後日談・そして日本


――――当機はまもなく成田へ到着します―――――


機内アナウンスが流れ、小さな窓から眼下に懐かしい日本の風景が広がる。

かえってきたあああああああああああ!

僕はやっと日本に帰ってこれたことで、異様なハイテンションになっていた。

まず、空港のゴミ箱にもう使う事もないボロボロになったインドのガイドブックを全力で投げ込んだ。

どりゃあああああ!もういらんわこんなもん!!!

そして100円硬貨を取り出して缶コーヒーを飲んだ。

やたらとうめぇええええ!!!一気飲みをする。祝杯だ。

日本の硬貨が使えることで、ここは日本なんだな、と再確認する。


ウキウキ気分で税関を通ろうとすると、係員に呼び止められた。

「どこへいかれましたか?」

「インドですが・・・」

「ほぉ、何日間くらい?」

「十日ほどですね。」

「十日の旅行で、荷物はこのカバン一個ですか??」


はっと気がついて周りを見回すと、自分の異様さにきがついた。

他の旅行客はスーツケースを引きずり、「免税」の文字が躍るみやげ物ぶくろをいっぱい抱えていた。

一方、僕はというと、ボロボロのリュック一個、ヒゲは伸び放題、髪もボサボサ、服装は真っ黒に汚れた

Tシャツにチノパン、牛のフンを踏ん付けたスニーカー。

怪しさ爆発である。


「カバン、あけてもらっていいですか?」

「はぁ・・・」

すでに係員は容疑者に対する警官の態度になっていて、尋問の様相をみせていた。

「これはなんですか?」

「文庫本ですが・・・」

「これは?」

「見てのとおりただのスケッチブックです。結局使いませんでしたが。」

「あけてみせてください。」

「ただのスケッチブックだって言ってんだろが!!」と、言いかけた。

係員はおかしなものがでてこないことにかなり不満そうだ。

なにからなにまで細かくチェックされ、すべて開けさせられた。

本当に何もないことを確認すると、ガッカリした様子でようやく通してくれた。

やはり、日本人の海外旅行客はでかいスーツケースをひきずらないとダメのようだ。


まぁ、それでも日本に帰ってきたのだ。もうボッタクリと戦うこともないし、

マラリアの病原体のような蚊や強烈な直射日光に悩む事もない。

もうこの安心と安全が保障された日本でゆっくりできるのだ!!

なんて素晴らしい!

ずっと電源を切ったままになっていた携帯電話をとりだし、友達に無事帰国した旨を伝える。

「おおお!生きて帰ったか!!インドは大変だったろ!」

よく一緒に国内旅行をして楽しむ旅行友達、ユキオ(仮名)である。

「ああ、大変だったさ〜、話す事もたくさんあるよ。でも、今はしばらくゆっくりしたいのが一番だな!」

「そうかそうか、ゆっくり休め!そしたら今度の旅の話でもしながら『次の計画』を建てるか!」

と、ユキオは張り切って言う。

「え?『次の計画』?なんか言ってたっけ?」

「もう忘れちゃったのか〜、ほら、お前がインドから無事帰ってきたら、

次は真冬にシベリアの永久凍土を俺と見に行く約束したろ?」




ぁぁ……そういやそんな約束したっけな………

電話越しに聞こえるユキオの声がだんだん遠くなる。

それと入れ替わりに僕の脳裏に氷に閉ざされたブリザード吹き荒れる大雪原が浮かび始めた。




マイナス40℃の恐怖、シベリア編に続く









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