いんぷれっしょん (長いよ)
 さて今回はお約束通り、紙ジャケ発売予定もしくは発売盤のインプレッションをお送りしたいと思います。しかし、枚数が多いですし、どこまでやれますことやら……。
 まずはストレンジディ・プレゼンツのブリティッシュ・レジェンド・シリーズをまとめてやっておきましょう。
 3月28日から3回に分けて発売された第2回には、計9枚でした。ドクターZはハープシコードやハモンドオルガンが前面に出たいかにも当時のアンダーグラウンド・ブリティッシュロック。クラシカルにしてアバンギャルドな邪悪系ブリティッシュヘヴィ等といわれているようですが、基本的にはトリオ編成なのでオザンナのように「カオスの塊のような展開」を期待すると肩すかしを食うかも知れませんが、やはり邪教的な怪しさとクラシカルな美しさが同居したサウンドは、アナログ当時に高額プレミアがついた名に恥じない一級品です。変形ジャケットであることも、紙ジャケットとしては見逃せないところです。

 キャメル「スノーグース」と「ムーンマッドネス」の2作は、ブリティッシュの巨人で特集した通りキャメルの代表作であるだけに必聴でしょう。バークレー・ジェームス・ハーベストの「宇宙の子供たち」は冒頭からアコースティック・ピアノの調べが美しく、ボクが聴いたBJHの中でも最もシンフォニックな1作かも知れません。全体にリズムセクションの歯切れが良く、要所要所にメロトロンも配されています。ワウを効かせたギターの音色が少し時代を感じさせたりもしますが……。典型的なブリティッシュロックのくぐもった湿り気のあるサウンドが味が泣かせます。今聴くと、以外とファンタジーやスプリングとの共通項も見受けます。
 「神話の中の亡霊」は、前者からライブを挟んでの次回作に当たるアルバムです。まず、ジャケットの美しさにウットリします。やっぱり紙ジャケにして相応しいアルバムってありますけど、本作は紙ジャケの真価が発揮できる美しいイラストに飾られています。インナーバックも嬉しいところで、シングル・ジャケットだというマイナス面をも払拭します。サウンドは前作を踏襲したものになっていますが、混声合唱なども導入して、前作よりも重厚さを増している印象です。3曲目のイントロに流れるメロディはビートルズのサムシングだったり、内容でもビートルズを彷彿とする歌詞が登場してきたりするのも、マニア心をくすぐります。コーラスワークの美しさも付記しておきましょう。

 クレシダ「アサイラム」はキーフのデザインのアートワークが有名なハモンド系キーボードロックとして折り紙付きの名盤です。かつて発売された時と比較して格段に音質が向上しているようにも感じますし、そのためなのか? アグレッシブ度も増しているように感じます。オーケストラの導入もあって、クラシカルな風味のブリティッシュロックのお好きなリスナーなら、最初はピンと来なくてもいつの間にか気に入っているそんなアルバムだと思います。

 クリアー・ブルー・スカイは典型的なハード系のブリティッシュロックです。彼らはトリオ編成で、歪んだギターが特徴になっています。ハードとはいいながらも一本調子にならないところは、さすがはヴァーティゴといったところですし、ジャージーな三身一体のギタートリオ演奏のバックでアコースティック・ピアノが流れるなど、結構楽しませてくれます。とはいっても、プログレ・ファンに手放しで勧められる作品かというと……どうでしょう。プログレもハードも聴くよというリスナー向けでしょうかね。ロジャー・ディーンがデザインしたジャケットが有名なアルバムでもあります。

 スティルライフはアナログ当時、幻の名盤として有名だった作品のようです。このアルバムはちょっと不思議なサウンドです。確かな演奏能力に裏打ちされたメンバーが一体となったキーボードロックなのですが、どこか「おぼろげ」なのです。ハモンドの鳴り方はどこか、プロコルハルムのようでもあったりします。クラシカルといわれれば、その通りなのかも知れませんけど……。ブリティッシュ特有の湿り気と相まって……シンフォニック・ファンへというのには抵抗もありますけど……とても好感が持てます。

 フレイミングユース「アーク2」は69年の作で、ジェネシス加入前のフィル・コリンズが参加していたことで多少なりとも知られているバンドのようです。全員がボーカルを取るらしく……プログレというよりはアートロックという感じのコーラスポップ・プログレだとか……。多分日本発売は発のことですし、一応外盤でのCD化はされているらしいのですが、ボク自身もノーマークだったため聴いたことはありません。まあ、ストレンジディという雑誌が監修したシリーズのラインナップの1枚なので、ブリティッシュロックとしての魅力は十分なものと思いますが……。(この雑誌を100%尊重してアルバム収集していると、たまに全く守備範囲外のアルバムが絶賛されてしまう場合があります。きっと好みの問題だと思うのですけどね。だから、このアルバムについてはちょっと「? 」ではあります。まあ、ブリティッシュロックのエンサイクロペディア本のプログレの項で紹介されてありますので、それほどかけ離れていないはずだと思うのですが……。あと、メンバーには後に2ndからジャクソン・ハイツに参加するブライアン・カトンも在籍しています。)

 次にスタックリッジの「same」「フレンドリィネス」「山高帽の男」はそれぞれ同バンドの1stから3rdにあたります。特にMCAレーベル時代のスタックリッジは、ハートウォームなメロディにフォークロック的なサウンドと凝ったアレンジで、ポスト・ビートルズを期待されたバンドだった……と言われていたと記憶します。確かブライアン・エプスタイン(ビートルズの第5のメンバーなんて呼ばれてますよね)が絶賛し、実際にアンディ・デイヴィスはギターでジョン・レノンの「イマジン」に参加したとか……。後にエルトン・ジョンに誘われて彼のロケット・レーベルへ移籍する前のスタックリッジの最高作と呼ばれるのが「山高帽の男」なのです。当時ボクはやはりリアルタイムに手に入れて、結構聴いていた記憶があります。実際MSIレーベルから発売された2ndと3rdも相応に聴いています。シンフォニック度という点ではロケット・レーベルの4thや5thに軍配が上がるのかも知れませんが、何故か? 曲の方の完成度は2ndや3rdに軍配が上がるような気がします。当時聴いていたせいなのかも知れませんが、曲が覚えられるという点では2nd3rdだからです。その理由の一つにはオリジナルメンバーの大量離脱というのがあるのかも知れません。それぞれ、ストリングスやオーケストラを要所に導入して夢見るようなファンタジー・ワールドを表現しているといっていいでしょう。けして、アグレッシブなサウンドではありませんし、インタープレイを期待する類のサウンドではありませんが、リスナーを童心へと誘ってくれるバンドでありアルバムだといえましょう。1stについては、それらが気に入ったリスナーにはお薦めします。まず2ndと3rdから。

 ダリル・ウェイ&ウルフの「same」と「サチュレーション・ポイント」もやはりブリティッシュロック・ファンにはお薦めのアルバムです。イアン・マクドナルドがプロデュースしたことで、知名度や人気度では圧倒的に1stですが、プログレファンには実は2ndが絶対的に大推薦です。1stでは、未だカーブド・エアを脱退した延長線上のサウンドを模索していてボーカルのフィーチャー度が高いのですが、それにしてはボーカルが弱い。インストルメンタルの出来が良いだけにもったいない。中でもラストの「悲しみのマクドナルド」は永遠の名曲で、その後ウェイのソロ作でも再演しています。それと比較して2ndのスリリングなこと。後にソフト・マシンなどを経てジャズロック系で活躍するジョン・エサリッジのギターとウェイのヴァイオリンのバトルとも呼べるインタープレイの応酬は筆舌に尽くしがたい絶品です。
 ジャイルズ・ジャイルズ&フリップは、プレ・キングクリムゾンなんて言われていますが、そうした面が見える楽曲はわずか数曲です。ほとんどはホンワカ・ムードのポップロックで、一応コンセプト・アルバムとなっていますが、相当なフリップ・フリーク以外はきついかなあ
……というのが正直なところです。ジェントル・ジャイアントの前進といわれるサイモン・デュプリー&ビッグ・サウンズと似たような位置(実は「サイモン・デュプリー〜」は結構気に入っていたりします、ほのかにプログレ臭もあって……)にあるというか……それよりも更にポップ寄りです。これはピーター・ジャイルズのボーカルによるところが大きいようで、その後クリムゾンではグレッグ・レイクに取って代わられてしまうのもよくわかるといったところです。

 キャラバン「グレイとピンクの地+5」「ウォーター・ルー・リリー+4」「夜毎肥る女のために+5」はいづれもキャラバンの代表作として有名なアルバムです。それで、キャラバンの特徴は何と言っても「ソフト・マシーン」と2分して確立したカンタベリー・サウンドにあります。3rdになる「グレイとピンクの地」はB面全てを使った組曲「ナイン・フィート・アンダーグラウンド」が有名です。アルバム全体にフラワー・サウンドとジャズ風味が微妙に入り交じっていて、ポップですが特徴あるサウンドを有しています。4thの「ウォーター・ルー・リリー」は3rdから格段の進歩を感じられるアルバムで、この変化はリチャード・シンクレアの脱退が大きく影響しているとも考えられます。(彼は(その歌声で)キャメルをポップ化した張本人だったりします。)オーケストラを導入したり、英ジャズロックの俊英たちをも参加させることによって、独自のシンフォニック・ジャズロックとも呼べるような作品に仕上がっています。5th「夜毎肥る女のために」は一般にキャラバンの最高作と語られるアルバムです。リチャード・シンクレアが復帰したことも関係するのか?前作よりも多少なりともポップな作品となっていますが、相変わらずオーケストラを導入してキャラバンの脂の乗った楽曲及び演奏が堪能できます。

 更に続報として、どうやら6月21日には更にキャラバンの2nd「キャラバン登場+4」6th「キャラバン&ニュー・シンフォニア+5」7th「ロッキン・コンチェルト+3」もリリースされる模様で、中でも7thは5thと並ぶ最高作として定評のあるアルバムです。キャラバンのアルバム中では最もシンフォニックでロック色の強いサウンドを聴かせてくれたと記憶します。
 これにより黄金期と呼ばれる2ndから7thまでが全て紙ジャケ日本プレスで揃うというのですから、ありがたいというか?サイフはその分「トホホ」な状況になりそうです。

 さて次はピンク・フロイドでもいきましょうかね。といってもピンク・フロイドはボクより皆さんの方がご存じだったりしません?
 ボクが本気で聴いたのは70年代で、ボクにとっての最高作は「原子心母」のA面、「おせっかい」のA面、「狂気」です。もちろん「雲の影」から「モア」から「ウマグマ」まで所有していましたけど……ダメだったんですよね、当時は。今回はとにかく「ウォール」までの12枚が出揃うので「買うしかないかなあ」とは思っているんですけど……。後から後悔するのも悔しいじゃないですか「ああ、買っておけば良かった」ってね。でも一般的なロック・リスナーにとっては狂気以降でしょうし、プログレファンにとっては「原子心母」から「狂気」まででしょうし、サイケファンには初期から「ウマグマ」辺りまでなんでしょうかねぇ。フロイドっていうバンドは、時期によってサウンドの趣向が大きく変わるバンドですからね。それぞれの趣向によって、選んで購入される方が懸命ではないでしょうかね。


←PREVNEXT→

戻る