Jan.25,02 



エスペラント再発……ミニ・プログレッシブの巨人
 これまで日本盤(既に長いこと廃盤状態)でしかリリースされていなかったエスペ ラントが、紙ジャケで再発されました。今回は韓国Si−Wan盤での再発というこ とです。エスペラントは、これまでに何度か取り上げてきたようにプログレッシブ・ ロックのマスト・アイテムで、1st「Rock Orchestra」2nd「D ance Macabre(死の舞踏)」3rd「Last Tango」の3枚が リリースされていました。今回は3rdが先行発売されていましたけれども、やっと 1stと2ndも再発され、全てのアルバムが紙ジャケでリイシューされたことにな ります。ボクはいずれも日本盤で購入済みなので購入を見合わせましたが、持ってな いプログレッシャーなら迷わず購入することをお薦めします。

 これまで、何度もエスペラントを取り上げてきながら、彼らをまともに解説してき ませんでした。そこで、この機会に彼らの音楽をご紹介することにしましょう。  エスペラントがどんなバンドかといいますと、当時自らをロック・オーケストラと 自称していた通り、弦楽のオーケストラ的なバンド編成が唯一無二といっても良いほ どの特徴的な編成といえましょう。1stバイオリニストのレイモンド・ビンセント を中心に3人の女性コーラス(その内2人は楽器もこなすようで、アコースティック ・ギターとフルートがクレジットされています)、2ndバイオリン、ビオラ・サッ クス、チェロ・ピアノ、キーボード、ドラムス、ベース・フルート、ギター・ピア ノ、ボーカル・ギターという12人編成のスモール・コンボともいえる編成で活動を 開始、73年の1st「ロック・オーケストラ」でアルバム・デビューを飾りまし た。彼らのバンド名の由来は多国籍なメンバー構成にあって、そこから国際語という 意味を表す「エスペラント」をバンド名としたということだそうです。

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 この1stは、透明感のあるシンフォニックなサウンドです。これだけの弦楽編成 になると、室内楽的表現になりがちだと思うのです(実際、全体の構成や楽曲の展開 部ではクラシカルな表現が随所に顔を出します)が、彼らはそれをとてもロック的な 表現で楽しませてくれます。バンドが大編成であるということから「音の洪水」をイ メージしてしまうところですが、冒頭の「透明感」という言葉が示す通りでとても整 理されたサウンド作りが行われています。女性コーラスが活躍する場面ではR&B的 な香りもして、思った以上にバラエティーに富んだ印象を持つことでしょう。このア ルバムが当時、思ったほどのセールスにならなかったのが不思議なぐらいに、良くで きたアルバムだと思うのですが……。エスペラントの中でも最もロック的な疾走感 を味わえるのが、このアルバムだと断言できます。

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 74年に発売された2nd「Danse Macabre(死の舞踏)」は人気と しては1番のアルバムなのではないでしょうか? 何故なら、本アルバムはクリムゾン のピート・シンフィールドがプロデュースしたアルバムとして有名だからです。実 際、彼の影響はかなりのものだったようで、ジャケット裏のコメントに「ピート・シ ンフィールドによる影響」について、はっきり言及していることからもわかります。 アルバムは前作よりも、より通常のロックというフィールドから逸脱していて、それ が我々プログレッシャーには有り難いのはいうまでもありません。前作よりもプログ レッシブになった部分を具体的に挙げると、前作では通常のギター、キーボード、 ベース、ドラムでのロック的表現の占める割合が多かったのが、本作ではキーボード やギターで表現されていたであろうと思われる部分でも、弦楽によるアンサンブルで 押し通していたりするからです。他にはリリカルな部分でハープシコードを使ってい たりしているのも、せっかくのクラシカルなバンド編成を引き立たせるようにとの彼 らの配慮に思えてなりません。前作ではリード的に使われていたバイオリンも、なる べくユニゾンで鳴らすようなアレンジにしていて、それがとてもスリリングに感じさ せてくれる要因に間違いないでしょう。前作で成功を手に入れられなかったエスペラ ントは、12人から8人へと大幅なメンバーの脱退に見まわれてしまったようです (それともリストラか? )が、それとは裏腹に非常にアグレッシブな自分たちの音楽 表現を手に入れた。それが、この2ndの様な気がしてなりません。(ただしゲスト メンバーが3人加わっているので実際の増減は、マイナス1名ということになるんで すけどね。)

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 ひょっとしてアルバムタイトルが損をしているかも知れない、人気を別にすればボ クが完成度で彼らの最高作と信じている3rd「ラスト・タンゴ」は、75年にリ リースされています。(タンゴって、ロック好きにはピンとこないというか……良 いイメージにはなりませんよね。)このアルバムは彼らのこれまでの集大成ともいえ る1大シンフォニック・アルバムといえましょう。1stは編成から想像するより ロック的だし、2ndはクラシカルでしたが、3rdはそれぞれの良さを融合したよ うなシンフォニックでありながら疾走感にも富んだ……考え得る最良の音楽表現が 提示されているといっても過言ではありません。これはひょっとしたら、アルバム・ ミックスの影響も大いにあるかも知れませんが……。何しろ前作で大人しいと感じ ていたドラムとベースが、非常に前面に出ているのです。シンセやハープシコード等 の各種キーボードの的確な使用も、アルバムの評価に好影響を与えていますし、文句 の付けようもありません。大編成のストリングスをメンバーにYouしたバンドとし てはELOとかもあるワケですが、彼らのストリングスの使い方が「いかにも」と いったものであるのに対し、エスペラントはアグレッシブですしオリジナリティを感 じさせます。ボクとしては1曲目の「エリナー・リグビー」でノック・アウト。この 1曲を聴いただけで彼らの成長とエスペラントの素晴らしさが実感できることでしょ う。  今回の再発3枚のうち、まず、どれを購入したらいいかなのですが……。本当は エスペラントの3枚は全てが必須アイテムで、甲乙付けようというのが無理な話……というぐらいですけれども、敢えて1枚といわれればボクは絶対的に3rdを薦め させていただきます。ピート・シンフィールドがプロデュースした2ndも捨てがた いのですが、やはり全体の構成やアルバムの完成度から、総合力で3rdとしたいと……。と、思っていたのですけど、今回聴き直してみたら、大人しいかなと思って いた2nd……良いじゃありませんか……。クラシカルな味がプログレッシャー 好みですよね。ひょっとしたら雑多な音楽性が、逆に最初はシンフォ・ファンに入り にくいかも知れません。結局、1stから順に聴いていってエスペラントの進化の過 程を辿ってみるのが正しい聴き方といえるのでしょう。



今月の1枚…… →

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