年末スペシャル「クラシックとの融合」編
オーケストラと競演して、自分たちなりに「クラシックとの融合」を図ったバンドも少なからずありました。その代表格は何と言っても「ムーディーブルース」でしょう。彼らの実質ファースト・アルバム「サテンの夜」はオーケストラと競演したロックアルバムの中で「最も成功した」アルバムだと断言します。元々のボクのクラシックの原点は映画だったのです。それは「美しき青きドナウ」だとかの一連のそのものズバリの音楽をテーマにした映画でしたし、何と言ってもディズニィの「ファンタジア」なのです。最初に見た「ファンタジア」は小学生の頃だったでしょうか? 映像と音楽の何と素晴らしかったこと・・・。特にボクは「禿げ山の一夜」がお気に入りで、音楽と映像に圧倒されっ放しでした。小学生だったボクは、同曲に本当に心から怖さを感じながらも、その魅力に感動していました。正しく衝撃でした。(この曲は後に多くのロックバンドに取り上げられていて、今思い出せるものではイタリアのニュートロルスというバンドが「アトミックシステム」というアルバムで演奏しています。このアルバムはプログレのアルバムとしても完成度が高く、ボクのお薦めの1枚。最近、キングレコードが再販したのか、ディスクユニオン新宿店が大量に仕入れていました。)映画で使われたクラシックでは他にも、「2001年宇宙の旅」という映画のタイトルに使われた「ツァラトゥストラはかく語りき」というクラシックの曲も素晴らしかったし、印象的な一曲でした。また「地獄の黙示録」という映画では「ワルキューレ」というクラシックの名曲が取り上げられていて、本当に印象的なテーマでした。(最近ではプロレスの藤原組長がテーマに使っていたなあ。)さて横道に逸れてしまいましたが、「サテンの夜」の話でしたね。このアルバムを初めて聞いた時の印象が正に、「ファンタジア」だったのです。アルバムの導入部から徹底してファンタジックな楽曲が、最終曲のテーマ「サテンの夜」まで、リスナーを異次元へと誘ってくれるという楽曲とアレンジとオーケストラとのアンサンブル勝利・・・ということが出来る訳ですが、とにかくビジュアル的な音楽なのです。ある人間の朝から夜までをテーマにして、人生を、宇宙を、音楽でビジュアル化した作品、それが「サテンの夜」なのです。68年の作品ながら、今聴いても全く色あせることのない新鮮な感動を与えてくれます。
他にもオーケストラの競演で素晴らしいクラシカルな作品は沢山あります。イタリアのニュートロルスの「コンチェルト・グロッソI」と言う作品は、ルイス・エンリケ・バカロフという名作曲家・アレンジャー(映画音楽の世界で、エンリオ・モリコーニ等と共にイタリアを代表する音楽家だそうです)との共同作業によって作られました。このアルバムのA面(そうか、今はCDだからA面もB面もない訳だから、前半部と言うべきか?)全てを使った非常に美しい作品です。(後半部はブルーズ色が強くジャーズィで、しかも即興色が強い部分もあるので、その部分が好き嫌いを分けてしまうかも知れません。)バカロフは他にもプログレバンドと素晴らしい成果を残していて、ボクがPFMの次に好きなイタリアのロックバンド・オザンナと製作した「ミラノ・カリブロ9」というアルバムも素晴らしい。先のアルバムよりもアグレッシブな作品なので、ロック色の強さで勝りますかね・・・。両作品とも当時映画音楽として作られた作品だけあって、リリカルにしてドラマティックなのです。さらにバカロフはRovescio Della Medagliaというバンドと「Contaminazione」という作品で三度オーケストラとの競演を果たしているが、混作品もまた素晴らしい。まず最初にバカロフのロックバンドとの競演作を聴くのであれば、この作品が最もクセがなく楽しめるかも知れないです。
さて、今回のプログレの部屋は「クラシックとの融合」をテーマにお届けした訳ですが、最後にもう少しだけ説明を付け加えたいと思います。それはクラシックという「ヨーロッパルーツの音楽」を取り込んだクラシック的なロックです。クラシックの楽曲をバンドサウンドにする訳ではなく、オーケストラとの競演でもないのに、クラシカルなロックとして聴かせてくれるロックのことです。それは例えばプログレの5大バンドの中でもジェネシスの音楽やキングクリムゾンの特に初期のアルバムにそれを感じます。彼らの音楽は本当に「オリジナリティに富んでいる」と言えるモノですから、直接的な引用や表現に表してはいないのですが、とにかくヨーロッパ的といえるもので、それがクラシカルに聴こえるのかも知れません。プログレの初心者は絶対通るべき道と言えるでしょう。もっとはっきり、クラシカルなロックをという向きには、少しマニアックになりますがダリル・ウェイ&ウルフやロバート・ジョン・ゴドフリーやレイモンド・ビンセント率いるエスペラントをお薦めしておきましょう。それらは全てブリティッシュ・ロック系のアーティスト(エスペラントの場合は多国籍バンドでリーダーのレイモンドからしてイギリス人じゃないんですけど、音はどう考えてもブリティッシュ)で、共通しているのは、元々クラシック畑の人たちだということです。だから彼らの音楽がクラシカルであるのは付け焼き刃のクラシックではなく、しっかりとしたクラシック教育という土台の上に成り立ってプレイしているということです。彼らのアルバムはどれも高品位で安心してお薦めできる逸品ばかりといえましょう。(ただし今となっては、簡単に手にはいるのはウルフのファーストぐらいというのがチョット残念です。)
今年最後の「プログレの部屋」、いかがだったでしょう。ボクとしては書きたいことが「まだ山のよう」に残っているのですが、いつまで経っても終わりそうにない感じなので、「クラシックとの融合」というテーマはまた、今後も続編を書いていきたいと思っています。まだ、融合というくくりではジャズもポップスも残っていますし、楽器別という「くくり」でもやっていきたいと思っています。プログレというジャンルは、どうしてもマニアックに向かってしまいそうになるのですけれども、なるべく入門者に「分かり易い」プログレというのを今後も心掛けていきたいと思いますので、来年もご支援をよろしくお願いいたします。今後も意見や要望や感想などがありましたら、ドシドシお待ちしております。(マニアックなテーマだから、ドシドシはムリかな?)
最後になりますが、「みなさん」が良いお年を迎えられますよう、お祈り申し上げます。