さて本作の内容の方ですが、正直言ってボクのようなものが解説する域を遙かに超えた傑作だと言えます。まず1曲目を聴いただけで全てのプログレファンはノックアウトされるに違いありません。怪しげなEギターのアルペジオから、清らかなフルートがリードを取って始まるオープニングだけで、初めて聴いたリスナーは鳥肌ものです。そしてボーカル。どうやらニドロローグのボーカリストはピーター・ハミルに比較されることがあるようです。確かに線が細く、のどで出しているような歌い回しは独特です。(ミスター・シリウスもこんな歌い方でしたよね。)腹から発声していない(実際はわかりません)ボーカルはどうしても音程が今一不安定になり、その微妙なビブラートが儚げな響きに時に聴こえたりします。それが共通だといえば共通なのですが、ピーター・ハミルよりは幾分声の通りと張りがあるように感じます。いすれにしろ、そのボーカルがとても彼らのサウンドには合っています。何しろ楽曲がおぼろで儚げです。演奏が押さえ気味なミックスがそのイメージを助長します。1コーラス目から2コーラス目にはいると、一度演奏が押さえ気味になり、3コーラス目以降から徐々に演奏のボリュームが上がっていくのも効果的で、どんどんリスナーの感情を盛り上げていくのも見事です。一度、ブレイクから静謐なベースソロとフルートのリードに入ります。ギターのカッティングが入ってくることになると、フルートが「つば吹きフルート調」へと移行していくのが8分過ぎ。とてもそれだけの時間が経過したとは思えない充実の内容。その後、テーマのボーカル部に戻り、更に10分手前辺りから、今度はギターリードの演奏からブラスのアンサンブル部へ。もう、この1曲だけでお腹一杯という感じです。
2曲目はアコースティック・ギターのカッティングとエフェクターを通したサックスと思しきリードから始まるフォークロック調の楽曲です。ボーカルもファルセットを交えながら軽やかです。それにもかかわらず、少しだけ不安感を与えるのはなぜでしょう。
3曲目はアコギのアルペジオから始まるフォーク調のバラード。バックで鳴っているキーボード調のリードはピアニカみたいにも聴こえますが、まさかね……。
次の4曲目がタイトルのレディー・レイク。この不協和音的なアレンジはちょっと「21世紀のスキッゾイドマン」的です。(元々こうしたちょっとアバンギャルドなブラスとリズムセクションのバトルのようなアレンジは、オーネット・コールマンの「ジャズ来るべきもの」から来ているとボクは思うのです。これはジャズですが、当時としては相当に斬新だったものです。)そんなクリムゾンの1stの1曲目ほどには、この4曲目は破壊的でもありません。だけど多分にジャージーではあります。ソプラノサックスの音色が印象的です。エフェクターのサックスとのインタープレイが始まると、リスナーは迷宮世界へと誘われてしまう……そんなオープニングから一転、悲しげなボーカル部は何だかクリムゾンの4th「アイランド」のようです。とにかく曲構成が見事です。冒頭部の押しのパートから昼間部の静謐なパートまでの流れが組曲のようです。フルートとサックスの使い分けの見事さもクリムゾン的といわれる所以でしょう。6分過ぎからはサックスのフリーキーなパートへと流れ込んでいき、テーマ部のメロディーをリフレインしながら終了。この終了部の流れはバンダー・グラフを彷彿とさせたりもします。
そして5曲目はアコースティックピアノのアルペジオとソプラノサックスから始まるフォークロックっぽい佳曲。アグレッシブな曲からの流れとして一服の清涼剤のようです。しかしクリムゾンの1stの各曲の出来に比べて一段落ちるのも事実です。こういう部分にまで神経が通っているかどうか? というのが、A級とかB級を分ける分岐点なのかも知れません。クリムゾンはそういう曲のアレンジや構成まで凝ってますもんね。
ヘヴィなリフから始まる6曲目は「キャット・フードか? (クリムゾンの2ndのB面2曲目)」と思わせる格好良さ。しかしボーカル部は以外とジェントル・ジャイアントっぽかったりします。エフェクターのサックスも相変わらず活躍してますが、以外とクラリネットの音色が印象的です。ギターやブラスのフリーキーな印象が「リザードっぽい」と言われる所以かも知れません。やっぱりニドロローグは素晴らしい。