジオから、清らかなフルートがリードを取って始まるオープニングだけで、初めて聴いたリスナーは鳥肌ものです。そしてボーカル。どうやらニドロローグのボーカリストはピーター・ハミルに比較されることがあるようです。確かに線が細く、のどで出しているような歌い回しは独特です。(ミスター・シリウスもこんな歌い方でしたよね。)腹から発声していない(実際はわかりません)ボーカルはどうしても音程が今一不安定になり、その微妙なビブラートが儚げな響きに時に聴こえたりします。それが共通だといえば共通なのですが、ピーター・ハミルよりは幾分声の通りと張りがあるように感じます。いすれにしろ、そのボーカルがとても彼らのサウンドには合っています。何しろ楽曲がおぼろで儚げです。演奏が押さえ気味なミックスがそのイメージを助長します。1コーラス目から2コーラス目にはいると、一度演奏が押さえ気味になり、3コーラス目以降から徐々に演奏のボリュームが上がっていくのも効果的で、どんどんリスナーの感情を盛り上げていくのも見事です。一度、ブレイクから静謐なベースソロとフルートのリードに入ります。ギターのカッティングが入ってくることになると、フルートが「つば吹きフルート調」へと移行していくのが8分過ぎ。とてもそれだけの時間が経過したとは思えない充実の内容。その後、テーマのボーカル部に戻り、更に10分手前辺りから、今度はギターリードの演奏からブラスのアンサンブル部へ。もう、この1曲だけでお腹一杯という感じです。

2曲目はアコースティック・ギターのカッティングとエフェクターを通したサックスと思しきリードから始まるフォークロック調の楽曲です。ボーカルもファルセットを交えながら軽やかです。それにもかかわらず、少しだけ不安感を与えるのはなぜでしょう。

3曲目はアコギのアルペジオから始まるフォーク調のバラード。バックで鳴っているキーボード調のリードはピアニカみたいにも聴こえますが、まさかね……。

次の4曲目がタイトルのレディー・レイク。この不協和音的なアレンジはちょっと「21世紀のスキッゾイドマン」的です。(元々こうしたちょっとアバンギャルドなブラスとリズムセクションのバトルのようなアレンジは、オーネット・コールマンの「ジャズ来るべきもの」から来ているとボクは思うのです。これはジャズですが、当時としては相当に斬新だったものです。)そんなクリムゾンの1stの1曲目ほどには、この4曲目は破壊的でもありません。だけど多分にジャージーではあります。ソプラノサックスの音色が印象的です。エフェクターのサックスとのインタープレイが始まると、リスナーは迷宮世界へと誘われてしまう……そんなオープニングから一転、悲しげなボーカル部は何だかクリムゾンの4th「アイランド」のようです。とにかく曲構成が見事です。冒頭部の押しのパートから昼間部の静謐なパートまでの流れが組曲のようです。フルートとサックスの使い分けの見事さもクリムゾン的といわれる所以でしょう。6分過ぎからはサックスのフリーキーなパートへと流れ込んでいき、テーマ部のメロディーをリフレインしながら終了。この終了部の流れはバンダー・グラフを彷彿とさせたりもします。

そして5曲目はアコースティックピアノのアルペジオとソプラノサックスから始まるフォークロックっぽい佳曲。アグレッシブな曲からの流れとして一服の清涼剤のようです。しかしクリムゾンの1stの各曲の出来に比べて一段落ちるのも事実です。こういう部分にまで神経が通っているかどうか? というのが、A級とかB級を分ける分岐点なのかも知れません。クリムゾンはそういう曲のアレンジや構成まで凝ってますもんね。

ヘヴィなリフから始まる6曲目は「キャット・フードか? (クリムゾンの2ndのB面2曲目)」と思わせる格好良さ。しかしボーカル部は以外とジェントル・ジャイアントっぽかったりします。エフェクターのサックスも相変わらず活躍してますが、以外とクラリネットの音色が印象的です。ギターやブラスのフリーキーな印象が「リザードっぽい」と言われる所以かも知れません。やっぱりニドロローグは素晴らしい。



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