ルネッサンスとの出会い
今ボクのルネッサンスとの出会いは、やはりミュージック・マガジンのディスク・レビューからでした。第2期ルネッサンス(現在まで連綿と続くアニー・ハズラムのルネッサンスのことです)の「プロローグ」(72’)からでした。あの当時に不思議だったのは、同アルバムを購入してから件のディスク・レビューを見直してみると、けしてプログレ好きの琴線に触れるようなレビューではありませんでした。なのに、どうして購入に至ったのか……。当時でも、そう思ったのですから今から思えば更に不思議です。1曲目の表題曲である「プロローグ」(キース・レルフ期の1stと2ndに続く3作目なのですが、全く別バンドといって良く、ボクの認識では1st)が、ボクのルネッサンスに対するイメージを決定してしまったのかも知れません。アコースティック・ピアノによるショパンの「革命」のインパクトは本当に鮮烈でした。その後にリリースされるアルバムに比べると素朴さや清廉さも感じさせ、ボクにとってルネッサンスのナンバー1アルバムはこのアルバムなのです。アニー・ハズラムの歌声は「正に妖精のよう」で、当時のボクはこの声に恋心を抱いていたのかも知れません。表題曲の「ルルルルー」のスキャットは正にアニーのボーカルの面目躍如たる清々しさです。(けして由紀沙織の「夜明けのスキャット」の「ルルルルー」ではありません。)アルバム全編渡って鳴り響くジョン・タウトのアコースティック・ピアノの響きも素晴らしい。永遠の名盤です。(プログレか?と問われれば、ボクは「是」と即座に答えられます。)残る5曲もどれもボクにとっては名曲で、適度にポップで儚げな響きが心を揺さぶります。

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それに続く「燃ゆる灰」(73’)は前作よりドライブ感が増して、さらに完成度が上がっています。トータル・アルバムのように一気に聴き通させる構成力も見事です。後にアニー・ハズラムがお気に入りのアルバムとして上げた4枚(それは結局アニーになってからの2nd「燃ゆる灰」から5th「お伽話」までをいいます)のアルバムの1枚ですが、それに恥じぬ完成度と言えましょう。後々までライブで演奏される「キャン・ユー・アンダースタンド」「カーペット・オブ・ザ・サン」「アーシュ・ア・バーニング」等々の名曲が目白押しのこれまた名盤中の名盤です。
余談ですが、とかくアニー・ハズラムのボーカルとジョン・タウトのピアノばかりが語られるルネッサンスですが、実はジョン・キャンプのベースや、テレンス・サリバンのドラムのリズム・セクションの高い演奏力が、リズム・キープ以上に高い貢献していることは、余り語られないのは残念です。特にクリス・スクワイア好きのボクとしては、彼のリッケンバッカーにも負けない「出しゃばりで饒舌な」ジョン・キャンプのベースは、ルネッサンスに欠かせない重要な位置を占めていることを強調しておきたいと思います。

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次にルネッサンスはレーベルをBTMに移籍して「運命のカード」(74’)を発表します。同作はタロットカードを配したジャケット・イラストが印象的で、ファンタージーや魔術好きのボクには応えられません。代表曲はやはりライブの定番「ランニング・ハード」「アイ・シンク・オブ・ユー」「ブラック・フレーム」「マザー・ルシア」等があって、楽曲も非常に充実しています。このアルバムも前述の通りアニーの大のお気に入りだそうです。アルバムの特徴としては、これまでほとんどアコースティック・ピアノのみだったキーボードに、ハープシコードやオルガンが加わったことでしょう。(実は「プロローグ」の最終曲だけは、確かゲストにカーブド・エアのフランシス・モンクマンを迎え、シンセによるフリーキーなソロが演奏されています。)前々作、前作、次作の評判のためにかすれがちな本作ですが、けしてそれらに劣るアルバムとは思いません。

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次にリリースされたのがルネッサンス初のコンセプト・アルバム「シェラザード夜話」(75’)です。記憶に頼っているので、ひょっとしたら違っているかも知れませんが、本作で初めてルネッサンスはオーケストラとの競演を果たしています。作を重ねる毎にシンフォニック度を高めてきたルネッサンスですが、本作はシンフォニックというよりはクラシカルというのが相応しい逸品。本作を最高作に上げるファンも多いようです。本作のB面は正にハイライト。A面のオーシャン・ジプシーも名曲ですが、B面の片面全てを使いアラビアン・ナイトをテーマにした組曲形式になっているシェラザードこそが圧巻です。本作はアメリカでも大評判を得て、正にルネッサンスの絶頂期の記録として後世にまで語り継がれるべき名作だといえましょう。

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次に発表されたのが「ライブ・アット・ザ・カーネギーホール」(76’)です。シェラザードによってメジャーバンドに成長したルネッサンスがオーケストラを伴って行われたコンサートのライブが本作で、当時2日間のライブは超満員だったことで相当な話題にもなったとか・・・。プロローグからシェラザードまでの代表曲が網羅された2枚組というばかりでなく、シェラザード以外の作品のオーケストラ・バージョンが聴けるアルバムとして、また違った価値を生み出してもいます。本作を聴いているとルネッサンスとオーケストラの相性の良さをあらためて痛感させられます。確かに曲によっては、ロックバンドとしてのドライブ感が損なわれているという点を指摘する向きもあるでしょうが、オリジナルアルバムを通過したファンにとってはけしてマイナスには感じられないことと思います。今回のルネッサンス来日前の予習として代表曲のおさらいにも絶好のアルバムですが、オーケストラバージョンを聴き込んでからだと、バンド編成のみの今回のライブでは音が薄く感じられてしまうかも……。本作を持ってルネッサンスはメジャー・レーベルであるワーナーへと移籍するのでした。



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