Sep.2,02 



単発ものブリティッシュ・プログレの名盤
 今回、ブリティッシュ・プログレの巨人シリーズをお送りしようかなと思ったんです。実際に残っているブリティッシュの巨人はというとジェントル・ジャイアントやキャラバンやソフトマシーンやELPやジェネシス、グリーン・スレイド等々、いっぱいいっぱいあるんですけどね。だけど今回は敢えてそれは延期して、主に90年代に知った単発ものの愛聴盤を取り上げてみることにしました。

 ・ ・ ・ 

 何かというと連作を重ねるバンドは良いバンドで、単発に終わったバンドは一発屋という印象がありますよね。ボクもそうイメージがありました。しかし本当にそうでしょうか? イタリアものを見てみると、単発の名作が目白押しですよね。当時の音楽業界の状況について知れば知るほど、成功したり連作を重ねたバンドは運があったんじゃないか? という気にさせられます。当時のイギリスの音楽業界がどんな風だったか? というと、音楽事務所がライブバンドの面白そうなバンドと契約してはレコード会社に紹介。レコード会社が気に入ればレコーディングということになるんですけど、ほとんどのレコードはディストリビューションされっぱなしで何のプロモーションもされぬまま……というような扱いだったようです。結局アーティストは自分のレコードをプロモーションするために、自分でオファーを取っては各地でライブを行っていたらしいです。キングクリムゾンなんかは、EGマネージメントにひどいことをされたみたいですけど、それでもその当時の無名なバンドの中では破格の扱いをされていたことが今ではわかります。今なら(日本では? )有名なバンドでも当時はけして楽ではなかったみたいだし、初来日(だったと思う)を果たしたキャラバンのメンバーも生活が苦しかったため、バンド活動を休止せざるを得なかったことについてインタビューで言及してました。やっぱり娯楽・芸術の世界は厳しいんです。(ボクらも娯楽の産業に関わるものとして、その辛さはとてもよくわかります。)イギリスは階級制度がきつい国だから、労働者階級が成り上がるのってホントに厳しかったみたいです。そんな労働階級の子息たちが成り上がるために音楽ビジネスに夢を見たのって、ボクにはとても良くわかります。ボクは高校生の頃、自分の将来についてすごく焦っていたことを覚えています。自分は将来、何をやっていくのかを気に病んでいたものでした。今考えてみれば、何であれほどまで焦っていたのでしょう。当時も今も、卒業間際でさえ自分の将来に何故か?楽観的なのが極一般的な学生の姿です。もちろん、高級官僚を目指して東大を目指すような学生もあったものの、それは学生の中の極一部でした。ボクはしかし当時、就職のため学業に励むという行為を潔しと考えてもいませんでした。そして結局、芸術関係で生計を立てることを目指すことになるのでした。当然、音楽の世界にも夢を求めたのですが自分の才能のないことに気付いて、音楽の世界へ進むことも諦めたりと芸術(表現)の世界は厳しいのです。いくつかの職業を経て、「ボクの天職」だと言われるゲーム業界へたどり着くことになるのですが……。遠回りしましたけれども、かつて志した表現の世界でこうしてやって行けているのが不思議なほどです。そして、こうしてやっていけるのかどうかと言うのは、実はちょっとした巡り合わせのような部分も大きいような気がするのです。当時のブリティッシュロックのミュージシャンたちはボクとは境遇は違うかも知れないけれど、きっと音楽ビジネスに大いなる夢を持っていたのでしょうしデビューしたことと思います。そして30年以上の時を経て語られるほどの実りあるアルバムを作りながら成功を手に出来なかった……そんなアーティストたちにボクはとても愛情を感じてしまうのです。ここに掲げるアルバムたちは、幻のアイテムとして廃盤市場で高値を呼んだアルバムばかりです。そしてそれらは、そうした高値に恥じないハイクオリティなアルバムばかりでもあります。その後成功したバンドたちと彼らの差は、本当に微妙なものだったに違いありませんが、ミュージシャンとしての評価や成果の差は余りにも大きなものだったはずです。そんな不遇な素晴らしいミュージシャンが作り出した作品だからこそ、せめてボクらが大事に聴き継いでいってあげたいと思うのです。



まずはGnidrolog/Lady Lakeから

INDEX HOME