Aug.2,02 



お便り頂きました

 またまた、お便りを頂きました。お便りの主は瀬川さんという自称プログレ初心者の方です。

 こんにちわ。いつもプログレに関する事をヤフーで調べましたら高橋さんのホームページにたどり着くので結構勉強させてもらってます! 当方まだまだプログレ初心者なのですが、分からないことがありまして教えて頂きたいのですが、よく紙ジャケ等で「オリジナルのアナログからリマスター化」と書いてあるのがありますが、オリジナルのアナログとは普通のアナログとの違いはなんなんでしょうか? お時間ある時でよろしいので教えて頂ければ幸いです。失礼します。



 なるほど、オリジナル・アナログとは何か? 範囲でお応えしたいと思います。

 まず、アナログのオリジナル・マスターというのは多数存在しないということです。例えば外盤の日本プレス時に使用されているマスターは、ほとんどはオリジナル・マスターではないということを押さえておかなければなりません。まず演奏などの元が収録されたテープはマスタリングという作業が施されて、やっとマスターテープになるワケなんですが、このマスターがもしも複製された場合はもはやオリジナル・マスターではないということなのです。オリジナルとはあくまでもマスタリングで完成されたテープのことだからです。
 
  ※ちなみにボクは仕事の関係上、何度もマスタリングという作業工程を見てきまし た。通常の方だとマスタリングの重要性が今一ピンとは来ないと思いますが、こ のマスタリングという行程が驚くほどアルバムの内容に影響を与えます。トラッ ク別に収録されたテープに入ったサウンドは、芸術的なバランス感覚を持ってい ないのが常です。そのテープがマスタリングによって、驚くほどの変容を遂げて しまうのを何度も見てきたのです。その工程上で重要なのはエンジニアで、例え ばアラン・パーソンズは元々チュブラーベルズのエンジニアとして、同アルバム の完成に大きな影響を与えたといわれています。同作は有名な多重録音アルバム でもあるのですが、そういうアルバムこそ特にエンジニアの感性が作品の内容に 大きな影響を与えるわけです。例えば楽器毎の音量の大小のバランスや、左右の 振り分け、ボーカルの定位やボリュームで、アルバムの聴こえ方は驚くほど変わ るのです。
ちなみにマスタリングとリマスターを混同されてしまう場合もあるようですが、 確かに非常に近い作業工程ではあると思いますが、役割という点では分けて考え なければならないでしょう。マスタリングはテープの作品性を造っていく行程と いえますが、昨今のリマスタリングはマスタリングを通って一般に認知されたア ルバムの作品性を変化させずに、音の質的向上を目的に行われているのが現状と 思われます。ところがこのリマスタリングですが、時として思わぬ失敗等を引き 起こすことがあるらしいです。例えば、マイルス・ディビスの「ネフェルテテ ィ」というアルバム(だったか? )のSBMマスタリングとDSDマスタリング の紙ジャケでは、楽器の左右の振り分けが逆になったりしているらしいのです。 オリジナル・アナログと比較検証したところ、どうやらSBMマスタリング盤は オリジナルと同じ振り分けだったとのことなので、最新のSACDのマスタリン グ時(このリマスター盤を元にしたのがDSDマスタリング盤です)に楽器の振 り分けがオリジナルと左右反対になってしまったというのが真相らしいのですが ……。

 現在のデジタルとは違って、テープを複製するということは間違いなく音質が劣化するということなので、なるべくならばマスターをソースとした盤が音質的にクオリティが高いということになるわけです。しかしマスターは非常に貴重なモノですから、外部に持ち出されるということはほとんどあり得ません。そういうわけで、日本プレスのLP等はマスターから複製された子マスターや孫マスターが使用されるのが常なため、往年のブリティッシュ・ロックもののLPは英原盤ものが高価な価格で取り引きされたりするワケです。
   ※オリジナル盤と複製マスター盤との最も音質的に違うのは、重低音域と中高音域 のクリアーさだと言われています。こうしたソースの善し悪しは、再生環境が良 いほど明確に現れるモノなので、どれだけの音響機器でリスニングしているのか というのも重要な要素となります。わかりやすい例としては、初期CDと紙ジャ ケなどのリマスターCDを比較して聴いてみた場合の音の違いです。ほとんどの 場合、リマスター盤の方が全体的にクリアーで、音の分離度が高いのがわかりま す。楽器ひとつひとつの分離度が高いと、ソースの聴く楽しみのヴァリエーショ ンも増えます。例えば、ひとつの楽器を中心に聴いてみたりするような楽しみは、 分離度の低いソースでは得難い楽しみというわけです。またクリアー度が高いと ソースのメリハリがより明確に伝わります。リヴァーヴの比率の高いアメリカの ポップス系のアルバムだと、リマスターの効果が限定的だったりするのですが。

一般的なオリジナル・マスターとは複製される大元のテープを指していうモノと思います。しかし瀬川さんの書かれているような文言で表記されている場合、もしかするともっと別の意味にも取れるかも知れません。「オリジナルのアナログ」という言い方は、オリジナル・マスターと同意とは思えません。むしろオリジナルマスターでプレスされたアナログ盤という意味に思えてならないからです。もしもそうだとすると、この表記はオリジナル・マスタープレス盤による盤起こしである可能性が否定できません。盤起こしのオフィシャルCDというのが存在するということは信じられないかも知れませんが、これが以外と存在していて驚かされます。非常に分かり易い例としては、かつてキングから発売されたヴァレンシュタインの「コズミック・センチュリー」です。ヴァレンシュタインは自らをシンフォニックロック・バンド(だったか? )と呼ぶほどにクラシカルな表現をしていて、むしろドイツのバンドとしては異彩を放っていたロックバンドでした。プログレッシブロックの中での重要度からしてキングがリリースしようとしたのは当然のバンドといえましょう。ところがリリースの直前にマスターが見つからないことが発覚したのか? 盤起こしでのリリースを敢行することになったようでした。ボクもリリース当時、アナログ盤のプチプチ音には耳を疑いました。どうして、ブート盤のようなリリースをしてしまったのか? とです。しかしこれだけ重要なバンドの最高作ですし、結果的に購入したことに後悔しませんでした。それに今考えてみれば、盤起こしにしては比較的ノイズも少なかったですしね。
 またエジソンのイングランド「ガーデンシェッド」も盤起こしの日本盤として有名です。これは当時、盤起こし盤であることが取りざたされていなかったので、そういう状態の盤であることを知らないでいました。その当時、同レーベルの本作は稀少盤でプレミアがついていた上、滅多に市場にも出回らなかったからでした。そして自分の入手がおぼつかない出いた頃、弟の秀五氏より聴かせてもらったワケです。本盤が盤起こしであることを初めて知った時はビックリしました。意外とプチプチのノイズも大目だったため、それが本当に同盤なのかを疑った位でした。結局エジソン盤は入手できずにいる内に、その後英マスターのリマスター盤が輸入盤としてして出回ったため、ボクはそちらの盤を入手することになるわけです。これは当然盤起こしではありませんでした。ところが、秀五氏に言わせるとリマスター盤は音はクリアーだが、盤起こし盤に比べると全体の迫力が足りなくて面白くないということなのです。今考えると、これはリマスター盤のマスターがオリジナルではなかったことが考えられ、孫マスターやひ孫マスターだったとすればオリジナルマスター盤の盤起こし盤の方が、サウンド的に優れている理由にも納得がいきます。

 紙ジャケのアルバムの場合は、盤起こし盤のリマスター再発というのはあり得ないと思うのも早計で、例えばスモール・フェイセズの「オグデンズ・ナット・ゴーン・フレークス」の紙ジャケ日本盤は1聴しただけではわからないながら、盤起こし盤のリマスターが使われている可能性が高いとウワサされているようです。ボクも十分には聴き込んでいないので自分自身で確証を得ているわけではありませんが、どうやらかなり信憑性は高いようです……。ところがこの盤起こしリマスター盤は、明らかにかつての日本版よりも音も迫力も上だったりします。もしもこの盤が盤起こし盤だとするなら、盤起こし盤だといってもけして馬鹿に出来ないのだと思い知らされます。
 ボクが最高のリマスター盤のひとつとして筆頭に上げたいのは、2000年だったかに発売されたビートルズのイエロー・サブマリンでした。あれだけ昔の作品でありながら、楽器ひとつひとつの音までも完璧にシェープしたかのような分離度とクリアーさは脱帽モノです。是非このリマスター方法で、ビートルズの全アルバムが一刻も早くリマスターされないものでしょうか?


 余談ですが、アナログ盤では圧倒的といわれる英原盤の音質の良さは、一概にオリジナルマスターを使っているからというばかりではないようです。当時の英原盤ものはアナログ盤に使われた材質のクオリティが高いのですが、このレコードの盤の質や厚さは音質に大きな影響を与えたというのは有名な話です。その昔は「×××グラム級」という言い方で盤の価値を宣伝していたものさえありました。ですからマスターだけの差異によって、それだけの音質の差がついていたというのは、一概には断言できない面もあります。。



なんと! あのバンドが日本上陸 →

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