Apr.25,02 



変調子
我らが桜庭君の率いるデジャヴも非常にクオリティの高いテクニカル・シンフォです。日本の変拍子の曲って、結構「ムリがあるなあ」と感じさせるものが多いですよね。でも桜庭君のモノはすごく自然だと感じてました。ボクは仕事で何度も彼と組むことになってわかってきたのですが。彼はムリに変拍子を書こうなんて思っていないのに、結果的に変拍子になっている場合が多いようなんですね。それは彼の感性がおかしいのでしょうか?
クラシック畑を勉強してきた音楽家にとっては、それはおかしいことのようです。音楽は譜割も拍子も4で割り切れること……というのが近代西洋音楽の基礎のようです。しかしトラディショナルな音楽では変拍子は普通にあることを、ボクらプログレッシャーはプログレ雑誌の文章から勉強させられてきてますよね? だから、実は近代クラシックの方にムリがあるんじゃないの? と最近は思ったりしてるわけです。プログレを聞き始めた最初の何もわからなかった頃には、イエスとかが変拍子を多用しているらしく、「変拍子はテクニカルで難しいもの」なのにそれを完全にこなしているイエス等は凄いのだという風に信じていました。
なぜ変拍子が凄いのか? その意味もわからずにイエス等のプログレは変拍子を駆使している「テクニカルな音楽」という先入観だけで「価値がある」と思っていたボクは、ずいぶんと浅はかだったワケです。実際にはそれぞれが別の拍子で演奏していながら、破綻することなく演奏しきることが凄かったというのを知るのは、ずっと後の話です……。それだけボクには違和感なく聴けてしまっていたということですが……。
ところが変拍子は「聴いていると気持ちが悪くてダメだ」という人がいることがその内にわかってきてビックリしました。ボクなんかずれている方が気持ちが良かったりするのに……。つまり変拍子が自然な人と受け付けない人が、どうやら世の中にはいるらしいということです。多分コンポーザーも同じなのだろうとボクはにらんでいて……桜庭君は間違いなくナチュラルに変拍子が受け入れられてしまう人というか、もしかするとボクと同じように変拍子が入っている方が気持ちいい人なんじゃないかと思ったりします。かつて彼には「曲は必ず偶数拍子で書いてくれ」と仕事を発注されていた時代があったそうですが、その頃は仕事として割り切らないとやれなかったと聞きますよ……。そんな桜庭君なので彼のアルバムはほとんど例外なくナチュラルにプログレとして聴くことが可能です。ボクと絡んだゲームのサウンドトラックやアレンジモノのアルバムは、彼のソロ作として十分にプログレッシャーに対応可です。キングものに限らず、機会があったら是非聴いてみて下さい。


キング以外のプログレの代表作というと、それ以前の80年代前後か、さらにその時代をさかのぼったアルバムが大半を占めると言って良いでしょう。まず80年代のテクノで一世を風靡したPモデルの平沢進氏が率いたマンドレイクが筆頭でしょうか? マンドレイクは発掘音源しか残されていません。マーキーより発売されたマンドレイクの「アンリリースド マテリアル ボリューム1」「アンリリースド マテリアル ボリューム2」は、当時のマンドレイクの凄さをあらためて思い知らされます。多分当時彼らが目指したのは初期クリムゾンだったはずです。全てのボーカルが歪まされていたりリヴァーヴがかかっていて、ラフに聴こえてしまうのだけが残念ですが、楽曲や演奏は文句なくメジャー発売されるべきクオリティを誇ります。コスモス・ファクトリーもプログレとして高いクオリティを誇っています。1stアルバムの「トランシルバニアの古城」はジャップス・プログレ初期の傑作シンフォ・アルバムと呼べるモノです。74年当時に、コロンビアというメジャー・レーベルからこんなアルバムが出ていたとは驚きです。2ndの「ブラックホール」は東芝より発売され、ボクも1年ほど前にやっと入手した幻級のアイテムです。内容の方は実は未聴なので何ともいえません(最近聴いてないアルバムが多いなあ)が、初期の2作は良質なプログレと聞いています。そして件の「4人囃子」ですが、ファー・イースト・ファミリー・バンドと共に日本のピンクフロイドとして勇名をはせたバンドでした。知名度では絶対的に「一触即発」ですが、実はプログレとしてのクオリティでは2ndの「ゴールデン・ピクニック」が勝っているとか……。是非聴き比べてみて頂きたいところです。ファー・イーストも良質なプログレバンドとして、その名を残すバンドです。同バンドは四人囃子と同傾向ですが、より和旋律が強調され、内性的な響きが強いといわれています。前出の通り、ボクはピンクフロイド派ではないのでこれ以上のコメントは控えたいと思いますが、ジャップス・プログレに向かっていくと避けては通れないバンドではあります。

これより更にさかのぼると、プログレッシブと言うよりはブリティッシュという感じになってきます。例えばフラワー・トラベリン・バンドはジョー山中氏が在籍したバンドで有名ですが、実はブリティッシュなギターがテクニカルにさえるブリティッシュナイズされたサウンドが特徴のバンドです。最高作は「サトリ」となっていますが、ボクもまずは同作をお勧めします。柳田ヒロ氏の「same」や「ミルクタイム」もブリティッシュナイズされた先進的なアルバムです。多少セッション的なイメージがありますが、ヒロ氏のハモンド・オルガンが暴れ回るブリティッシュサウンドが魅力的です。ストロベリー・パスやフライド・エッグは成毛滋氏が中心となったブリティッシュなバンドです。両バンドの計3枚のアルバムはいづれもセッション的なイメージが更に強まりますが、特にストロベリー・パスにはつのだひろ氏の「メリー・ジェーン」のオリジナルが収録されていることで有名なアルバムです。時代は前後しますが、70年代末のバンド・新月も忘れられないジャップス・プログレの重鎮です。とても日本的な旋律にジェネシス的なアレンジで、聴き応え十分です。


以上、駆け足でお送りしたジャップス・プログレのミニ特集でした。また特集する機会があれば、更にディープなところがご紹介できるかも知れません。


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