Apr.25,02 



ジャップス・プログレのミニ・特集
先日、いつもお便りをいただいている山崎さんより

日本のプログレで高橋さんのお勧めなどありましたら、こちらのコーナーで色々取り
上げて下さい。また勉強になりますので。

こんなお便りをいただきました。山崎さんのお便りのご返事でも申し上げた通り、今回は日本のプログレを特集してみたいと思います。

これまで本家であるブリティッシュ、それにイタリア、アメリカ等のユーロと呼ばれるプログレを取り上げて来ましたけれども、確かにジャップス・プログレは取り上げてこなかった気がしますが、それには理由があって……。
元々ボクは、「日本の歌謡曲」より「欧米のポップス」の方が凄いというところから派生して洋楽を聴き始めた口です。だから当時ロック(プログレ)といえば海外という意識が支配的だったのです。当然、ジャップス・プログレを聴き始めたのも、リアルタイムではありませんでしたので大きなことはいえませんね。
日本の音楽を見直したのは、先日紙ジャケ再発された井上陽水「氷の世界」が始まりでした。当時ボクはプログレにも限界を感じ始めていた頃で、音楽に対する愛着が消えようとしていた時代だったのです。プログレは好きだったのですが、何しろメジャーのバンド以外の情報はほとんど流れてこないですし、肝心のメジャーバンドは解散したり休止したり、「プログレも終わりなんだなあ」と思わせることばかり……そんな時代でした。(クリムゾンがレッド発売の前日に解散宣言したり、ELPが活動を休止したり、YESもそれに近い状態で、バンダーグラフもそんな風で……と、そんな情報が集まってくれば誰だってそう思いますよね。今だったら、ちょうどそんな頃、イタリアやユーロやアメリカのアンダーグラウンドなところでのプログレが活発化していた時代だったんだということも、わかってきましたけれどね……。)件の陽水のアルバムを聴いたのは、当時入り浸りだったカトレアという喫茶店のBGMでした。その喫茶店は炎の色の変わるマッチをくれる喫茶店で有名なチェーン店の1店で、その頃ムーブメントが巻き起こり始めたニューミュージック関係ばかりをBGMに使っていた店でした。いつも10人以上でたむろしていた同店でかかるBGMが、いつの間にかとても気にかかるようになってきたワケです。今聴いてもわかる通り、当時のニューミュージックのアレンジって普通じゃありませんよ。メロトロンを結構使ってますし、ブラス・アレンジは3管編成のジャズみたいにユニゾンでアグレッシブに決めていたりと、当時のアレンジャーなのかアーティストの趣味なのか、ポピュラーミュージックの粋を逸脱しているものが目立ちました。ボクはそんなアレンジや(当時としては)変なコード進行が気に入って、「これって、アコースティック系の日本のプログレじゃん」という感じで、そちらにのめり込んでいくのでした……。


そして時は移り、ジャップス・プログレの存在を知ったのは90年代にプログレッシャーに復帰してからのことでした。何度も話題に取り上げているキングのユーロロック・ハンドブックによってジャップス・プログレの存在を知ったのでした。同誌の巻末に特集されているジャップス・プログレの紹介を見て、「やっぱり、そういうバンドがあったんだ」とあらためて納得させられたわけです。プログレに影響を受けた当時のニュー・ミュージックのアレンジを聴いてきた身ですから、プログレ好きの日本人がバンドをやっているのって必然だと思うわけです。まあ、おおっぴらにプログレが出来ないモノだから、当時のミュージシャンがニュー・ミュージックでやってしまったというのはあるのでしょうけど、それにしてもそういうバンドが全然ないというのも納得のいかないところです。ハンドブックによって、そういうミュージシャンがいたことが確認できて、何だか納得いくモノがあったりしたのです。実は同時代的に「4人囃子」は知っていました。当時とても仲の良かったツェッペリン好きの岩田君という友達から、同バンドの「一触即発」というアルバムを聴かされたりしたのです。しかし「4人囃子」はピンクフロイドに影響されて出来たバンドであることを知っていたボクは、その情報だけでどうしても魅力的なバンドには思えなかったワケです。だって当時、ボクの一番好きなアルバムは「原子心母」なのですが、4人囃子はオーケストラ入りではアルバムを作っていなかったから……。まだ「狂気」は出ていない時代だったのです。その当時クリムゾンをリスペクトしたバンドがいたらのめり込んでいたのでしょうけど……。

日本のプログレも入ってみると奥は深いですね。過去にさかのぼると、ブリティッシュなバンドもあったりして……。だけど、シンフォニックなバンドは70年代は稀少です。だからジャップス・プログレを試してみようと思われる方にお勧めなのは、まずは80年代のものだと思います。やっぱりキングから攻めていくのがセオリーでしょう。それ専門のレーベル(ネクサス、クライム)まで作ったぐらいに、当時は熱心だったみたいですしね。やはり当時ユーロ担当だった新井さんという方の尽力が大きかったのじゃないでしょうか?
ノヴェラはプログレか? という問題はありますが、一応プログレ・ハードというジャンルに分類されているみたいです。しかしボクとしてはノヴェラ関連では平山照継氏のソロ以降をプログレと分類したいところです。テルズ・シンフォニアも含めて真性のプログレと言えるでしょう。ジェラルドもキーボード系プログレとして頑張ってますね。ボクは96年頃の再編作から聴き出したんですけど、そのアルバムに関してはちょっと一本調子な感じでしたけど……デジタリィな感じものめり込めなかった原因かな……。特に再編前の諸作は評判が良いようです。(買ったけど聴いてません。すんません。)ヴィエナはどうなんでしょう? 以外と印象にないんですよ。当時(もちろんリアルタイムじゃありません)、スーパー・グループという押し出しが強かったため期待し過ぎちゃったためかも知れません。(ボクの場合、イタリアの名作等も並列で新作として聴いていた時期だから、大分損をしているという事情もあります。世界的に見たって、クエラやフェスタモビーレに匹敵するアルバムなんて、おいそれとはありませんものね。)その後聴いていなかったんで、リマスター盤でしっかり聴き直してみたいと思います。(だけどキーボードの塚本氏はボクの大好きなアウター・リミッツのキーボードの方ですし、バンド編成は申し分ありません。)しかしそういう時代に並列で聴いても素晴らしかったアルバムが存在します。

例えば美狂乱やケンソーの初期(中期以降はジャズロック・フュージョン系なのでプログレ派にはどうかな? )なんかは、海外でも評価が高いそうですが、その通りに素晴らしいです。美狂乱の1st「same」や2nd「パララックス」は絶対に聴くべきアルバムです。ギタートリオにヴァイオリンやキーボードのゲストを迎えて、かなり緊張感の高いサウンドを展開しています。須磨氏のフリップナイズされたギターの音色に酔えます。ケンソーはテクニカルなシンフォ・サウンドで、初期にはPFMにも強い影響を受けたというバンド一丸となったサウンドが素晴らしい。やはりジャップス・プログレならば通過すべきバンドです。
アインソフは素晴らしいですね。後に99.99というフュージョン・バンドに発展するアインソフは、ボクには個性的なバンドに感じられました。間違いなくシンフォニックなプログレなのですが、当時聴いた時何々っぽいという感じがしないオリジナリティに嬉しさを覚えました。(やっぱり、ボクも日本人なんだなあ。)最近リマスター再発された同バンドの「帽子と野原」は長らく廃盤が続き中古市場でも高値を呼んでいました。ボクも高値で買ってしまいそうだったので、この再発は本当に嬉しかったです。一応彼らのシンフォの最高作は1st「妖精の森」とされています。しかし本来はジャズロック系だったらしい同バンドなので、彼らの本領が発揮されたとされている同作がとても聴いてみたかったのです。まあ、常識的には1stから聴かれることをお薦めしますが、まだ売っているのでしょうか?
最近購入してしまったヘヴィ・メタル・アーミーというバンド(ヘヴィ・メタだろ? ということで購入に躊躇してるうちに廃盤になってしまいましたが、石丸電気の在庫リストで発見して注文しちゃいました)があって、そのバンドのリーダーである中島優貴氏のソロ「大予言」はリック・ウェイクマンばりの大傑作だそうです。随分前に廃盤になって以降再発されたことが無く、中古市場でもついぞ見かけたことがありません。見かけても躊躇するほど高かったり……。今やボクにとってはジャップス再発の最右翼のひとつなんですけど……。
ミスター・シリウスの「ダージ」はスゴイ!アルバムです。Mr.シリウスこと宮武氏のフルートを中心に、中世ロマネスク的メロディが見事にロックと融合しています。クラシカルでありながら、バラエティ豊かでけして一本調子にならないアレンジといい、日本を代表するプログレッシブアルバムです。ちなみに同作でボクは完全にページェントの永井博子さんのボーカルにはまりました。
……というわけで、彼女と中嶋一晃氏というギタリストが率いたページェントも素晴らしいバンドです。ジェネシス的なバンドサウンドに日本的なメロディーを付加して、オリジナルなサウンドを確立していて見事です。前期ページェントがガブリエル期のジェネシスなのに対し、後期ページェントはフィル・コリンズ期のジェネシスとされていて、今回再発した「夢の報酬」は中嶋氏が脱退し永井態勢になった後期に当たる作品です。確かに前期に比較して幻想性は後退しましたが、クオリティはけして低くなっていません。プログレッシャーが十分楽しめる作品だと思います。(宮武氏が参加しているのも嬉しいです。)アウターリミッツは、ジャップスプログレの中で最もユーロロック的メロディとアレンジを再現しているバンドかも知れません。まるでイタリアン・プログレのような同バンドのアルバムは数作ありますが、どれも甲乙付け難い素晴らしいクオリティを誇ります。彼らのサウンドがイタリアン・プログレと錯覚させるのには、ヴァイオリニストの存在が大きいようにも思われます。もし未聴の方がいらしたら、是非聴いてみることをお勧めします。



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