ご本人による用語解説


エイジア
1980年代に突如現れたスーパーグループ。
キングクリムゾン・UKのジョン・ウェットン、ELPのカールパーマー、イエスのスティーブ・ハウ、バグルス・イエスのジェフ・ダウンズという4人編成のこのグループ、デビューと同時に「ヒート・オブ・ザ・モーメント」でナンバーワン・ヒットを生みだした時には本当に衝撃的だった。
それ以降、1980年代の後半にバンドを解散するまで、常に英米の音楽業界のトップに君臨していたといっても過言ではない。


ジョン・ウェットンとスティーブ・ハウ
ジョン・ウェットンは、ファミリー〜キングクリムゾン〜ロキシーミュージック〜UK〜エイジアと、常にロック界のメインストリームを渡り歩いたベースプレイヤーにしてアグレッシブなボーカリストであった。中でも我々プログレ・ファンにとって特筆されるのはキングクリムゾン・UKという2バンドでのジョン・ウェットンであろう。
第3期キングクリムゾン(オリジナルアルバムでは5枚目の「太陽と戦慄」〜7枚目の「レッド」までのメタルクリムゾン等とも呼ばれる時期)の中核メンバーとして名を馳せた。74年10月10日「レッド」発売と同時に栄光のキングクリムゾンが解散を知った日、全てのプログレ・ファンはその目と耳を疑った程だ。次にプログレ・ファンが興奮を持って迎えたのはUKというバンドの結成だった。パンク・ロックが台頭するロック界にあって、それは本当に痛快な出来事だったからである。イギリス・ロック界の起死回生とも言えるUKの出現で、素人の手からロックを再び熟練音楽家の手に取り戻そうとするかにも見えるテクニカルにして華麗なロックを表現したバンドだった。またUKはキングクリムゾン・イエス等々往年の英国の名バンドの腕達者を集めたバンドでもあったため、その結成は大いに注目を集め、当時特に日本では人気を博したということである。そうした常に注目的なバンドで活動を果たしてきたのがジョン・ウェットンだったのである。

スティーブ・ハウは、何と言ってもイエスの黄金期を支えてきた人物として音楽愛好者には有名。イエスは1970年代の前半、ビートルズ亡き後の英音楽業界をキングクリムゾン、エマーソン・レイク&パーマー、ピンクフロイド、ジェネシスと共に支えた栄光のロックバンドである。当時英ロック産業はプログレッシブ・ロック(前述の5大ロックバンド)とハードロック(レッドツェッペリンやディープパープル)によって第二の黄金期を迎えていた。今でこそ、難しいとか理屈っぽいとか言われ、果ては1曲の長さが長すぎて楽曲が理解できない等とこき下ろされるプログレッシブ・ロックだったが、当時の若者は双方のロックをまんべんなく聴くことに何の抵抗感もなかった。(と言われるが、我々は早熟な音楽愛好家だったため、当時はプログレッシブ・ロックはおろかハードロックさえ、回りでは全然聞かれていなかったというのが実感である。当時の洋楽とは、ほとんどの日本人にとってアメリカの音楽のことを指していたように思う。)そのイエスの黄金期はサードの「イエスアルバム」「こわれもの」「危機」「イエスソングス」辺りを指していうのだが、その中で素晴らしいギタープレイを聞かせてくれているのがスティーブ・ハウなのである。昨年10月のイエス再結成来日公演でも素晴らしいギタープレイを聞かせてくれていた。

キングクリムゾン
今でも「クリムゾンキングの宮殿」というファーストアルバムとの出会いは忘れられない。
当時ビートルズの熱狂的なファンだったボクにカルチャーショックを与え、一般の音楽では満足できない身体にした元凶となる音楽を聞かせてくれた。このアルバムを聴くキッカケとなったのは、何しろ当時人気絶頂だったビートルズのラストアルバム「アビーロード」をヒットチャートの1位から引きずり落とした作品だったからである。「ビートルズをヒットチャート1位から引きずり落とす作品とはどんなスゴイ音か?」という好奇心からレコード店でアルバムジャケットを見たときのインパクトの凄さ!苦しそうに口を広げた赤ら顔の親父の顔がアルバムジャケット一杯に描かれている醜悪さ・・・。当時、本当に良く買ったものだと思う。「買おうか、止めようか」レコード店のレジの前でずいぶん悩んだ結果だった。家に持って帰り、自分の部屋のアルバイトで買い足していった自慢のコンポーネント・ステレオのスピーカーからあふれ出てきた音の洪水の衝撃と言ったら・・・。今聞いても少しも衰えないその音楽性は本当に素晴らしい。それまで最高の音楽とはビートルズの「サージェント・ペーパーズ・ロンリーハーツ・バンド」だったボクに、更に上を行くと言わしめたアルバムこそ、このキングクリムゾンのファーストアルバムだったのである。
A面1曲目の「21世紀の精神異常者」のヘビーさと音楽性の高さはどうだ。(ボクにサックスの格好良さを教えてくれた点でも)本当に素晴らしい曲で、プログレ楽曲人気投票でもやったら、きっと上位進出は間違いないと言える超名曲なのである。イコライジングされたレイクのボーカルとヘビーに歪んだベース、フリップのギター、マクドナルドのサックス、荒れ狂うジャイルズのドラム、4人の強者による嵐のようなアンサンブル!当時、彼らのライブを聴くためにポール・マッカートニーやエルトン・ジョンやドノバンがマーキークラブに集まったという伝説の演奏がここにある。A面2曲目はうって変わって静謐なメロディーが心に染みる名曲「風に語りて」である。間奏に奏でられるフルートのメランコリックな響きは在りし日の夕暮れの情景をいつもボクに思いおこさせるのだ・・・。そしてA面ラストを飾るのが「エピタフ(墓碑銘)」である。この曲の「美しさ」と「もの悲しさ」は当時、学生生活に満足できず、将来への確かな回答を持たないボクの心をどれだけ癒してくれたことだろう。アルペジオの前奏から美しいグレッグ・レイクのボーカルへの流れは本当にシンプルでありながら聞くモノに鳥肌を立たせずにおかないほど衝撃的なものである。きっと誰でもこの曲を聴いている間だけは、現実の醜さから逃避し、美しいモノに身をゆだねることができる・・・それほどの20世紀最大の音楽の遺産だと疑わない。間奏で流れるメロトロンの調べの何と美しいことか?ボクはこのアルバム(とムーディーブルース)によってメロトロンというアナログシンセに見せられてしまったのである。どうしてこんなに美しい音が可能なのか?と思わずにいられないほど、天空に突き抜けていく上昇感・・・それを味わっている間に、A面が終わるのである。B面に針を落とすと「ムーンチャイルド」が始まる。イコライジングされたレイクのボーカル部が終わると、4人のミュージシャンの混沌の演奏が繰り広げられるのだが・・・。当時、部屋の灯りを落としてこの演奏部を聞いていると、一瞬自分の存在を忘れてしまう錯覚に陥ってしまったことを思い出す。自分がいるのは「宇宙空間なのか?海底なのか?」けしてトリップ音楽(サイケ)ではないのに、聴者にトリップ感覚を起こさせる不思議な音楽だ。そしてアルバムラストを飾るのはメロトロンの洪水によって幕を開ける「クリムゾンキングの宮殿」である。この曲をいったいどのように形容したら、その素晴らしさを伝えることができるのだろう・・・。レイクのボーカルと、ギターとメロトロンで幕を開けるこの曲は、聴く者に至福を与えずにはおかない天井の音楽なのである。絶えず聴く者に上昇感を与えるメロトロンの洪水と、リードを取るハモンドの調べ、何から何までが美しい。A面ラストと双璧を成す奇跡的な音楽・・・。それ以外に表現のしようもない音楽がここにあるのだ・・・。

このアルバムの存在がために今の製作者のボクがいる。ボクの美意識の原点、そう言わしめるほどの素晴らしいアルバムが、この「クリムゾンキングの宮殿」であり、彼らの音楽なのである。あのエルトン・ジョンをして参加したいと願いながら、バンドの参加を断られたという伝説を持ち、また当時のビートルズをトップから引きずり落としたバンドでありアルバムだから、もしも機会があったら是非聴いて欲しいものである。

ブック・オブ・サタディ
メタルクリムゾン期の代表曲。当時アグレッシブな楽曲群にあって、メランコリックなナンバー。

ナイトウォッチ
これまた、メタルクリムゾン期の遺産。こうした壊れやすいガラス細工のようなナンバーがあるからこそ、他のアグレッシブな楽曲もいっそう映えるのである。

UK
1970代、最後のスーパーバンドと鳴り物入りでデビューしたバンド。ジョン・ウェットン、ビル・ブラッフォード、アラン・ホールズワース、エディー・ジョブソンという英国のロック史を飾る名ミュージシャン4人によって結成された。しかし当時の音楽産業はアメリカで成功を納めることでしか評価を受けない悲惨な状況であったため、もはや彼らの求め表現する高度な音楽性でさえ正当な評価を受け得なかったと言えよう。

イン・ザ・デッド・オブ・ナイト
4人組UKと呼ばれるファースト・アルバム時の代表曲。ポップとかコマーシャルとかの形容とはかけ離れたプレイヤーとして高度なテクニックが要求されるナンバー。近年テクニカルなロックプレイヤーも増えてきたが、これだけの高度な音楽性も表現できるアーティストがおいそれと現れる訳もなく、未だに名曲の輝きを失わない。

変拍子バリバリ
基本的に近代音楽は偶数で割り切れるような拍子構成で音楽が作られている。4分の4拍子なんていうのが代表的なヤツである。手拍子も叩きやすいし、だいたい学校で習う音楽は全て偶数拍子である。しかし、音楽は偶数拍子でなければならないというルールはない。実際、ラテン系のトラッドは奇数拍子の音楽も多いのである。しかし奇数拍子の音楽は近代音楽に慣れている民族には心地よくない(らしいが、ボクには逆に気持ち良いし違和感もない。)。だいたい、奇数拍子では踊れない。
変拍子とは一般的に偶数拍子と奇数拍子を組み合わせて奏される拍子を言う。これはジャズの手法であり、演奏者の技術のひけらかしであるという見方もされがちである。しかし技術先行型でない変拍子の音楽も確かにあって、それを見つけることが出来れば、音楽はメロディーだけではなく拍子でも楽しめるものになるのである。(外しの美学なのか?)

スターレス・アンド・バイブルブラック
メタルクリムゾン期の超名曲。美しいボーカル部のメロディーは1度聴くと病みつきになる程に美しい。反面、間奏部のアンサンブルは混沌と狂気が聴者に襲いかかるかの如し。聴けば聴くほど、聴者を美と狂気に駆り立てる暗黒のラプソディー。


インプロビゼイション
複数の演奏者が事前打ち合わせ無しに、作り上げていくひらめきの音楽とも言えるのがインプロビゼイションである。一般的にはジャズにおいて行われる手法で、楽曲よりも演奏者のインスピレーションと技術を表現するものと言えよう。しかしどんなライブの場合でも、多少は自由演奏の余地はあって、そここそ演奏者の腕の見せ所だったりする訳で、そこが単調なバンドはバンドとしての能力が低い。またイエスやクリムゾンのように再現するのが難解な楽曲をプレイするバンドを別とすれば、そうした突発的な余地のないライブは面白いとは言えないし、CDを聴いた方が良いだろう。

ランデブー6:02
セカンドアルバムで大幅なメンバーチェンジが行われ、ビル・ブラッフォードとアラン・ホールズワースが去り、テリー・ポジオが加わった3人組UKの代表的ナンバー。曲の構成やメロディー等、後にジョン・ウェットンが結成するエイジアを予見するナンバーとも言われている。

イージー・マネー
やはりメタルクリムゾン期の代表ナンバー。74年に解散して以来、多分一度のライブでも行われていなかったのではないか?(ボーカル部は歌われていても、間奏部は行われたという記録は知らない。)こんな超名曲が、再演されていなかったなんて「20世紀の損失である」と言ってしまいたいほどもったいない。この曲はやはりボーカル部と間奏部があってこそ、その輝きを増すのである。間奏部は前述のインプロビゼーションによって、混沌と狂気を聴く者に叩きつける。美と狂乱の洪水に身をゆだねる心地良さは、70年代へとトリップさせてくれるのだ。

イット・バイツの連中
80年代後半にデビューし一世を風靡したプログレッシブ・ロックバンド。ネオプログレッシブ・ロックの旗手と期待されながら90年代に解散し、しばらく消息を絶っていたが近年ジョン・ウェットンと行動を共にしている。とにかく、テクニカルにしてエモーショナルなプレイを信条としていて、実際今回のコンサートでも、高度な楽曲を難なくこなしているのが印象的であった。