そしてこのアルバムの中身なのですが、典型的なブリティッシュロックの臭いをぷんぷんとさせていながら、既成のブリティッシュとは一線を画すオリジナリティが光ります。少し多めのリヴァーブの元でモダンとアグレッシブが交錯するようなアレンジが、中期グリーンスレイドを感じさせるようなアルバムでもあります。特にモダンな響きの場面では、グリーンスレイドの3rd辺りのイメージが強まります。アグレッシブな場面では叩きつけるようなアコースティックピアノと絞り出すようなテナーサックスが緊張感を高めます。この「アイ・スパイダー」はウェッブの3rdアルバムで、同バンドの最終作であり最高作と言われる作品です。彼らは基本的にロックとジャズを融合させるようなサウンドが特徴となっていて、それは1stの頃からの彼らのオリジナリティでもあったようですが、1sや2ndはこのアルバムほどの完成度を示していませんし、多分に中途半端な作品だったということです。そんなウェッブが何故、3rdのようなスケールの大きなプログレッシブロック作を完成させることが出来たかというと、それは3rdアルバムで参加し、全ての楽曲のコンポーザーとしてボーカルとしてキーボードとして貢献したデイブ・ロウソンの存在無くしてはあり得なかったでしょう。件のデイブ・ロウソンはご存じのように、その後ツイン・キーボードで一世を風靡したグリーンスレイドのオリジナルメンバーです。彼はグリーンスレイドにあってはリーダーの元コラシアムのデイブ・グリーンスレイドや元クリムゾンのアンドリュー・マカロック等に比較すると影の薄い存在のように映りますが、このアルバムを見る限りではグリーンスレイドでもかなりの貢献をしているのは明白だと思わざるを得ません。
一般的にはこのアルバム、ジャズロックとして紹介されているような気がします。たしかにそんな感じの場面が随所に登場するのは事実ですけれども、全体の構成は明らかにロックのそれに他なりません。是非、一度機会があったら試してみることをお薦めします。
ちなみに、彼らは一度このアルバムで解散し、サムライというバンドを結成します。このバンドはウェッブよりもジャズロック色の強いサウンドを有していますが、やはり中身は一級品の出来です。ウェッブが気に入られた方は、是非そちらも試されたらいかがでしょう。