ジェスロ・タル

というわけで、ジェスロ・タルでしたね。しかし、今回のディスク・ユニオンの特典には驚かされました。LP時のオリジナル帯ということだったのですが、「日曜日の印象」と「スタンド・アップ」はアルバム全体を包み込む「巻き帯」スタイルにライナーが印刷されているという手の込んだモノだったんですね。アルバムのギミック度にも驚きますが、この特典帯の手の込み方も尋常ではありません。これだけの特典ならば、もし読者の皆さんの中でせっかく購入される方がいられるなら、ボクは自信を持ってこの特典付きを買われることをお薦めします
 9月から始まった紙ジャケラッシュでボクが購入したアーティストは、タルを含めてエルトン・ジョン、フォーカス、ウイッシュ・ボーン・アッシュ、エイジア、フランク・ザッパ等々になりました。(単発で、スタイル・カウンシルやTレックス等々も購入してますけど……。)これに社員旅行で発見入手したジェネシスの紙ジャケやジャズ系等と……狂ったかのようです。今後、ストレンジ・デイズ・プレゼンツの「イタリアン・ロック・レジェンド・シリーズ」や発売が遅れているフリーが11月中に発売されるでしょうから、まだまだサイフの厳しい日々が続きそうです。

 今回発売された各種アルバムの中で個人的に特筆すべきなのはエルトン・ジョンでしょうかね。かつてアナログ時代にも持っていた2nd「僕の唄は君の唄」には有名なバラード曲「ユア・ソング(邦題・僕の唄は君の唄)」が入っていて、当時はそれが聴きたくて入手したモノでした。しかし「それ以外は退屈だなあ」というのが当時のボクの評価で、今回も購入を見合わせる予定だったのです。しかし秀五氏が余りに積極的だったのと、発売前日からの売り上げの出足の良さに「購入しないと買い逃しそうだ」と危機感を感じて購入に至りました。購入した結果は満足行くものでしたので文句はありません。下手なプログレよりブリティッシュというか? ミュージシャン・スピリットを感じさせてくれるエルトン・ジョンはやっぱり凄い。表題曲を聴きたさに買った「グッバイ・イエロー・ブリック・ロード(邦題・黄昏のレンガ道)」以外はCDで持っていませんでしたしね。今回のジェスロ・タルみたいに、購入特典付きだったらもっと積極的に購入できたのになあ。
 一般的にエルトン・ジョンというと先に挙げた2曲を筆頭に、「マッドマン」「ホンキー・キャット」「ダニエル」「クロコダイル・ロック」等のシングル・ヒットで有名な通りにポップ・スターなイメージが強いわけですが、少なくともライブを含めた7th「ピアニストを撃つな」辺りまでは、ポップ・スターというよりはアーティスト魂を感じさせる作りと言えましょう。<br> 今回のエルトンで、ボクが個人的に特に気に入っているのは2nd「僕の唄は君の唄」(見開きジャケ)6th「ホンキー・シャトー」(変形ジャケ)7th「ピアニストを撃つな」(見開きジャケ)8th「グッバイ・イエロー・ブリック・ロード」(3面開き)です。非常にアコースティックでストリングスが美しい2nd(前出の通り「ユア・ソング」を収録)、バンドサウンド的な6th(時に導入されるホーン・セクションがポップ的ではあるけれど……「ホンキー・キャット」「ロケットマン」収録)、トータル・アルバムとしての完成度が高い7th(「ダニエル」「クロコダイル・ロック」収録)、(壮大なオープニングから始まって)エンターティナーとしてサービス・精神と表現力が総合的に爆発した8th(表題曲と「土曜の夜は僕の生きがい」収録)等と、こうしてみるとヒット・シングルをフィーチャーしたアルバムがお気に入りになってしまっているのは自分でも以外ですが、逆にベストアルバムでは退屈に聴こえてしまうエルトンのヒット・シングルがオリジナル・アルバムでは生き生きと響いてくるのは、彼のミュージシャン・スピリットのなせるワザなのかも知れません。かつてキング・クリムゾンのオーディションに応募したといわれるエルトン・ジョンは、やはりブリティッシュ・ロッカーとしての精神を色濃く残しているミュージシャンといえるのかも知れません。

 その他では、やっぱりフランク・ザッパでしょうかね。フランク・ザッパはこれまで、何度もチャレンジの入口でくじけてしまったアーティストでした。どうしてくじけてしまうのか?というと、フランク・ザッパというミュージシャンの音楽の聴き方が、どうやらブリティッシュロックのような音楽の聴き方と違うから……というのが理由といえば理由でしょうかね。実際に聴かせてもらっても「これがザッパの代表作なの?」という感じでピンときませんでした。しかし「これがザッパなんだ?」と聴くと「うーん、これがザッパといわれても困っちゃうけど……」と自信なさげです。ザッパに興味があるという人間に聴かせてくれたアルバムが、そのアーティストを代表しないアルバムなんて……とボクの方が困っちゃいますよね。
 ブリティッシュロックの場合、「誰々のアルバムは××である」という決定的な名盤というのが存在するものです。ところがザッパにはそれが存在しないというのです。乱暴な言い方をする人は「ザッパは全部聴かなくてはいけない」というような言い方の人までいます。60枚はあろうかというディスコグラフィーを全て聴けということです。それだけの作品を残すミュージシャンは概して、ライブ音源が多いミュージシャンの場合が多いわけで、構築的であるというよりは即興的な音楽である場合が多いわけです。ボクのようなプログレ・リスナーで、ザッパ・ファンでない人間というのは無意識の内に「当たりはずれが多い」ことをそうしたことから予測するのだと思います。まず「極めつけの1曲や1枚を試したい」と願うものです。ところが、ザッパ・ファンは「自分の耳で聴き分けろ」といわんばかりです。彼らの言葉によれば「ザッパに駄作はない」からだそうです。なんか、これって……どこかで聴いたような理屈だなあ……。
 こういう言い方って、ジャズのヘヴィ・リスナーの言い方に似てるなあ……と思った次第です。かつてボクがジャズの入口の前でウロウロしていたのも……どこから手を出して良いか?わからなかったからなのです。もしかすると、プログレッシブ・ロックもそうなのかも知れませんけどね……。「あるジャンル」に興味があるってことは気になる雰囲気ぐらいは持っているもので、ボクの場合で言えば映画マニアだったボクにとって「映画で見たような格好良いジャズ」が当時は聴いてみたかったのかも知れません。間違ってもボクが聴きたかったのは、チャーリー・パーカーの「ナウズ・ザ・タイム」やオスカー・ピーターソンの「プリーズ・リクエスト」ではないのです。(もちろん、同作が悪いと言っているのではありません。しかしビギナーが最初に手にするアルバムではないのも確かです。)むしろボクのようにロック流れのリスナーならリー・モーガンの「サイド・ワインダー」やキャノンボール・アダレーの「サムシング・エルス」、マイルス・デイビスなら「マイル・ストーン」や「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」、マイルス80年代の長期休養後の復帰作「マン・ウィズ・ザ・ホーン」辺りが良いように思います。クロスオーヴァーやフュージョンは、ロックの垣根が少なすぎて「ジャズを聴いてる」感じがしなかったり、ロックをポップにしたかのようで面白くなかったりします。テクニックを聴くのではなく、しっかりジャズ(=大人)の雰囲気も含めて味わいたいのです。先に挙げたそれらのアルバムは、そういった意味で非常に分かり易いジャズなのです。
 その道の求道的リスナーは、歴史的価値や音楽業界への影響等といったことから「これを聴け」と言いたがるものですが、ボクらリスナーは気に入ればウンチクは後からついてくるものだと思っていますからね。



 フランク・ザッパ!! →



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